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リハビリを拒否する患者さんとの関わり方2014.12.05

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リハビリテーションは、患者さんの症状を少しでも和らげるために行うものです。しかし、なかなかそのリハビリテーションに応じてくれない患者さんもなかにはいらっしゃいます。そのような患者さんの閉ざされた心を、ある作業療法士がほぐしていった事例を紹介します。

「リハビリなんかしません」

「あんた、私の金を盗りに来たんか。私はもう、死ぬだけや。リハビリなんかせん、もう、あっち行って!」
病室のベッドの上にいるのは、キクノさん(仮名・80代前半)。リハビリ担当の作業療法士にそう告げ、やせ細った腕を振り回しました。
このように、症状を緩和するための援助を拒否するのは、彼女が最初に搬入された病院でストレスによって人間不信になってしまったことが原因でした。キクノさんは、交通事故で生死の境をさまよいながらも一命を取り留め、救急病院から転院しリハビリに励む予定でしたが、最初から心を閉ざしてしまっていました。

家族の希望との葛藤

作業療法士が何度か病室に足を運ぶものの、キクノさんの態度は変わりません。ご家族は、キクノさんの在宅復帰を希望していましたが、この時点では歩行能力も日常生活能力も、かなりの介助量が軽減しないことには難しい状況でした。
このような場合、まずは心の隙間を探すことが大事になります。基本的にベッドの上で寝ているキクノさんが唯一起き上がるのはトイレ動作だけだったため、その介助をきっかけにして、キクノさんと作業療法士が距離を縮めていくことになりました。

少しずつ触れ合う機会を増やす

トイレの介助は、作業療法士というよりも看護師の仕事です。そのため、ほかの患者さんのリハビリの合間を見て、キクノさんのトイレのタイミングをうかがい作業療法士が介助を手伝うことで、少しずつ触れ合い、信頼してもらうようにしていきます。
ベッドから車いすへの移動、下衣の上げ下ろしなど、簡単な動作をリハビリテーション代わりに行うことで、少しずつ介助量を減らしていきました。そうすると、キクノさんは作業療法士を「手伝ってくれる人」と認識したのか、徐々に拒絶する様子を見せなくなります。心の隙間が少しずつ空いてきたのです。

心の隙間が広がり、解き放たれる

そして数日が経ったある日のこと、キクノさんは作業療法士に珍しく自分から話しかけました。
「なあ、正直に言って。リハビリって、した方がいいと思う?」
本来のリハビリ以外の簡単な介助から作られた信頼関係は、キクノさんの心を閉ざしていた鎖を少しずつ外し、心の隙間を広げていたのでした。しかしここからが難しいところ。リハビリは患者さんにとっても負担がかかるので覚悟を持ってもらう必要があります。
そこで、作業療法士は心を開いてくれた嬉しさを隠しながら「した方がいいとは思いますが、キクノさん次第ですよ」と自立を促す言葉をかけました。この言葉を聞いたキクノさんは、自分の考えをまとめ、リハビリをする決心を固めました。

初めてのリハビリ

ついにキクノさんが初めてリハビリ室にやって来ました。細かいリハビリの方法を説明し施術を行うなかで「それには金はかかるのか」と、キクノさんは一瞬半信半疑な姿勢を見せたものの「かかりませんよ」と、まずは前提を作業療法士は伝えました。また日々のストレッチで、「リハビリは怖いものではない」という印象がキクノさんに根付いていきました。
その後は順調にリハビリを重ね、キクノさんの調子が上がるのに合わせて歩行量も増やしていきました。実はこのなかで、認知症気味だったキクノさんの言動が明らかに改善していくという、嬉しい副次効果もありました。

一歩ずつの前進が効果を生む

リハビリを重ねることで、作業療法士がキクノさんを介助する機会も減り、自宅での療養にOKが出て退院が決まりました。最後には「今度は家にも寄っていってね」という言葉もあり、キクノさんは無事退院していきました。
このように、最初はリハビリを拒絶している患者さんでも、リハビリ以外の簡単な介助から信頼関係を結ぶことで、最終的にリハビリを行えるようになり回復する事例もあります。
最後まであきらめず、患者さんの事情を考慮しながら、心の隙間をみつけて開いていく。それがリハビリを決心させる、遠いようで近い道なのかもしれません。

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