理学療法士が病院に勤務するメリット・デメリット
文:rana 理学療法士
理学療法士が働く職場は病院、整形外科クリニック、介護施設、訪問看護ステーションなど多岐に渡ります。そのなかでも、理学療法士が最も多く在籍しているのが病院です。日本理学療法士協会によると、2021年3月末時点で、会員数129,875名のうち、73,947名が病院に在籍しており、全体の半数を超えています。
(出典:日本理学療法士協会「統計情報」/https://www.japanpt.or.jp/activity/data/)
多くの理学療法士が活躍する病院ですが、他の職場と比べてどのような特徴があるのでしょうか。これまで病院に勤務してきた経験をもとに、病院における理学療法士の仕事内容や、病院勤務のメリット、デメリットについてお伝えします。
目次
病院における理学療法士の仕事の特徴
病院は「病床数が20以上ある医療施設」と定義されています。なお、病床数が19床以下の医療施設は「診療所(クリニック)」に分類されるため、今回は対象外とします。施設によって具体的な業務内容は異なりますが、ここでは一般的な大学病院や回復期病院などにおいて、理学療法士が携わる仕事の特徴をまとめました。
リハビリ対象は入院患者さま
病院ではほとんどの場合、入院している患者さまがリハビリの対象に なります。通院中の患者さまとは違って、入院による医療的管理が必要な状態にあり、リハビリ中にバイタルが急変したり、転倒したりする可能性があることから、リスク管理を十分に行う必要があります。
退院して、自宅や施設などで安全に生活を送れるようにすることがリハビリの主な目的であるため、身体機能を向上させるだけでなく、退院に向けての生活指導や環境設定などを行うことも業務に含まれます。必要であれば、退院前に患者さまの自宅の環境を評価する「家屋調査」を行うこともあり、幅広い知見が求められます。
整形、脳血管、呼吸器など幅広い分野の疾患が対象となる
病院には整形外科、内科、神経内科、脳外科など多くの診療科目があり、さまざまな疾患を持つ患者さまが入院しています。そのため、運動器疾患、脳血管障害、呼吸器障害、内部疾患、難病など、幅広い分野のリハビリに携わることになります。
医師・看護師・介護士など多職種との連携が不可欠
病院では、医師、看護師、介護士、医療ソーシャルワーカー、栄養士など、複数の職種が一つのチームとなって患者さまと関わります。したがって理学療法士は、作業療法士や言語聴覚士といったセラピストだけでなく、多職種と連携をとり、情報交換を行いながら仕事を進めることになります。
また、患者さまに関わる医療スタッフやそのご家族を交えたカンファレンスを定期的に行い、治療の方向性の確認を行うのも、病院勤務ならではの特徴といえるでしょう。
仕事内容や作業療法士との違いについて
理学療法士が病院で働くメリットとデメリット
理学療法士が病院で働くことには、「さまざまな患者さまを担当することでスキルアップができる」というメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。病院勤務のメリットとデメリットを詳しく見てみましょう。
病院勤務のメリット
上述したように、病院ではさまざまな疾患を持つ患者さまがリハビリの対象となることから、幅広い分野を経験できるのが大きなメリットです。在籍するセラピストの数も多く、先輩や同僚のスキルや考え方を吸収できるため、自身のスキルアップにもつながりやすいでしょう。
医師や看護師といった多職種と連携し、チーム医療を行うことで多くの知見を得ることもできます。また、1人もしくは少人数のセラピストしか在籍しないクリニックなどと比べると、比較的休みがとりやすい傾向にあるのもメリットです。
病院勤務のデメリット
病院勤務では、リハビリだけでなく、リハビリ実施計画書や退院時サマリー、カンファレンス記録といった書類業務が多くなる傾向にあります。施設によっては感染対策委員会への参加やイベント幹事などを求められるケースもあり、リハビリ以外の業務も増えがちです。場合によっては、コア業務以外での残業が発生することもあるでしょう。
メリットとして挙げた「多職種との連携」も、コミュニケーションが苦手な人にとってはデメリットといえるかもしれません。加えて、日曜・祝日やお盆、正月にもリハビリを継続して実施する病院が多く、周囲と休みが合わせにくい点もデメリットとして挙げられます。>
つらい理由と解決策
病院で働くというキャリアデザイン
病院は幅広い分野での臨床現場に立ち会える場所であり、理学療法士として成長できる職場です。だからこそ、新卒者や経験年数の浅い人にとっては実力をつけやすい就職先といえます。また、幅広い分野を経験できるため、どの分野に進みたいのか迷っている人でも、将来の方向性が定めやすくなるでしょう。
私自身も、新卒の頃はまだ自分が進みたい分野が明確でなかったため、教育体制が整っている病院を選んで就職しました。先輩から多くの知識や技術を吸収できる環境のなかで、スキルを向上させることができ、大きなやりがいもありました。そのため今でも、病院勤務によって、理学療法士としての土台を築くことができたと感じています。
その一方で、病院特有の委員会や係の仕事、書類業務に追われてしまい、臨床と向き合う時間が減るという悩みもありました。そして、さまざまな経験のなかで、自分の進みたい分野と方向性が定まり、4年目を迎える前に整形外科クリニックに転職しました。
病院は理学療法士としての知識や技術を高めるための経験を多く積めますが、リハビリ以外の業務も多い、というのが私の実経験から感じる特徴です。
転職を成功させるコツとは?
病院は理学療法士として大きく成長できる職場
病院は豊富な知識や技術を得ることができ、理学療法士として大きく成長できる職場です。また、自分の方向性を見つけやすい職場でもあるので、経験年数の浅い人や、スキルアップを図りたい人には向いている環境といえるでしょう。ただし、規模が大きい病院では、リハビリ以外の業務も効率良くこなせるスキルが求められます。自身の適性を考えながら、より良い働き方を検討してみましょう。
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著者プロフィール
rana(らな)
理学療法士
理学療法士として、これまで総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科で働きながら、訪問看護ステーションにて非常勤勤務を兼務。腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。
業務をこなす傍ら、webライターとしても活動し、健康、医療分野を中心にこれまで多数の記事を執筆している。
監修者プロフィール
マイナビコメディカル編集部
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