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言語聴覚士に向いている人は?適性の考え方と文系でも目指せる理由

公開日:2021.08.03 更新日:2023.03.14

言語聴覚士に向いている人とは?

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

この記事を読まれている方は、進路として言語聴覚士を視野に入れている方なのではないでしょうか。そのなかには、「自分は言語聴覚士には向かない人なのかも」「文系でも言語聴覚士になることができるのかな」と悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、どのような人が言語聴覚士に向いているのかについて、現役言語聴覚士の私から意見や経験をお伝えしたいと思います。皆さんの進路選択の参考になれば、とてもうれしく思います。

結論から申し上げますと、私の考える言語聴覚士に向いている人とは「人(ヒト)に興味がある」人です。また、文系でも言語聴覚士になることはできます。

それでは、その理由についてこれから説明していきます。

言語聴覚士に求められるコミュニケーション能力

ここでは、言語聴覚士の適性について触れてみたいと思います。「自分でもできるかな?」と心配がある方は、ぜひ参考にしてください。

「言語聴覚士はコミュニケーション障害の専門職」であり、話す、聴く、読むことに問題がある方に対し、関連職種と連携しながら介入を行います。そのため、「どんな場面でも自分の意見を主張できる」など、いわゆる「コミュニケーション能力が高くなければ務まらない」と感じた方もいるのではないでしょうか。

実際にこのような能力は、言語聴覚士の仕事をするうえでも必要です。しかし、話すほうのコミュニケーション能力以上に、「他者を理解しようとする積極的な態度」というコミュニケーション能力が必要になると考えます。

大切なのは他者を理解しようとする積極的な姿勢

もう少し詳しく説明しましょう。コミュニケーション能力というと、「自分の視点から見た世界のことを、自分の言葉で語ることができる能力」というイメージが先行しますが、それだけではありません。

「話の聞き手となって、その人が本当に伝えたいことを聞き出す能力」や「相手の視点に立って、世界をとらえることができる能力」、つまり「他者を理解しようとする積極的な姿勢」が、言語聴覚士には求められると考えます。

私は言語聴覚士の仕事をするうえで、「この患者さんがこのような発言に至ったのはどうしてだろう?もう少し掘り下げて聞いてみよう」とか、「このような行為に至ってしまうのは、この患者さんにはどのように世界が見えているのだろう?」などと思いを巡らせることがあります。

このような考察をするのは、根本的には「人(ヒト)に対して興味がある」といったことに通じるのではないかと考えます。

したがって言語聴覚士に向いている人とは、「他者を理解しようとする積極的な姿勢」をとれる人、すなわち「人(ヒト)に対して興味がある人」ではないかと考えます。

日本言語聴覚士のホームページには、「言語聴覚士の適性」についてのサイトがあります。こちらもぜひ参考にしてみてください。

参考サイト

めざせST(言語聴覚士)|一般社団法人日本言語聴覚士協会

言語聴覚士になるには文系か理系、どっちが向いてるのか

言語聴覚士に向いている人とは?
ここでは、言語聴覚士は文系なのか理系なのかについて説明していきたいと思います。

言語聴覚士の養成校では、耳鼻科学や神経内科学など、関連する医学系の科目や生理学や解剖学の授業があります。これらは理系科目になりますが、言語学や言語発達学、臨床心理学や認知心理学など文系科目も必修になり、理系科目と文系科目ともに履修しなければなりません。

このようなことから、言語聴覚士は「文系でもあり理系でもある」といった学際的な学問領域に該当すると考えられます。

高校時代に文系を選択した言語聴覚士も存在する

言語聴覚士養成校の入学試験は、文系科目でも理系科目でも可能としている学校があります。しかし、高校時代に文系を選択し、生物や数学を途中までしか履修していないため、「養成校入学後に授業についていけないのでは」と不安に思う方がいるのではないでしょうか。

この疑問にお答えするために、私個人の進路選択や養成校時代についてお伝えします。

私は高校時代に文系コースに在籍していましたが、結果的に、養成校時代に授業についていけないということはありませんでした(しかし、成績は良くはありませんでしたし、テスト前などは必死に勉強しました)。

受験生だったころには、「授業についていけないのでは」と不安に思っていましたので、学校説明会に行った際に、そのことを言語聴覚学科の先生に質問しました。

私:「高校時代に文系でしたが、大学に入学してから勉強についていくことができますか?」
先生:「それは自分しだいです。文系か理系かは問題ありません。高校時代に1年や2年生物や数学を履修したからといって、その人が一生、理系や文系になれるわけではありません。それよりも、生涯において学び続けることが重要です。」

このように言語聴覚士養成校では、文系か理系かといったことより、「学び続ける態度」を重要視していることがわかりました。このことから、言語聴覚士に向いている人には「興味をもって学び続けることができる人」が含まれると考えられます。

言語聴覚士の仕事の実際(やりがいやギャップを感じたこと)

言語聴覚士に向いている人とは?
ここでは、言語聴覚士がどんな仕事をしているのかをご紹介します。仕事のやりがいや、実際に現場に立って感じたギャップなど、実際の言語聴覚士の仕事を少しでも感じていただければと思います。

(1)言語聴覚士の仕事のやりがい

言語聴覚士の仕事のやりがいとは何でしょうか。100人いれば100通りの答えがあると思いますが、私が感じる言語聴覚士の仕事のやりがいとは、「本人やご家族の喜びの場面に直接的に関わらせていただける」ということです。

言語聴覚士はコミュニケーションや食べること(嚥下)の専門職ですので、「家族と笑顔で再びコミュニケーションがとれるようになった」「食事が再び食べられるようになった」といった瞬間に立ち会えた時には、大きな喜びを感じます。

(2)言語聴覚士の仕事で大切にしていること

私が言語聴覚士の仕事で大切にしていることは、「患者さんやご家族の立場に立って考える」ということです。言語聴覚士の仕事は、患者さんの回復を支援することですが、回復とは単純に機能の回復だけを指すわけではありません。

もちろん、科学的根拠に基づいた効果のある介入を行うことは重要です。しかし、身体の状態にだけ目を向けていたら、治療者の視点に限られてしまいます。

患者さんひとり一人の背景やニーズをとらえ、「一緒にリハビリテーションのゴールを目指していく」といった、幅広い視野で包括的な介入を行うことが重要であると考えます。

(3)言語聴覚士の仕事のギャップ

学生のころのイメージと、実際に仕事をしてから感じたギャップは、「言語聴覚士の仕事は訓練室だけでは完結しない」ということです。学生のころは、言語聴覚士は訓練室にいる印象が強くありました。

しかし、実際に仕事をしてみると、病室や食堂など実際の生活の場で患者さんに介入することや、ナースステーションやスタッフルームでカンファレンスや情報交換を行うことが多くあります。また、患者さんのご自宅へ伺う訪問リハビリや地域のケアマネジャーとのカンファレンスなど、院外活動も多くあります。

このように、「言語聴覚士の仕事は訓練室だけでは完結しない」という事実は、学生時代に考えていた言語聴覚士の仕事のイメージとはギャップがありました。

相手を理解したいという気持ちと学び続けることが重要

言語聴覚士の仕事や適性について、私の経験を交えてお話ししました。

文系か理系かはあまり関係ありません。言語聴覚士の仕事に興味があって、養成校を卒業してからも学び続ける気持ちがあること。そして、人(ヒト)が好きで、相手を理解したいという思いをもってコミュニケーションをとれること。

このような方であれば、言語聴覚士の仕事を、やりがいをもって長く続けていくことができると思います。

このコラムを読んでくださった皆さんが、言語聴覚士として活躍する日を楽しみにしています。

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近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。

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