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働きながら大学院に通ったセラピスト

公開日:2022.09.07

働きながら大学院に通ったセラピスト

理学療法士のスキルアップの手段の1つとして、大学院への進学を志す人も増えてきていますが、いまだ少数派です。
「大学院に進学したい」と考えていても、十分な情報が得られてないために具体的なイメージが湧かず、踏み出せない方も少なくないでしょう。

そこで当記事では、実際に働きながら大学院に通った筆者が、大学院に進学することのメリットや大変だった経験を紹介します。今後大学院への進学を考えている方、迷っている方に少しでも参考になればと思っています。

大学院への進学を考えたきっかけ

筆者は大学卒業後、急性期の一般病院に就職しました。脳血管疾患や整形疾患、呼吸器疾患、循環器疾患などさまざまな患者さんを担当させていただき、先輩たちから多くのことを学ばせていただきました。

臨床の現場で10年ほど働き、自分が後輩や学生の指導をするなかで、「自分が行っている治療は適切なのだろうか」「感覚や経験則でやっていないだろうか」「そこにエビデンスはあるのか」と疑問を抱くようになりました。しかしその当時、筆者は論文の集め方や読み方もよくわからず、自分で疑問点を解決するだけの知識も能力もなかったので、モヤモヤした気持ちのまま日々を過ごしていました。

そんな時、同窓会ですでに博士号を取得している友人達から、「今はこんな研究テーマに取り組んでいる」「世界でも初めての報告になると思う」「英語論文がアクセプト(承認)された」といった話を聞き、自分で道を切り開いている友人達に憧れを抱くと同時に、悩むだけで行動しない自分への不甲斐なさを感じていました。

そんな筆者の心の変化を隣に座っていた恩師(後に指導を仰ぐ教授)が感じ取ったのか、「あなたは今何に悩んでいるんだ?」「自分に足りないと思うものがあるのなら、自分で学びに行くしかないだろう」「何歳になっても学ぼうとする努力は恥ずかしいことではない」との言葉をいただき、もう一度学びに行こうと大学院に進学することを決意しました。

大学院に通うメリット

大学院に通うメリットは大きく次の6つがあると思います。

・論文の読解力・論理的思考が身に付く
・研究法を学べる
・学会発表(国内・海外)や論文作成の経験を積める
・学位(修士・博士)が取得できる
・新たな人脈を形成できる
・就職の幅が広がる

まず、論文の読解力・論理的な思考は、論文から必要な情報を収集し、教員やゼミ生たちと研究について討論して仮説を立て、実験を行い、得られた情報や実験の結果から問題の解決策を見い出すという一連の過程で身に付けられます。この能力は研究だけでなく、社会人として活躍するのに必要なスキルといえると思います。

学会発表や論文の執筆と研究を行ううえで必要な、研究計画の立案、倫理審査委員会、データ収集、データ分析、プロセスも学ぶことができます。これらを身に付ければ、臨床場面の課題や疑問に関しても、自分で解決できる能力を養うことができます。

大学院では海外で学会発表する機会を多くいただきました。入学前には海外で学会発表するなど夢にも思っていませんでしたが、英語での抄録やポスターの制作、口述発表のスライドの作り方まで丁寧に指導を受けることができました。海外の学会で発表することで度胸がつき、日本語で行うプレゼンなどでも物怖じしなくなりました。

ちなみに私の研究テーマは、地域のなかで閉じこもりや寝たきりなどで行動範囲が狭まらないようにするためには何を改善したらよいか、ということを明らかにすることでした。心理的要因や環境要因が影響するのですが、一番影響力が強いのは身体機能の歩行速度であった、というのが研究のなかで導き出された結果でした。

働きながら大学院に通うなかで大変だったこと

時間に余裕がない

1つ目は時間的余裕のなさです。修了要件を満たすだけの単位の取得が必要になりますが、それなりに時間もかかります。
日中、仕事が終わってから大学まで移動して授業を受け、ゼミのある日は、夜遅くまでほかのゼミ生や教授、教員の方々と自分の研究についてプレゼンを行い、ディスカッションをします。

仕事が休みの日でも、学会発表の準備や論文作成と自分の余暇の時間はほとんどありませんでした。仕事や家族と過ごす時間に加えて、大学までの移動時間や授業、ゼミの時間があるので、睡眠時間を削りながらの生活でした。

学費がそれなりにかかる

2つ目は金銭面です。国公立大学院では年間80万円程度、私立大学院は100万円程度の学費がかかります。私が勤めている病院では、修士や博士の取得で基本給のベースアップや手当をつけてくれましたが、多くの病院で同じことを期待することは難しいかもしれません。理学療法士の給料は決して高くはないので、これらの費用の捻出は簡単ではないでしょう。

職場のスタッフに負担をかけてしまう

3つ目は仕事面です。大学院の授業に出席するために残業できない日があったり、昼間に授業がある日は仕事を休まなくてはいけないことがありました。
筆者は職場のスタッフの理解とサポートを得ながら学業と仕事の両立を図りましたが、仕事の面で少なからずスタッフに負担をかけてしまった部分はあると思います。そのため、身体的な負担だけでなく精神的な負担もかかってきました。

病院業務(仕事)と大学院(学業)を両立させるコツ

仕事と学業を両立させるには、大きく次の3つが必要だと思います。

大学院に進学する目的や目標を明確に

なぜ自分が大学院に進学したいのかを明確にすることが大事です。「ある特定の専門領域を研究したい」「臨床での疑問や課題を解決できる能力を養いたい」「将来は教員や研究職を目指している」などさまざまな目的があると思います。大学院の修了までは長い道のりです。しっかりとした目的を持つことがモチベーションを維持することにつながります。

たくさんの論文や書籍を読み、研究や論文作成に取り組むことでエビデンスというものをより意識するようになりました。結果として、エビデンスに基づいた治療を行うことができるようになりました。

筆者は大学院で研究や論文作成に取り組むなかで、読解力が高まり、物事を論理的に捉える能力を養うことができました。そして、明らかになっていないことを研究で明らかにしたい、という思いが学業へのモチベーションになっていました。

事前面談を実施する

出願する前に、入学後の研究などについて、あらかじめ指導を受けようとする研究領域の教授や教員と直接会って相談しましょう。大学院に入学後、自分が学びたいと思っていることと、指導教員が研究していることがマッチしているのかを確認することで、入学後の研究計画をよりスムーズに進めることができると思います。

もし指導教員と研究領域が合わなかった場合でも、より適切な指導教員を紹介してもらうなどの相談ができます。

大学院の学費や授業の形態、カリキュラムを確認

私は出身大学の大学院に進学したため、入学金は免除されました。このように自身が卒業した大学の大学院であったり、公立の大学の大学院の補助を利用することで入学金が免除になるケースもあります。また無利息で奨学金を利用することもできますので、一度大学院に問い合わせてみることをお勧めします。

学校によっては、通学制から通信制の大学もあります。授業の一部をweb上で行っていたり、e-learningで単位を取得できる講義を採用している大学もあります。

また、働きながら大学院に進学している場合、標準修業年限を超えて学位を取得することを可能にする長期履修制度を採用している大学院もあります。筆者も長期履修制度を利用し、修士課程に2年間、博士課程に5年間通いました。研究期間が延びる分、時間に余裕をもって学業に専念することができるメリットがある一方で、まだ時間があるからとゴールを先延ばしにしてしまう場合もありますので、自分に合った研究計画で進めることをお勧めします。

職場との調整

働きながら大学院に通う場合は、職場と条件を交渉してから入学に向けたアクションを起こすことをお勧めします。

残業ができなかったり、時間的余裕のなさから職場の周りのスタッフに負担をかけてしまうことは少なからずあります。また新人1~3年目は臨床現場から学ぶことが多いため、仕事が疎かになることは、自分自身の成長のマイナスになる可能性もあります。

そのため、自分が置かれている状況をよく知り、さらに大学院進学に対して周囲の十分な理解を得て、周りからサポートが受けやすい環境を作り上げることが必要だと思います。

全力で仕事と学業の両立を楽しむこと

大学院進学は自分が選んだ道なので、なによりも仕事と学業の両立を全力で楽しむことが大切です。

大学院進学は知識、能力、競い合える仲間を与えてくれた

働きながら大学院に進学するメリットやデメリットなどを、筆者の体験を交えてご紹介しました。
大学院の進学にしようかと迷う方は多いと思いますが、大学の教員や研究者を目指している人にとっては、博士号の取得は必要になってくるでしょう。実際に筆者が通った大学院では、ほぼすべての教員が博士号を取得していました。

また、大学院進学は新たな気づきや出会いがあり、臨床では得られない刺激が得られるはずです。筆者自身、7年間という長い年月ではありましたが、今後のキャリアを形成していくうえで必要な学位や知識、能力、そしてともに競い合える仲間を得ることができ、大学院に進学して心からよかったと思っています。皆様もこの機会にぜひ大学院への進学について考えてみてはいかがでしょうか。

角田賢史

角田賢史

理学療法士/医学博士/認定理学療法士(脳卒中)/心臓リハビリテーション指導士/3学会合同呼吸療法認定士
2005年に北里大学を卒業し、理学療法士免許を取得。同年、湘南藤沢徳洲会病院リハビリテーション室入職し現在に至る。2022年に北里大学大学院医療系研究科修了。現在は脳卒中をフィールドに急性期から維持期まで幅広く臨床や研究活動を行っている。

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