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言語聴覚療法における感染症対策

公開日:2022.09.26 更新日:2022.10.11

220926_1

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

COVID-19の流行により、言語聴覚士の臨床現場は大きく変化しました。感染症対策を実施しながらの臨床には制限もあり、今なお、各施設において工夫を重ねながら臨床を実施しているのではないかと推察いたします。
そこで、今回は言語聴覚療法における感染症対策について解説していきます。

 

《問題》感染症対策で誤っているのはどれか

【言語聴覚士】第21回 第101問
感染症対策で誤っているのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 標準予防策ではすべての患者を対象とする
  2. 2. 痰は湿性生体物質である
  3. 3. 空気感染では手洗いを重視する
  4. 4. ドアのノブからの感染は間接感染である
  5. 5. 個人防護服を脱ぐときには最初に手袋からはずす

解答と解説

正解:3

標準予防策とは、患者が感染症に罹患しているかに関わらず、常に適用される感染症予防策です。標準予防策では、手指衛生と適切な個人防護具(PPE)の使用が重要視されます。手洗いは手指衛生の基本であり重要視されますが、今回の過去問にある「空気感染」では、個人防護具(PPE)であるマスクが重要視されます。したがって、正解は〈3〉になります。
また、個人防護具(PPE)の着脱では、手袋は着用時には最後につけ、脱ぐ際には最初にはずします。個人防護具(PPE)の着脱については、関連する動画も参考にしてください。
(日本看護協会)

実務での活かし方

言語聴覚療法における感染症対策について解説していきます。今回はCOVID-19流行前後での感染対策の変化について説明し、言語聴覚療法における適切な感染症対策についてもまとめます。

(1)COVID-19流行前の言語聴覚士の感染症対策
言語聴覚士の臨床に限らず、医療や介護の現場ではCOVID-19流行前から感染症対策を実施しながら臨床をおこなっていました。2016年に実施された言語聴覚士を対象にした調査によると、「感染対策に関する知識を有する一方で、回答者の80.9%が自身の感染に対する危険性を感じていながらも、飛沫暴露防止としての個人防護具(PPE)を適切に選択し、装着されていない現状が明らかになった」とあり、COVID-19流行前の言語聴覚士の臨床では、感染症対策の実施に苦慮していたことがわかります。

(2)COVID-19流行後の感染症対策
COVID-19流行前では、言語聴覚士の臨床における感染症対策は必ずしも万全ではなかったことが指摘されていました。それでは、COVID-19流行後には、どのように変化したのでしょうか。2020年におこなわれた調査では、言語聴覚士の臨床において、換気をおこなう(90.8%)ドアノブ、手すり、電気のスイッチなどを定期的に消毒する(68.3%)、必ずマスクを着用する(85.1%)など、十分な感染症対策を実施しながら言語聴覚療法を実施していることが明らかになりました。
このことから、COVID-19流行により、言語聴覚療法の現場では感染症対策に対する意識の変化が認められたと考えられます。

(3)言語聴覚療法における感染症対策
COVID-19流行期の現在において、言語聴覚士の臨床において適切な感染症対策とはどのような方法なのでしょうか。日本言語聴覚士協会によると、言語聴覚士の臨床における基本的対応事項として以下の項目を挙げています。

新型コロナウイルス感染症にかかる臨床業務における基本的対応事項 (臨床実施時の対策より抜粋)

① 臨床では飛沫に注意し患者と適切な距離を保つ。
② 評価・訓練時に教示のために口形呈示や模倣が必要な場面でもマスクを外さない。
③ 口形呈示などが必要な場合は、指示・教示のための文字や図、動画の活用などの工夫を行う。
④ 飛沫やエアロゾル発生の可能性のある評価・訓練手技は極力避ける。ただし、これらの対応により不可逆的な機能低下が予測される症例については、医師の指示を仰ぐ。
・発声発語器官への接触により嘔吐や咳の誘発、咳嗽や分泌物の喀出などを伴う可能性のある手技
・強い呼気や破裂を伴う運動など
・大きな声を出す訓練や歌唱などは対象者もマスクを着用し、最小限に行う。
・直接的嚥下訓練や吸引など
⑤口腔器官の模倣運動や構音訓練などは動画やプリントを活用するなどの工夫をする。工夫

詳細は日本言語聴覚士協会のホームページに掲載されていますので、全文を確認しておきましょう。

日本言語聴覚士協会
新型コロナウイルス感染症にかかる臨床業務における基本的対応事項
全文

まとめ

言語聴覚療法における感染症対策について解説しました。実際の臨床では、標準予防策の基本である手指衛生と、適切な個人防護具(PPE)の着用が重要になります。言語聴覚療法の現場では、COVID-19の流行により、感染症対策に対する意識は大きく変化したことが明らかになっています。引き続き、十分な感染症対策を実施しながら臨床を実施していきましょう。

[出典・参照]
經田香織ら.言語聴覚士の感染対策の実態について-アンケート調査より-.言語聴覚研究 2020;17(1)
一般社団法人 日本言語聴覚士協会
公益社団法人 日本看護協会

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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