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地域包括ケアを理解するために知っておくべきこと(1)~日本超高齢社会の現状と2025年問題

公開日:2017.09.12 更新日:2021.04.09

文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士

最近、“地域包括ケア”とよく耳にしますが、その意味やどのようなことなのか理解していますか? 同じように“2025年問題”などもよく聞きますが、正しく説明できますか?
「病院で介護される人を減らして、なるべく住み慣れた地域や在宅で過ごせるようにする考え」
「高齢者が増えるから、将来、医療費とかがかかって国の財政を圧迫する問題」
ってことでしょ? と言われれば、ざっくり言うとそうですが、医療介護業界で働くリハビリセラピストであれば、もう少し詳しく理解してほしいですね。
そこで、「地域包括ケアシステム」に関して、基本をおさらいして、今後のリハビリセラピストに求められることなどを書いてみようと思います。
今回は地域包括ケアシステムを考える前に、まずは日本の高齢者の現状を理解しましょう。

日本は高齢化社会?

「日本は高齢“化”社会である」
このような言葉をまだ使っていませんか? これは実は間違いです。
総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を「高齢化率」といいますが、社会の高齢化の定義は「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」の3段階に分かれています。
世界保健機構(WHO)や国連によると、
・高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、
・14%を超えた社会を「高齢社会」、
・21%を超えた社会を「超高齢社会」
といいます。

日本がはじめて「高齢化社会」となったのは1970年です。
そのわずか24年後の1994年には「高齢社会」、そしてついに2007年に高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」に進みました。
そのため、「日本は超高齢社会」なのです。

また「超高齢社会」の日本ですが、2つの要素を考慮しておく必要があると思います。
1つ目は医療技術の進歩等により長く生きられるようになり、高齢者が増えたこと。
2つ目は少子化です。
高齢者問題を考えるときに、どうしても高齢者の増加に目が行きがちですが、子供も同じように増えていれば、割合は変化がないはずです。ちなみに、2016年の日本の出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの人数)は1.44であり、日本の人口は2010年をピークに減少しています。子供が少なければ高齢化は進み、支える側の人が減少していくことが問題となっています。
 

高齢者の定義が変わる?

2017年1月5日、日本老年学会は、高齢者の定義を「65歳以上」から、「75歳以上」に引き上げ、それより若い人たちは就労やボランティアなどの社会参加を促すべき、という提言を記者会見で発表しました。
10~20年前と比較して、従来高齢者とされてきた65歳以上の人でも、体や心が健康で、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めているようです。
皆さんも想像してみてください。
65歳と言えば、会社を定年退職して数年(最近では65歳を定年退職にしている企業も多いですが)。まだまだ元気な方が多いのではないでしょうか。
現在の介護保険制度では、65歳以上になると第1号被保険者として要介護認定を受けることが出来ます。
しかし、実際には65歳の時点では、重度な障害や病気を抱えている人はまだ少なく、要介護認定を受けている人の割合は65歳~69歳で2.9%、70歳~74歳で6.2%とされています。
つまり75歳未満の90%以上の人は、要介護認定は受けていないことになります。
今後、高齢者の定義は75歳以上となるかもしれませんね。
 

2025年問題ってなんだ?

日本は2007年に高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」に進みましたが、2015年には65歳以上の高齢者人口は3395万人とされ、人口の26.8%まで達し、実は高齢者の人口はさらに増加の傾向にあります。この時に注目したいのが、「団塊の世代」と言われる1947~1949年生まれの世代の動向です。
この世代は第二次世界大戦終戦直後にたくさんの子供が生まれた、いわゆるベビーブームの世代で、相対的に人口の多い世代なのです。その世代が2015年には65歳以上となり、そして、2025年までに75歳以上になります。
前述したように75歳未満の90%以上の人は、要介護認定は受けていないのですが、75歳を超えると、どんどん要介護認定者が増えて、介護サービスを受けるようになることが知られています。同じように、入院や治療などによる医療費も年齢が上がるほど高額になります。つまり、要介護認定率が高くなる75歳以上の人口が増加すると医療費や介護費をたくさん使うようになり、年金も含めて社会保障費が急増します。

またこの75歳以上人口は、介護保険ができた2000年から増え続け、2025年まで急速に増加し続けますが、2030年ごろからほぼ横ばいになるとされています。(少子化は続いているので75歳以上人口「割合」は増加し続けます。またこれについては地域差がありますので、次回以降に解説します。)
そのため、「2025年問題」として問題提起がされ、それまでに地域包括ケアシステムを構築しようということになっています。

ここまで、2025年に向けて高齢者が増加して医療・介護サービスが必要となるということを書いてきました。
しかし、「2025年問題」はただ単に、高齢者が増加するだけではありません。
次回からは高齢化に伴い、2025年に生じる様々な問題も解説していきたいと思います。

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。
大学病院への勤務時代は、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。

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