理学療法士は人手不足?その実態と、これからの理学療法士に求められることを解説
更新日 2026年01月20日 公開日 2026年01月11日

文:伊東 浩樹(理学療法士/保育士)
「理学療法士はこれからますます必要とされていく」「理学療法士の人手不足が続いている」といった話を耳にすることがありますが、実際にはどのような状況なのでしょうか。
本記事では、統計データや現場の声をもとに、理学療法士の人数がどう変化しているのかをわかりやすく整理します。さらに、これからの理学療法士に求められるスキルについても解説していきます。
目次
理学療法士は人手不足なのか
「理学療法士は増えすぎている」「飽和状態になるのではないか」といった声が聞かれる一方で、「理学療法士は人手不足だ」という声も聞かれます。なぜ、このように真逆の意見が聞かれるのでしょうか。
結論から言うと、「理学療法士の数は増えているが、足りない現場がある」というのが現状です。次の章でお伝えする通り、理学療法士の数は年々増加しています。しかし、実際には人気な施設・地域・分野に応募が集中し、それ以外では応募数が伸び悩む構造になっているのです。
理学療法士が働きたい場所と、本当に人が必要な現場の間にズレがあるため、都市部や人気の病院では応募が集中して競争が激しい一方で、地方や介護施設、在宅リハなどでは「応募が来ない」「採用できない」といった状態が続いています。
つまり、理学療法士は人手不足ばかりというわけではないものの、働く場所・地域・分野によって状況が大きく異なるといえるでしょう。
理学療法士の数は年々増えている

日本理学療法士協会の統計によれば、2025年3月末時点で、これまでの国家試験合格者の累計は23万6,390人となりました。直近5年を見ると、毎年約1万人の国家試験合格者が出ており、理学療法士の数は年々増え続けています。
もちろん、合格者のすべてが理学療法士として働いているわけではないため、上記はあくまで参考値です。とはいえ、毎年多くの人が理学療法士を目指していることが分かるでしょう。
その理由のひとつとして、理学療法士を育てる学校(養成校)の増加が挙げられます。30年前の1995年に、全国に80校あった養成校は、2005年には183校に増え、2025年には277校にまで増えています。
養成校の増加にともなって定員も増え、その分だけ国家試験を受ける人・合格する人が多くなり、結果として理学療法士全体の人数も増えているのです。
理学療法士(PT)が“人手不足”と言われる原因
理学療法士の数自体は増えているにもかかわらず、「人手不足」「人材確保が難しい」という声が聞かれるのはなぜでしょうか。主な要因を整理します。
働く場所の偏り
理学療法士の多くは病院で働きたいと考えています。一方で、「介護施設」「在宅(訪問)リハビリ」「福祉施設」「小児分野」「精神科リハ」など、病院以外の分野では働く人が少ないのが現状です。このため、「病院には応募が集まるのに、その他の施設には人が集まりにくい」という偏りが起きています。結果として「理学療法士が足りない」という状況が起こり得るのです。
また、都市部では理学療法士の数が比較的充実しており、採用競争も激しくなる一方で、地方や中山間地域、過疎地には理学療法士が集まりづらく、慢性的な人手不足となっている例も多いようです。
このような分野・地域ごとの偏りにより、理学療法士は人手不足と言われることがあります。
高齢化によるニーズの増加
団塊世代が75歳以上となる「2025年問題」をはじめ、高齢化の進行は医療・介護・リハビリ需要を拡大させています。高齢者が増えるにつれ、リハビリを必要とする人も毎年増えており、特に「在宅(訪問)リハビリ」の需要は急速に伸びています。
こうした病院以外でのサポートの必要性が高まっている一方で、制度や仕組みがすぐには整わないため、「リハビリを必要とする人は多いのに、理学療法士を確保できない」というギャップが生まれています。
リハビリテーション専門職団体協議会は、2025年3月に「リハビリテーション専門職の処遇改善に関する記者会見」を行っており、理学療法士を含むリハビリ専門職の処遇や人手不足がといった課題への対応を訴えました。
これからの理学療法士に求められること
理学療法士を取り巻く環境が変化していくなかで、個々の理学療法士はどのように適応していく必要があるのでしょうか。
複数分野への対応力
患者さんの需要が多様化するなか、単一の分野(例:整形外科/回復期病院)だけではなく、在宅(訪問)リハビリ、予防・回復促進、小児・脳卒中リハ、スポーツリハビリ・産業リハビリテーションなど、複数分野にまたがる経験が価値となっていくでしょう。
また、特定加算への対応や、医療・介護保険制度への理解力も重宝されるスキルです。
在宅(訪問)リハビリのスキル
地域でのリハビリサービス需要の拡大を背景に、在宅(訪問)リハビリに関するスキル、モバイル機器(ウェアラブル/ICTリハビリツールなど)の活用、地域におけるネットワーク構築力などが強みとなっていくでしょう。
テクノロジーの活用スキル
今後、ロボット補助歩行装置、ロボティクス機器、バイオフィードバック装置、センサー・ウェアラブル技術、遠隔リハビリなどの導入がこれまで以上に進むと予想されます。
それらを使いこなす能力や、データ活用スキルはますます重要となっていくでしょう。
リーダーシップ
理学療法士としての技能だけでなく、組織の中で他職種と協働できる能力、クオリティマネジメント、効率化・標準化プロセス設計、指導育成能力なども求められます。施設運営やコスト意識を持つ視点も欠かせません。
理学療法士は「数」よりも「需給バランス」に注目しよう
理学療法士は資格取得者が増え続けており、供給面だけを見れば人材は拡大してきました。しかし、現場の実態を見ると「人手不足」と感じられる分野や地域が確かに存在します。特に在宅・介護施設、小児分野、地方の医療機関では、採用難や離職率の高さ、処遇への不満などが顕在化しています。
このようなギャップは、単なる人数の問題ではなく、分野ごとの偏在、制度や処遇の課題、キャリアパスの制限、技術進化への適応不足など、複数の要因が重なった需給のミスマッチとして捉える必要があります。
今後は「在宅・地域ケアの強化」「ICT・ロボティクスの導入」「質と効率の向上」「処遇改善」といった対策がより重要になります。こうした流れに適応できる理学療法士が求められるため、「人手不足かどうか」を単純に判断するのではなく、どの分野で・どの地域で・どの能力が求められているのかという視点が不可欠です。
これからは、需給ミスマッチの解消と役割の多様化に応えられる理学療法士がより価値を発揮していく時代になっていくと言えるでしょう。
参考
理学療法士になるには | ふっかライブラリー 関西福祉科学大学
理学療法士を取り巻く状況について | 公益社団法人日本理学療法士協会
医師・看護職員・理学療法士・作業療法士の従業者数について | 厚生労働省
政府統計の総合窓口(e-Stat)
理学療法士は、確かに資格取得者数が年々増加しています。しかしそれだけでは、すべての地域や分野で「人手が余っている」とは言えません。医療機関が密集する都市部や人気施設では競争が激しい一方、地方や介護・在宅分野、小児や精神科リハといったニッチな領域では慢性的な人材不足が続いています。さらに、高齢化の進展に伴い、在宅リハビリや地域包括ケアのニーズは今後も増える見込みです。これからの理学療法士には、単なる技術だけでなく、分野をまたぐ柔軟性、ICT やロボティクスといった新技術への理解、そして多職種連携やマネジメント能力など、多様なスキルが求められる時代に入りました。資格を取った後も学び続ける姿勢、変化に対応する意識が、今後ますます重要になるでしょう。
著者プロフィール

伊東 浩樹
理学療法士
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。
監修者プロフィール

関 勇宇大
理学療法士
2014年、理学療法士免許を取得。回復期リハビリテーション病院にて、脳血管障害患者を中心にリハビリテーション計画を立案し、早期社会復帰を支援。訪問リハビリでは、在宅療養者とその家族に対し、生活環境に即した個別支援を提供。臨床経験で培った専門的知見をもとに、現在は医療ライターとして活動。運動療法クラウドサービス『リハサク』では、運動メニューの解説・動画制作も担当し、医療と表現の両面から、実用性と信頼性の高い情報発信を行っている。












