令和6年度「診療報酬改定」によるリハビリへの影響を急性期・回復期・慢性期ごとに解説

更新日 2024年08月05日 公開日 2024年07月29日

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文:Tokoshi(言語聴覚士)

診療報酬は2年に1度改定され、令和6年(2024年)度は改定の年にあたります。今回の診療報酬改定は、予定されていた4月ではなく6月からの施行となりましたが、リハビリテーション関連の部門や職種にはどのような影響があるのでしょうか。本記事では、令和6年度の診療報酬改定が急性期、回復期、慢性期のリハビリテーションに与える影響と、改定のポイントについて解説します。

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令和6年度「診療報酬改定」によるリハビリへの影響を急性期・回復期・慢性期ごとに解説

令和6年度診療報酬改定におけるリハビリテーション部門の改定項目

診療報酬とは、保険医療機関等が行う診療行為や医療サービスに対して、公的医療保険から支払われる報酬を指します。今回の診療報酬改定において、リハビリテーション(以下、リハビリ)部門では、以下のような変更がありました。

・急性期病棟:リハビリの充実による患者さんのADL強化
・回復期病棟:リハビリの質・効果の明確化
・療養(慢性期)病棟:リハビリによる患者さんのADL強化

以下では、急性期、回復期、慢性期それぞれの変更点をピックアップして、解説します。

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf

急性期病棟のリハビリに関する診療報酬改定

短期集中型の医療を担う急性期病棟では、治療直後もしくは治療と並行してリハビリが行われるケースがほとんどです。そのため、回復期病棟のように「リハビリがメイン」となるわけではありません。

しかし、2024年度の診療報酬改定では、急性期病棟でも、リハビリや口腔管理を積極的に実施することを推進する改定が行われました。その背景として、「急性期病棟での入院中に、ADL低下や要介護度の悪化が起きてしまう懸念がある」という点が挙げられます。

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算の新設

急性期リハビリテーション病棟では入院のためにADLが低下し、寝たきりの状態になってしまう可能性があります。そうした状況を避けるため、リハビリテーション・栄養・口腔を一体的に管理・評価する「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」が新設されました。

新設された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」の加算点数は、1日につき120点。計画作成は原則「48時間以内」で、対象者は急性期病棟に入院する「すべての患者さん」となっています。

算定要件は、入院後48時間以内にADLや栄養、口腔状態の評価を行ったうえで、他職種と連携して計画書を作成・実施することです。また、「評価や計画に関する定期カンファレンスを行うこと」や、「必要に応じて歯科医師等と連携すること」「専従のリハビリスタッフの確保」「土日祝日のリハビリの実施」なども要件に含まれます。

取り組みを実施するにあたっては、入院直後の業務増加やカンファレンスの増加、土日出勤などが想定されるため、新たな体制づくりを検討する必要があるでしょう。

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(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf

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回復期リハビリテーション病棟の診療報酬改定

急性期病棟に関する診療報酬改定では、「リハビリをより充実させるため」の加算が新設されました。一方、すでにリハビリが充実している回復期病棟では、「回復期リハビリテーション病棟でのリハビリの効果」が、これまで以上に厳しく問われる改定となっています。

具体的に説明すると、「本当にそのリハビリは効果があるのか」「本当に患者さんはリハビリによって改善しているのか」という点を明確化するための改定となったのです。

以下では、回復期リハビリテーションにおける診療報酬改定のなかから、特にリハビリ職種の業務に影響する可能性がある項目を4つ紹介しましょう。

1.運動器リハビリテーション料の算定単位数の見直し

今回の改定により、運動器リハビリテーション料を算定している患者さんは、疾患別リハビリテーション料に係る算定単位数上限緩和対象から除外されます。

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(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf

従来、回復期リハビリテーション病棟の患者さんは、疾患別リハビリテーション料の算定単位数上限緩和対象であり、1日9単位までリハビリの提供が可能でした。しかし改定後は、上限6単位までしか運動器リハビリテーション料の算定ができなくなります。

厚生労働省によると、「回復期リハビリテーション病棟で運動器疾患のリハビリを行っている患者さんについて、1日6単位を超えた実施単位数のリハビリを行っても、ADLの明らかな改善が見られなかった」という点を踏まえて、上限の見直しを行ったとしています。

2.回復期リハビリテーション病棟でのFIM測定の義務化

2024年度から、リハビリ実績指数の基準がある「入院料1及び3」を算定するにあたって、FIM測定が義務化されました。

FIM(機能的自立度評価表)とは、日常的な生活動作を評価する方法のひとつで、介護の必要度や介護負担度の判断材料となるものです。以前、FIMの測定は「努力義務」でしたが、一部の病棟において、効果が乏しいリハビリを長期にわたって実施していた背景があったため、今回の見直しにつながっています。

改定により、「入院料1及び3」を算定する場合は、定期的なFIM測定を行い、結果を記録することが要件に追加されました。具体的には、2週間に1回の頻度で該当する患者さんのFIM測定を行う必要があります。

また、保険医療機関において、FIM測定に関わる職員を対象としたFIM測定関連の研修会を年1回以上開催することも、要件に追加されています。そのため、今後はリハビリ職種だけでなく、看護師をはじめとする他職種と連携しながら患者さんのFIM測定をすることが一般的になると予想されます。FIMの測定を定期的に行うことで、入院中の患者さんのリハビリ効果を、数値的に確認できるようになるでしょう。

(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf

3.回復期リハビリテーション病棟入院料の体制強化加算の廃止

今回の改定によって、「回復期リハビリテーション病棟入院料の体制強化加算1及び2(以下、体制強化加算)」が廃止されました。

体制強化加算とは、「事業所の体制を強化し、質の高いサービスを患者さんに提供するための取り組み」を評価する加算です。廃止となった背景として、「体制強化加算の届け出があった医療機関」と「届け出がなかった医療機関」とで、入退院時のFIMの差があまり見られなかったことが挙げられます。

従来の制度では、体制強化加算1の場合は200点、2の場合は80点が加算されていたため、今回の廃止により大きな減収になる事業所があると考えられます。

4.回復期リハビリテーション病棟入院料の要件追加

今回の改定で、「回復期リハビリテーション病棟の入院料1及び2」の要件が追加され、「口腔管理を行うにつき必要な体制が整備されていること」がそのひとつとなっています。

したがって、回復期リハビリテーション病棟入院料1及び2を算定する患者さんが「口腔状態に係る課題」を認めた場合は、適切な口腔ケアを提供し、必要に応じて歯科医療機関への受診を促す必要があります。

厚労省の資料を見ると、「回復期リハビリテーション患者の口腔の問題は、ADL、認知レベル、栄養状態と関連し、歯科専門職の介入による口腔管理は、口腔状態や咀嚼嚥下、栄養状態の改善を通じて、間接的にADLの改善等につながる」と記載されており、それが今回の要件追加につながっているようです。

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(出典:厚生労働省「個別事項(その10) リハビリテーション・栄養・口腔」/https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001173501.pdf

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療養病棟のリハビリに関する診療報酬改定

療養病棟(慢性期・維持期病棟)では、栄養を口から摂取できる患者さんが少なく、中心静脈から高カロリー輸液を投与する「中心静脈栄養」や、胃や鼻から直接栄養を流し込む「経腸栄養」を行っている患者さんが多く見られます。そして、そうした患者さんのADLをこれ以上低下させないために、療養病棟でも急性期病棟と同様に、ADLの低下を防ぐための加算が見直されています。

ここでは、療養病棟に関する診療報酬改定で、リハビリ職種の業務に影響する可能性がある改定を2つピックアップして紹介しましょう。

1.中心静脈栄養の離脱強化と経腸栄養管理加算の見直し

診療報酬改定によって、療養病棟の「中心静脈栄養の早期離脱」がさらに強化がされました。これにより、中心静脈栄養の対象となる疾患や期間が以前よりも限定的になっています。

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(出典:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」/https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251533.pdf

また、中心静脈栄養の早期離脱の強化とあわせて、「経腸栄養管理加算」が新設されています。これは、新たに経腸栄養を開始した場合に算定されるもので、1日に300点を加算できます。

上記の見直しや新設が実施されたのは、長期的に中心静脈栄養を実施し続けると、嚥下機能や消化機能が低下し、ADL低下のリスクが高まるという背景からです。「本当にその患者さんには中心静脈栄養が適しているのか」を見極めるきっかけとなる見直しといえるでしょう。

2.療養病棟における適切なリハビリテーションの推進

療養病棟での適切なリハビリを推進する目的から、疾患別リハビリテーション料の算定上限を「1日2単位までとする」という改定も行われました。これは1日に2単位を超える疾患別リハビリテーション料を包括範囲に含めるものです。

以前より、療養病棟の入院基本料が低額であるがゆえに、その補填として「不適切なリハビリを行い、リハビリテーション料を算定している可能性がある」という点が問題視されていました。今後は算定に頼らず、患者さんの状態・ニーズにあわせた適切なリハビリを提供することが求められるでしょう。

2024年度の診療報酬の改定内容を理解しておこう

2024年度は、2年ぶりとなる診療報酬改定が実施されました。改定の内容を見ると、急性期病棟・療養病棟では「リハビリによる患者さんのADL強化」、回復期病棟では「リハビリの質・効果の明確化」が重視されているのが特徴的です。

なお、診療報酬改定によって、リハビリ内容だけでなく業務内容も変更になる可能性があります。日々の働き方にも影響するため、自身の職場に関連する診療報酬改定の内容を理解し、適切に対応できるようにしておきましょう。

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著者プロフィール

Tokoshi

言語聴覚士

回復期で失語症と高次脳機能障害を中心としたリハビリ業務に携わる。その後転職し、看取り施設で「最期の食事」を言語聴覚士として支援。現在は、訪問リハビリやデイサービスでリハビリをしながらライターとしても活動している。

監修者プロフィール

マイナビコメディカル編集部

 

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