病院で働く理学療法士の仕事内容は?病院のメリット・デメリットも解説

文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士が働くなかで、もっとも代表的な職場の一つが病院です。病院では、理学療法士はどんな仕事をするのか気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、病院で働く理学療法士の仕事内容やメリット・デメリットをご紹介します。どのような特徴があるのかを知ることで、病院で働くべきかの判断材料になるでしょう。
目次
病院で働く理学療法士のおもな仕事内容

理学療法士は病院勤務ではどのような仕事をしているのでしょうか。ここでは、具体的な仕事内容について解説します。
評価・リハビリプログラムの作成
理学療法士は患者さんへのリハビリをはじめる前に、必ず評価とリハビリプログラムの作成を行います。評価では、まず以下のような基本的な情報を把握します。
・既往歴
・生活状況
その後、筋力や関節可動域など、その方の状態にとって必要な評価を行います。評価結果をもとに目標を決定し、患者さんに必要なリハビリプログラムを作成します。評価やリハビリプログラムの作成は一度きりではなく、患者さんの状態にあわせて定期的に行うことが大切です。
適切な評価とリハビリプログラムの作成により、患者さん一人ひとりにあったリハビリの提供が可能になります。
リハビリの実施
作成したリハビリプログラムをもとに、患者さんに対して実際にリハビリを実施します。リハビリはおもに、「運動療法」と「物理療法」の2つを組み合わせて行うのが特徴です。運動療法は、運動を中心としたリハビリで身体機能の回復を図る方法です。具体的には、以下のような内容があげられます。
・持久力訓練
・関節可動域訓練
・歩行練習
・ADL訓練
一方、物理療法は熱や電気などの外部からの物理的な刺激によって機能回復を目指すリハビリです。筋力強化や疲労軽減など、物理療法の効果は種類によって多岐にわたります。患者さんの状態に応じて適切な治療法を選択し、継続的なリハビリの実施によって運動機能の向上を目指します。
装具の選定
必要に応じて、患者さんに装具を選定するケースもあります。装具の使用によって低下した機能を補い、日常生活の自立の支援につながります。たとえば、脳卒中の片麻痺症状で歩くのが困難な患者さんに対して検討するのが下肢装具です。上肢の麻痺で肩の亜脱臼がみられているようであれば、スリングの使用を検討します。
装具を選定する際は義肢装具士と連携しながら、どのような種類が適しているのかを決めます。
家屋調査・外出訓練の実施
患者さんが安心して自宅での生活に戻れるよう、家屋調査や外出訓練を実施することもあります。家屋調査では、理学療法士が実際に患者さんの自宅を訪問し、周辺環境を詳しく調査します。場合によっては家族の方に写真を持参していただき、それをもとに環境評価を行うこともあるでしょう。
外出訓練では、実際に患者さんと一緒に自宅に行き、動作を確認します。家屋調査や外出訓練で得られた情報をもとに、手すりの設置や段差の解消など、住宅改修に関するサポートも行います。
カルテ・書類業務
リハビリ業務だけでなく、カルテの記入や書類業務もあります。カルテ業務では、毎日のリハビリの実施内容や患者さんの反応などを詳細に記録します。また、具体的な書類業務としては以下のとおりです。
・カンファレンス用の書類
・退院時の書類
これらの書類は患者さんの状態を明確にし、診療報酬を得るために必要な書類といえます。
カンファレンスの参加
患者さんの治療方針や今後の計画を検討するために、定期的に開催されるカンファレンスにも参加します。カンファレンスでは、医師や看護師などの他職種とともに行われます。理学療法士は、以下のような内容を説明することがおもな役割です。
・リハビリによる改善度合い
・今後の方向性
・今後の目標設定
このように、理学療法士としての専門知識を活かし、患者さんの機能や日常生活動作の観点から意見を述べることが求められます。
科内での委員会・勉強会の実施
リハビリや書類業務以外にも、リハビリ科内で行われる委員会の仕事や勉強会の開催に関わることも珍しくありません。リハビリ道具の点検や装具の確認など、委員会の仕事は職場によって大きく異なります。勉強会についても、以下のように内容はさまざまです。
・症例検討会
・学会発表の準備
場合によっては、外部講師を招いた研修会を企画することもあります。
理学療法士が働いている病院のおもな種類

病院といってもその種類はさまざまで、それぞれ特徴が異なります。ここでは、理学療法士が働いている病院のおもな種類について解説します。
急性期病院
急性期病院は、おもに病気やケガをした直後の患者さんが入院する病院です。そのため、急性期病院で働く理学療法士は、病気やケガの発症直後の患者さんに対してリハビリを行います。
急性期の患者さんは状態が不安定で、病状が変化しやすい時期である点が特徴です。リハビリはベッドサイドでの簡単な運動からはじまることが多く、そこから座位・立位訓練へと段階的に進めていきます。入院期間は数週間程度と短く、限られた時間のなかでリハビリを行う必要があります。
回復期病院
回復期病院は、急性期を過ぎて病状が安定した患者さんに対して治療を行う病院です。この時期では在宅復帰を目指すために、急性期病院よりも積極的なリハビリが行われます。
具体的には、1日2〜3時間の集中的なリハビリを実施し、歩行訓練や日常生活動作の練習などを中心に行います。入院期間は疾患や患者さんの状態によりますが、長い場合は半年ほどと比較的長く、患者さんとじっくり向き合いやすいのが特徴です。
慢性期病院
慢性期病院は、病状が安定しているものの、長期間にわたって医療的な管理が必要な患者さんを受け入れる病院です。病気を発症してから長期間経過している患者さんが多く、急性期や回復期と比較すると大きな身体機能の変化は乏しい傾向にあります。そのため、理学療法士は患者さんの現在の機能を維持しつつ、生活の質を向上させることがおもな目標となります。
病院で働く理学療法士の1日のスケジュール例
ここでは、病院で働く理学療法士の1日のスケジュールの例についてみていきましょう。
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 8:30 | 出勤・カルテの確認 |
| 8:45 | 朝礼 |
| 9:00 | リハビリ業務 |
| 12:00 | 昼休憩 |
| 13:00 | リハビリ業務 |
| 16:30 | 夕礼・カルテの記入・書類業務 |
| 17:30 | 退勤 |
リハビリ業務の合間に、カンファレンスや外出訓練などを行うこともあります。職場によっては早番・遅番を採用しているケースもあり、出勤・退勤が1〜2時間ほど前後する場合があります。
理学療法士が病院で働くメリット
理学療法士が病院で働くメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。
大規模な病院は給料が多い傾向にある
理学療法士が病院で働く大きなメリットの一つとして、給料面での待遇がよい点です。病院は規模が大きいところもあり、その場合は給料が多い傾向にあります。令和6年度の調査によると、理学療法士の平均年収は「約444万円」とされています。
しかし、理学療法士の平均年収は職場の規模によっても変動する可能性があるのです。職場の規模に応じた平均年収について、以下の表にまとめました。
| 職場の規模 | 給料 | 年間賞与 | 平均年収 |
|---|---|---|---|
| 10〜99人 | 約32.3万円 | 約60.8万円 | 約450万円 |
| 100〜999人 | 約30.2万円 | 約67万円 | 約432万円 |
| 1,000人以上 | 約32.3万円 | 約82万円 | 約469万円 |
このように、職場の規模が1,000人以上の場合、給料が高い傾向にあるのがわかるでしょう。理学療法士として安定した収入を求める場合、大規模な病院での勤務は魅力的な選択肢といえます。
さまざまな症例と関わる機会が多い
病院では、さまざまな疾患を持つ患者さんと関われるのもメリットです。病院には以下のような、幅広い症例の患者さんが入院しています。
・骨折をはじめとした運動器疾患
・循環器疾患
・呼吸器疾患
このような症例に触れることで、理学療法士に必要な知識と技術だけでなく、応用力も身につけやすくなります。さまざまな経験をしておくことで、今後のキャリアを広げるきっかけにもなるでしょう。
福利厚生が充実している
充実した福利厚生があるのも、病院の大きな魅力の一つです。医療法人や社会福祉法人が運営する病院では、福利厚生に加えて独自の制度を設けているところが多い傾向にあります。具体的には、住宅手当や家族手当などの各種手当が充実している病院もあります。
さらに定期健診はもちろん、人間ドックの費用補助や予防接種の無料実施など、医療機関ならではの手厚いサポートを受けられることもあるでしょう。このような充実した福利厚生により、理学療法士として安心してキャリアを積める環境が整っています。
理学療法士が病院で働くデメリット
病院にはさまざまなメリットがある一方で、注意すべき点もあります。ここでは、理学療法士が病院で働くデメリットについてみていきましょう。
業務が多くなりやすい
病院で働く理学療法士は、リハビリ以外にもさまざまな仕事があるため、業務量が多くなりやすい傾向があります。先述したように、リハビリに加えてカルテの記入や、書類業務などがあります。さらに病院によっては、委員会活動への参加を求められることもあるでしょう。
日中はリハビリで忙しいため、これらの業務は時間外に行われることも多いです。そのため、残業が多くなって帰る時間が遅くなってしまう、というケースもあります。実際に、筆者が勤めていた病院では、仕事が忙しく夜遅くに退勤することも少なくありませんでした。
勉強会や学会で休日が削れることも
勉強会や学会への参加を積極的に求められる病院では、休日が削られることがあります。勉強会や学会は土日に開催されることが多いため、参加によってプライベートの時間が制約されることがあります。
さらに、病院によっては学会発表や研究活動への取り組みを積極的に支援しており、参加が必要となるケースもあるでしょう。このように、成長のために多くの学習機会がある一方で、プライベートの時間が限られるというデメリットがあるのです。
病院で働く理学療法士の割合は多い傾向にある
病院は、理学療法士の就職先のなかでももっとも代表的な職場といえます。病院はリハビリのほかにも、書類業務やカンファレンスなどの仕事があります。理学療法士にとって、病院はさまざまな疾患を経験でき、給料が高い傾向にある点がメリットです。
一方で、職場によっては業務が多く忙しい可能性がある点にも注意が必要です。ぜひ今回の記事を参考にして、病院での勤務を検討してみましょう。
参考
病院での理学療法は、評価・実施・カンファレンス・書類まで「チームの一員として患者さんの生活を支える」仕事です。症例の幅広さは大きな学びになりますが、職場によっては業務量や勉強会で拘束が増えることも。見学や面接では教育体制・残業実態・症例構成を確認し、無理のないライフワークバランスを大切に選びましょう。
著者プロフィール

rana
理学療法士
理学療法士として、これまで総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科で働きながら、訪問看護ステーションにて非常勤勤務を兼務。腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。
業務をこなす傍ら、webライターとしても活動し、健康、医療分野を中心にこれまで多数の記事を執筆している。
監修者プロフィール

寺澤 慶大
理学療法士
2007年に長野医療技術専門学校(現在の長野医療大学)を卒業。
長野県松本市にある一之瀬脳神経外科で10年、長野県松本市にある武内整形外科クリニックで4年勤務。
また、介護分野領域でも4年程度の経験あり。
その他、自費診療での施術やスポーツトレーナー等もおこなう。
現在は整体院を開業し、整体りびるど院長として様々なクライアントの悩みに寄り添う施術をおこなう。












