日常生活に必要な動作を確認・訓練する在宅シミュレーション棟

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リハビリ室の近くには、他に類を見ないほど本格的な在宅シミュレーション棟がある。患者さんが退院後、経験する生活動作に慣れていただくように段差や傾斜まで細かく考えて設計されており、日常生活に応じた十分な量と質のリハビリが提供できる。
★貴院およびリハビリテーション科の特色を教えてください。
回復期リハビリテーション病棟は、患者さんをいかに生活期につなぐかという重要な役割を担っています。回復期でのリハビリがうまくいかないと在宅復帰が難しくなり、患者さんの人生が決まってしまう、と言っても過言ではありません。その点、当院は回復期リハビリテーション病棟単科の病院なので、他の病棟との兼ね合いを気にすることなく回復期リハビリテーションに集中できます。これが第一の特色です。
第二は、セラピストだけでなく、病棟の看護師や医師、さらにソーシャルワーカーも加わった「病棟チーム制」を敷いていることです。もちろんリハ室でしかできないリハビリは行いますが、基本は病棟のベッドや廊下、手すりなどを使って実施しています。病棟単位でリハビリの様子がわかるので、適切なリハケアを行えます。病棟のなかでPT、OT、STそれぞれの専門性を活かし、より患者さんの日常生活にフォーカスした〝チーム医療のリハビリ〟を行っているため、各階にリハビリの責任者も配置しています。
★リハビリに関してはハード面も充実していますね。
リハ室は天井が高く、広々としていて、ここのリハ室が好きで当院を選ばれた患者さんもいるほどです。さらに出色なのは住宅を一軒、丸ごと模した在宅シミュレーション棟です。患者さんのご自宅を想定して廊下の幅や、車椅子に座ったままスイッチを押せるよう照明ボタンの位置を動かせるほか、手すりの高さや太さ、取っ手の種類も豊富に取り揃えています。「プラスチックの手すりのほうが握りやすい」といった、患者さんの主観に応じて居住環境を自在に調整できるのです。退院前にリハビリを行うのはもちろん、家屋調査に備えた動作確認や、家屋調査に行けない場合のシミュレーションなど、さまざまな使い方ができます。
“最強チーム”をつくり、リハビリ科全体のレベルアップを図ります

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広々としたリハビリ室は開放感でいっぱい。セラピストは8年以上の実務経験があり、職位が主任以上になると回復期リハビリテーション病棟協会が認定する回復期セラピストマネージャーの受検資格が得られる。リハビリ病院にとって非常に価値ある資格で、現在は岡部マネージャーも挑戦中。
★中途入職時のサポートはどのように行っていますか。
中途入職の方には業務内容や職場の雰囲気に慣れていただくため、各階のリハビリチームのリーダーが必要なことを一対一で教えています。また入職して1か月後には面談を行い、この間に感じたご自身の課題をはじめ、新しい人間関係に問題はないか、転職によるストレスはないか、きめ細かく聞き取りをして対応しています。こうした取り組みをはじめてから皆さんスムーズに現場に馴染まれているようで、取り組み以前に入職したスタッフに羨ましがられています(笑)。
★リハビリ科の責任者として人材育成に力を入れていることは何ですか。
より働きがいを感じてほしいという観点から、自分が興味関心のあることを磨きあげていきたい人のための専門チームを作っています。「スペシャルインタレスティングチーム」と名付けていて、現在は脳血管疾患を勉強するチーム、高次脳機能障害による認知機能を勉強するチームの2つが立ち上がっています。強制参加ではなく有志が集まり、リーダーになった人が勉強会を開く形です。効果としてはすでに「認知機能について悩んだらこのチームに相談しよう」という意識が醸成されていて、実際のリハビリにも必ず介入するようになりました。ゆくゆくは学会発表や地域の健康講座といった院外活動も行い、当院の名を高めるのに貢献する“最強チーム”にしていく予定です。まだあと数チームくらいは作りたいと考えていますので、「この領域を極めたい」という方はぜひ手を上げていただきたいですね。最強チームの存在はリハビリ科全体の底上げにもつながります。セラピスト同士、刺激を受けながら患者さんによりよいリハビリを提供していきます。