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義足の理学療法士福辺節子さんの笑顔義足の理学療法士福辺節子さんの笑顔

第14回全ての対象者に使える介助術
~福辺流介助術

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「福辺流介助術」の特徴は、「全ての対象者に使える」ことです。
この介助は、身体的・精神的なレベルが良好な人にしか使えないと、よく勘違いされます。それは、この介助の基本が対象者に動いてもらうところにあるからです。

マヒがあって動けない、全く力が入らない、認知症、言語による指示が入らない、拒否がある、そういった対象者に対して、「力と意欲を引き出す介助」は適用できないと思われがちですが、この介助は全ての対象者に使うことができます。

では、この介助の基本である「対象者に動いてもらう」にはどうしたらいいのでしょう。
 

1.理学療法士視点で詳細な評価ができていない

介助者が、動ける対象者を全く動けないと判断してしまう原因はいくつかあります。
1つ目は、間違った評価です。
身体的な運動機能だけに限定しても、セラピスト以外の職種(介護職や看護職など)のスタッフの評価、場合によってはケアマネージャーの評価さえも適切にできていない場合も少なくありません。
大ざっぱな評価はできていても、詳細な評価ができていないことが多いのです。

筋力低下と可動域制限はよく混同されます。また、各々の関節や運動の区別は難しいようです。例えば上肢ならば、肩関節・肘関節・手関節などの関節の区別です。

運動に関しては、よく「上肢筋力の低下」と表現されますが、屈曲・伸展、内転・外転、内旋・外旋、回内・回外、掌屈・背屈を分けての評価はされていません。
介護職や看護職は、細かなアセスメントの教育を受けていないので難しいことではありますが、相手に動いてもらう介助には、細かな評価は必須です
 

2.利用者さんの能力とは(動き・働き・能力)

動ける対象者を全く動けないと判断してしまう原因の2つ目は、目に見える筋骨格運動だけを動き(働き)と限定してしまうところにあります。
評価の対象となるのは、対象者が現在持っている能力全てに対してですが、関節運動がない=動けない=能力がないと判断してしまい、何もできない=全介助となってしまいます。

四肢や体幹の運動が確認できない場合でも、感覚・知覚・精神・意識・記憶・認知・思考・感情・コミュニケーション能力などは動いています。
体性神経系の能力だけでなく、内臓、血管、消化、循環、呼吸、排泄などの自律神経機構(ホメオスタシス)も、私たちが生きている限り働き続けています。

認知症の対象者でも全ての認知能力、記憶能力がなくなったわけではありませんし、ALSや高度の脊損の対象者は、眼球の動きでコミュニケーションやいくつかの作業をこなします。眼球の動きもなく意識がないと思われている人も、外からは確認できないだけで、その人が生きている限り必ず能力は現存しています。

「相手の力を引き出す介助」の「相手の力」は、対象者の筋力や運動能力だけを指しているのではなく、対象者の持つ能力全てを意味します。
私たち介助者は、対象者の持つ能力全てに働きかけ、対象者の持つ能力全てを引き出させるように意識する必要があります。
 

3.セラピストの刺激(介助)と利用者さんの反応(動き)

「相手の力を引き出す介助」では、介助を「対象者の運動を引き出すために適切な刺激を入力すること」と考えます。運動とは、入力された刺激に対しての反応(出力)のことです。

私たちは絶えず視覚や聴覚、温痛覚、触覚、運動覚などの刺激から状況を判断して、自身を状況と適応させようと反応しています。自分自身で作り出していると思われる感情や思考も、外からの刺激に対する反応です。

人が動くためには知覚が適切に働くことが重要です。知覚がなければ、人は行動の動機、意志、感情を持つことはもちろん、自己の同定さえできません。
お年寄りや障害を持った人が行為を遂行できない原因は、筋力やバランス能力の低下といった出力系だけの問題ではなく、感覚の量の減弱や質の変化、選択の不適応などの入力系の問題、知覚した後の情報処理、理解、認知系の問題などが大きな割合を占めています
 

4.介助とは、環境を整えること

介助とは、介助者が被介助者を動かしてしまうことではなく、被介助者が入力しやすいような環境を整えること、被介助者が適切に動けるような刺激を入力すること、被介助者の持っている能力で行為が遂行できるように環境を整えることだといえます。

できない対象者を動かすことが介助であるという従来の介助の考え方や、アバウトで限定されたアセスメントの考え方では、本当は能力をもっている対象者を能力がないと判断してしまい、多くの対象者の能力を活かせなくなっています。

使わない能力は低下していくので、結果としてはその人のADLだけでなく、能力、意欲までを奪ってしまうことになります。
あらゆる対象者の能力に気づき、最大限にその能力を使ってもらえるようにするのが、介護、医療であり、介助であるといえるのではないでしょうか

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福辺 節子

福辺 節子 (ふくべ せつこ)

理学療法士・医科学修士・介護支援専門員
一般社会法人白新会 Natural being代表理事
新潟医療福祉大学 非常勤講師
八尾市立障害者総合福祉センター 理事
厚生労働省老健局 参与(介護ロボット開発・普及担当)
一般社団法人 ヘルスケア人材教育協会 理事

大学在学中に事故により左下肢を切断、義足となる。その後、理学療法士の資格を取り、92年よりフリーの理学療法士として地域リハ活動をスタート。「障がいのために訓練や介助がやりにくいと思ったことは一度もない。介護に力は必要ない」が持論。現在、看護・介護・医療職などの専門職に加え、家族など一般の人も対象とした「もう一歩踏み出すための介助セミナー」を各地で開催。講習会・講演会のほか、施設や家庭での介助・リハビリテーション指導も行っている。

2017年8月に中央法規出版から新著「福辺流力と意欲を引き出す介助術」を出版


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