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地域包括ケアってなんだ?(3)地域リハビリテーション活動支援事業でのセラピストの役割とは?

公開日:2018.02.05 更新日:2023.03.14

文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士

地域包括ケアシステムにおけるセラピストの役割について、は介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)について書きました。
今回は、同じく総合事業でセラピストの活躍の場の一つとなる、地域リハビリテーション活動支援事業について概要を説明したいと思います。
 

地域リハビリテーション活動支援事業とは?

地域リハビリテーション活動支援事業とは、リハビリ専門職が通所・訪問・地域ケア会議・住民運営の通いの場などに出向き、介護予防の取組みを地域包括支援センターと連携しながら総合的に支援をするものです。(図1)
 

地域リハビリテーション活動支援事業の概要"
図1 介護予防・日常生活支援総合事業の構成 (厚生労働省 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン概要より)

 
これにより、介護予防を心身機能の改善のみではなく、生活環境の調整や生きがい、役割をもって生活できる居場所づくりといった地域づくりなどバランスの取れたアプローチが出来るようになりました。
これは、総合事業のなかの一般介護予防事業(旧介護予防事業を再編)の一つであり、平成27年度から新設されました。この事業を進めることで自立支援や介護予防の機能強化を図ることを狙い、その役割をセラピストが担うことになりました。
つまり、地域リハビリテーション活動支援事業は自立支援や介護予防を強化するため、セラピストの活躍が期待されていると言ってもよいでしょう。では、実際にどのような役割なのでしょうか。
 

地域ケア会議への参加

地域ケア会議は、「地域ケア個別会議」と「地域ケア推進会議」に大別され、セラピストの関与は主に「地域ケア個別会議」の参加です。これは、地域包括支援センターが主催し、行政職員、ケアマネジャー、介護サービス事業所、保健医療関係者などの多職種が課題解決に向けた検討を行い、ケアマネジメントの質の向上を図ります。ここで、セラピストに求められる役割は、1.生活機能障害を引き起こす要因を評価すること、2.疾患を踏まえた生活行為の改善の見通しを示すこと、3.利用者の有する能力を最大限に引き出すための支援方法の提案などです。ここで注意しないといけないのが、多職種が集まる場で、それぞれの立場を尊重し、協力的に議論を進める必要があるということです。支援の方法を押しつけたり、ケアマネジャーのたてたケアプランを非難するようなことがないようにしましょう。
 

住民の通いの場への関与


住民主体で運営される通いの場は、その場を作るだけで、人と人の繋がりや関係性が生まれ、自助・互助の意識の形成にもつながり、地域住民による助け合い活動等に発展することが期待できます。また通いの場に参加するだけで、閉じこもり予防、社会参加になります。これは、地域包括ケアシステムの根幹であると思います。
セラピストは1.身体障害や関節痛があっても継続的に参加することのできる運動方法の指導、2.認知症の方への対応の仕方を世話役に指導、3.定期的な体力測定などの関与が考えられます。またセラピストが体操・運動教室の世話役やリーダーに集団での運動の方法などを教え、そのリーダーたちが地域の各地の通いの場で体操・運動の先生役をやるといった間接的な関与も出来ます。このように住民の通いの場にセラピストが関与することで、要介護状態になっても参加し続けることのできる、また誰でも参加できるようにできる通いの場が地域に生まれるでしょう。
 

通所・訪問事業への関与

通所介護や訪問介護の事業所には、セラピストがいないところが多いです。そういった事業所に定期的に関与して、1.効果的な運動プログラムの提案、2.介護職などへの助言などを実施し、通所や訪問における自立支援についての取り組みをうながすことができます。
 
このように今までの医療・介護分野のリハビリでは個別対応、患者・利用者さんとの1対1の関係性が多かったですが、地域リハビリテーション活動支援事業では、対個人への直接的な関与ではなく、ケアマネジメントや世話役への指導など間接的な関与を通して、地域に元気な高齢者・障害者を増やし、住み慣れたところで生活し続けられるようにサポートすることが求められます。
一億総活躍社会の実現の中で、地域ケア会議により自立支援型のケアプランをしっかり検証し、検証後は短期集中のサービスにつなぎ、最終的には住民が主体となった通いの場につないでいくというストーリーが描かれています。
地域リハ活動支援事業でリハビリセラピストが地域の中で活躍することが期待されているので、地域包括ケアシステムの実現に向けてセラピストが果たす役割は大きいといえるでしょう。
 
では、どのようにすればこのような事業へ参加できるのでしょうか。基本的には、行政の委託によって実施されているので、病院都道府県の理学療法士会、作業療法士会が窓口になっていることがあります。職場の上司などに相談してみるとよいでしょう。単独でいきなり住民の通いの場に出向いて、勝手に指導したりしないように十分に気をつけましょう。また日本理学療法士協会では、地域包括ケア推進リーダーや介護予防推進リーダーなどの研修を開催しています。そういった研修に参加して、より具体的な方法などを学ぶこともよいかもしれません。
 
 
参考資料:平成28年度「地域保健総合推進事業」行政リハビリ専門職のための手引き(日本公衆衛生協会)

吉倉 孝則

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。
大学病院への勤務時代は、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。

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