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地域包括ケア時代に求められる病院とは

公開日:2019.06.24 更新日:2019.07.18

2014年度診療報酬改定時に「地域包括ケア病棟(病床)」が設けられました。急性期の治療を終了後、在宅や施設へ移行するには不安な場合や、在宅・施設療養中に緊急入院した場合に、60日間を限度に入院でき在宅復帰に向けての診療、看護、リハビリを行なうことを目的とした病床とされています。
今回は地域包括ケアシステム時代に求められる病院のあり方について、相澤会長のお考えをうかがいます。

所属:2019年6月現在

地域包括ケア病棟の本来の役割とは

――2018年9月時点で2,262病院が地域包括ケア病棟を設けており、その多くは急性期病棟からの一部転用です。現在の「地域包括ケア病棟(病床)」の状況をどうご覧になっていますか。

「率直に言って、機能していないのではないかと思います。現在はほとんどが急性期治療の終わった患者さんに移っていただくという使われ方が主で、在宅療養している患者さんを受け入れるという面ではあまり機能していません。それは地域包括ケア病棟の本来の意味合いとは違います。地域包括ケア病棟が本来の役割をきちんと果たさない限り、その地域は今後非常に大変なことになっていくと危惧しています。
よく、『地域包括ケアで必要なのは急性期を診ない病院か』と訊かれるのですが、そうではありません。急性期の患者さんを診てもいい、急性期病棟があってもいい。しかし、在宅療養の高齢者をちゃんと受け入れて、できるだけ早く元の住まいに帰っていただくという概念が必要です。
急性期病院のミッションは『病気を治すこと』です。しかし、高齢社会では病気が治っても身体障害や生活機能の低下が残ることが少なくなく、その際のケアをどうきちんと対処してあげるのかが大事。昔からよく『治し、支える』と言われますが、病気を治すだけではなく、暮らし・生活を支えていくという視点では、従来どおりの急性期病院のやり方では機能しません。
 初めから病院全体で『治し、支える』というミッションが共有されて診療をしている病院では、急性期部門があってもうまく『支える』機能も働くだろうと思いますが、『治すことに全力を集中する』というような部門があると、病院全体としてはうまくいかなくなります。その意味で、『治すこと』に注力している病院の一部を地域包括ケア病棟にすることには非常に違和感があります」

超高齢社会に不可欠な「地域密着型病院」とは

――相澤会長は、今後は「地域密着型病院が必要」と提唱されています。地域密着型病院とはどのようなものかお聞かせいただけますか。

「地域包括ケアシステムの基本的な概念は、予防・医療・介護・住まい・生活を一体のものとして提供することにより、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることができる環境を作ることにあります。そこで求められる病院機能はもはやこれまでの急性期病院の概念ではありません。病気になった人が入院し、その病気を治療するという急性期病院の概念は、地域包括ケアシステムとは全く異なるものです。高齢者は若い世代に比べるとそもそも基礎的な身体機能が低下していることが多く、急変が起きたときの余力がありません。退院後しばらくの間は病院のスタッフがかかわるとして、在宅・施設での生活にうまく移行できそうだという目途がたったところで、在宅医療のチームにバトンを渡ししていくことになります。しかし、ご高齢の方にはそれぞれ地域で長年暮らしてきた生活のリズムや習慣があります。すぐにポンとバトンを渡せるわけではないのが実情であり、「つなぎ」の役割が非常に重要になります。そこで急性期病院と在宅の間のつなぎの役目をする病院を私は『地域密着型病院』と呼んでいます。
地域包括ケアシステムの概念には『予防』も含まれています。要介護状態になることの予防、介護の重度化の予防。あるいは、未病状態の方にも予防的にリハビリや運動をする。これは大事なことですが決して急性期病院の役割ではありません。予防に関する活動は『地域密着型病院』の役割だと考えています」

――従来の慢性期病院と「地域密着型病院」はどのように違うのですか。

「慢性期病院は回復期の後にさらに長期入院して治療を続ける施設ですが、地域密着型病院はなるべく早く元の住まいに帰っていただけるよう、病院と在宅生活の間にギャップがないように準備するための病院です。回復期の後、長期に入院するほど帰れない状態になってしまいます。入院の必要はなく、暮らすところさえあれば医療は外付けでよい、というのが私の発想です」

救急車の出動件数を減らす仕組みを作りたい

――相澤会長がトップを務める社会医療法人財団慈泉会では2014年に42床全てが地域包括ケア病棟という「相澤東病院」を開院しています。

「急性期病院である相澤病院に救急車で来られる高齢者の患者さんには軽症から中等症の方が多いのですが、予定入院や予約診療で入院される患者さんよりも入院期間が圧倒的に長くなるという特徴があります。その理由として、退院後の環境調整に時間がかかるほか、急性期病院のスタッフは在宅への移行のノウハウが乏しかったり、在宅医療への理解が不十分だったりするという実情もあります。そこで急性期から在宅生活へのギャップを埋め、スムーズに移行するための機能を地域密着型病院である相澤東病院が担っています。
在宅医療の現場のスタッフと良い関係性を築き、ご高齢者の体調を見て救急車を呼ぶ必要があるほど悪化する前に早めに入院していただき、短期間のうちにまたご自宅に戻すという仕組みも作りたかったのです。
現在、相澤東病院の入院患者さんの60~70%は相澤病院の急性期治療が終わって転院してくる方です。残りの30~40%が在宅療養から体調が悪化して入院される方です。目標はこの2つを50%:50%の比率にすることであり、そうなって初めて地域包括ケアの中で息づく病院になれるのではないかと思います。救急車の出動件数が少なくてすむ社会を作りたくてやっているのです。初めは『そんな病院に来る医師や看護師はいないよ』という声もありましたが(笑)、結構やれています」

――セラピストにとって、地域密着型病院の魅力は。

「セラピストにとっては、働き甲斐があってやりたい病院だと言われます。相澤東病院でも、セラピストは本当に一生懸命働いてくれていますので、これをいかに結果としていいものにして、拡げていくかが大事だと思っています」

相澤孝夫(あいざわ たかお)一般社団法人日本病院会会長

相澤孝夫(あいざわ たかお)
一般社団法人日本病院会会長

1973年
東京慈恵会医科大学卒業
1973年
信州大学医学部附属病院
1981年
特定医療法人慈泉会相澤病院 副院長
1988年
社会福祉法人恵清会 理事長
1994年
社会医療法人慈泉会相澤病院 理事長・院長
2008年
社会医療法人財団慈泉会相澤病院 理事長・院長
2017年
社会医療法人財団慈泉会理事長 相澤病院最高経営責任者(現職)
2017年
一般社団法人日本病院会会長(現職)
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