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義足の理学療法士福辺節子さんの笑顔義足の理学療法士福辺節子さんの笑顔

第11回療法士が「被介助者を動かす」介助と「被介助者の動きを引き出す」介助の違いとは

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介助者が被介助者を動かすのではなく、被介助者の力を引き出す介助を説く「もう一歩踏み出すための介護セミナー」。今回は、「相手を動かしてしまう介助」から脱却できない理由と、その背景にある教育現場の実態についてお伝えします。

車椅子と利用者

1992年10月「もう一方踏み出すための介護セミナー(現在は介助セミナーに改名)」が誕生しました。
当初は介助の順番や方法を伝えればよいと思っていたのですが、セミナーを始めてしばらくして、「何かがおかしい」と感じるようになりました。受講生の介助と私の介助は、順序や形は似ているけど何か違うのです。「何が違うのだろう」と考えるうちに、受講生と私の介助との決定的な差が見えてきました。私の介助が“被介助者の動きを引き出す”ものであるのに対して、受講生の介助は“介助者が被介助者を動かしてしまう”介助なのです。

「もう一歩踏み出すための介助セミナー」には、セラピストを始め様々な医療介護専門職、家族、ボランティア、介護とは全く関係のない一般の方も受講されます。被介助者を動かしてしまうのは、経験の有る無しに関係なく、むしろ経験の長い専門職のほうがその傾向が強く、受講されてもなかなか相手を動かす介助から脱却できません。
 

“被介助者を動かしてしまう”介助の原因は教育に

どうしていまだに被介助者を動かす介助が大半なのでしょう。それはおそらく介助者自身に、自分の介助が適切なものでないという自覚がないからではないでしょうか。教育でそのように教えられているからです。

私は訪問を始めた30年前から、スタッフや在宅のヘルパー、家族の方に介助の指導をしてきました。介護職やご家族に適切な介助をしてもらうことで機能維持は可能だと考えていたからです。今では当たり前になったこのことに対して、つい最近まで多くの反対にあいました。指導した介護スタッフからは介助を指導したにもかかわらず「こんなリハビリみたいなことはできません」と反発されました。スタッフが喜んでやってくれてもケアマネージャーから「うちのスタッフにリハビリをさせないでください。介護職はリハビリをやってはいけないことになっています」と文句を言われたこともあります。そのスタッフの介助で寝たきりや認知症の利用者さんが改善しても、です。

介護を取り巻く情勢は年々大きく変化しています。介護保険が制定され、介護の専門職である介護福祉士も誕生し、方法論やテクニックは以前と比べ格段に進歩しました。書店に行けば介護関係の本や介助に関する本も山のように積まれています。行政の方向性も変化し、自立支援が前面に押し出され、リハビリテーションや機能訓練がクローズアップされてきました。
 

30年経っても変わらない教育

ところが驚くことに、ここまで状況が変化しても、あるいは、看護・介護・リハの教科書に“対象者の力を引き出す介護”、“リハビリテーション看護・介護”という言葉が書かれているにかかわらず、テキストや実技で教えられている介助はいまだに相手の力を引き出す介助ではなく、対象者を動かす介助なのです。

介護・看護だけでなく多くのセラピストの教科書でも同様です。物理学的なテコの原理や古典的な運動学で説明された介助方法「介助者の力のいらない介助」が紹介されていて、それが「被介助者の力を引き出す介助」になってしまっているのです。力のいらない介助と被介助者の力を引き出す介助は、別のものです。被介助者の力を引き出すことによって介助者は楽になりますが、介助者の力がいらないといっても被介助者の力を引き出しているとは限りません。

大きな違いのひとつは、「主体が誰か?」ということです。動きの主体は介助者ではなく、被介助者にあります(これはリハビリテーションに関しても同様でした)。また、多くの介助者が、寝たきりや意識のない人と同様、認知症や失語で言葉の理解が困難になった人には介助者の意図が伝わらないと思い込んでいて、このようなレベルの方は介助者が動かすしかないと思い込んでしまいます。これはアセスメントの教育がきちんとされていないことが原因です。

では、なぜ対象者の力を引き出す介助が必要なのか、被介助者に動いてもらうにはどうすればよいのかを、次回からお伝えしていきたいと思います。

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福辺 節子

福辺 節子 (ふくべ せつこ)

理学療法士・医科学修士・介護支援専門員
一般社会法人白新会 Natural being代表理事
新潟医療福祉大学 非常勤講師
八尾市立障害者総合福祉センター 理事
厚生労働省老健局 参与(介護ロボット開発・普及担当)
一般社団法人 ヘルスケア人材教育協会 理事

大学在学中に事故により左下肢を切断、義足となる。その後、理学療法士の資格を取り、92年よりフリーの理学療法士として地域リハ活動をスタート。「障がいのために訓練や介助がやりにくいと思ったことは一度もない。介護に力は必要ない」が持論。現在、看護・介護・医療職などの専門職に加え、家族など一般の人も対象とした「もう一歩踏み出すための介助セミナー」を各地で開催。講習会・講演会のほか、施設や家庭での介助・リハビリテーション指導も行っている。

2017年8月に中央法規出版から新著「福辺流力と意欲を引き出す介助術」を出版


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