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第66回炎症の解剖生理学的反応と急性・慢性炎症について

公開日:2022.08.23

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文:臼田 滋(理学療法士)
群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授

健康を保つためには、怪我や病原体の侵入などに対抗する生体の防御機能の働きが重要です。防御機能としては、すべての異物に対応して生体を守る先天性防御機構・非特異的防御機構と、特定の異物に対して攻撃する後天的防御機構・特異的防御機構が存在します。炎症は前者に含まれ、後者は抗体やリンパ球のはたらきによる機構です。
炎症は、疼痛や機能障害などを伴うため、できれば避けたい現象ですが、生体にとっては必須の現象です。そして、外傷や病原体の侵入など、対処が必要となった場合に、直ちに免疫系が活動して、その問題を解決することが健康の維持には重要であり、免疫機能の活性化も大切です。
今回は、理学療法士の国家試験過去問題から、急性炎症と慢性炎症の特徴の比較を取り上げ、関連する状態を含めて解説します。

炎症とは?炎症の4徴候

炎症は、人体の組織の異常に対する非特異的防御機構で、生体の恒常性に関連した解剖生理学的反応です。組織の異常には、打撲、擦過傷、骨折などの外傷、病原体の体内への侵入、化学物質による刺激、新陳代謝の異常による組織細胞の変化、外界の温度変化などがあります。人体のあらゆる組織で炎症は生じ、「●●炎」という病名は多数存在します。炎症は、異常を生じた部分の微生物、異物、毒素を除去して、それらが他の部分に拡散することを防ぎ、生体の恒常性を保つために、組織を修復します。

炎症の症状として、発赤、熱感、腫脹、疼痛を炎症の4徴候といいます。また、部位によりますが、これに機能障害を加えて、炎症の5徴候といいます。炎症の時間的経過は後述しますが、これらの症状がどのような現象なのかを、まずは解説します。

●発赤
皮膚や粘膜の一部が充血して赤くなることです。炎症部位の毛細血管の透過性が亢進し、細動脈が拡張して、血流が増加することで赤くなります。この血流の増加が組織の修復に必要な物質の移動(供給と除去)を活性化させます。

●熱感
炎症部位に感じられる、熱っぽい感じです。患者本人も暖かさ、熱さを感じますし、他者がその部位に触れると、熱さがわかります。血流が増えて、動脈血が集まることでその部位の温度が高くなることと、これに加えて、炎症組織に湧出した白血球の1種である単球やマクロファージ(遊走性の食細胞)が発熱物質であるたんぱく質を放出し、このたんぱく質が温度中枢(視床下部)に作用して、体温を高めます。体細胞は温度が高いと運動量が増えるため、細胞の修復が活性化されます。

●腫脹
組織や器官の一部に血液成分が溜まって腫れることです。水分が溜まって腫れる浮腫とは区別されます。損傷組織や肥満細胞からヒスタミンやブラディキニンなどの炎症物質あるいは血管作動物質といわれる物質が放出され、これらが毛細血管の透過性を亢進させます。そのため血流が増大しますが、加えて、血管内の物質も組織液に流出するため、腫脹が生じます。物質の移動が活性化され、損傷の治癒が促されます。

●疼痛
組織が損傷された際に表現される不快な感覚や情動体験です。炎症の部位に浸潤したマクロファージなどから放出されるプラジキニンなどの発痛物質が、自由神経終末の感覚受容器を刺激し、痛み信号に変換されて、末梢神経から脊髄、大脳皮質へ伝わって、痛みとして感じます。痛みは、さらなる損傷や侵襲を避け、組織の治癒のための安静を促す、警告的な感覚としての意味があります。そのため鎮痛薬などで炎症を過度に抑えてしまうことにより、炎症過程や治癒過程が遅れ、炎症や疼痛が慢性化する可能性もあります。

 

《問題》急性炎症と比較した場合の慢性炎症の特徴はどれか。

【理学療法士】第56回 午後76
急性炎症と比較した場合の慢性炎症の特徴はどれか。

<選択肢>

  1. 1.局所の浮腫
  2. 2.白血球の集積
  3. 3.フィブリン析出
  4. 4.毛細血管の退縮
  5. 5.血管透過性の亢進

解答と解説

正解:4

炎症の時間的経過、急性炎症と慢性炎症を中心に解説します。

(1)炎症の過程
前述の炎症の5徴候との関連も含めて、炎症の過程を図に示します。炎症の過程は細胞の損傷に対する炎症性物質(ヒスタミン、キニンなど)の放出から始まります。これにより、血管の拡張、毛細血管透過性の亢進、疼痛の発生、食細胞などの遊走が生じ、発赤、熱感、腫脹、疼痛、さらに機能障害が起こります。過程の中で、治癒に必要な栄養や酸素の供給が促進され、破壊された細胞の破片や病原体が除去され、組織の代謝が高まることで、治癒に至ります。

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図 炎症の過程

(2)炎症の時間的経過
炎症の過程は複雑で、複数の反応が並行して進展しますが、おおまかに組織・細胞の損傷、充血・浮腫・滲出、炎症性細胞の浸潤、修復の段階に分けることができます(表)。これらの段階は、ひとつの段階が完了してから次の段階に進むのではなく、連続的に進展し、全体的には多様な様相を呈します。

炎症の転帰は、炎症の原因や種類、その程度、それに対する生体の反応状態などによって影響されるため、すべてが完全に治癒するのではなく、以下のようにさまざまです。

1)治癒:炎症部位が正常の組織に回復すること
2)瘢痕化:破壊された組織が肉芽組織、線維瘢痕組織に置き換えられ、炎症前の状態ではないが、安定した状態に回復すること
3)膿瘍形成:化膿により、好中球が組織の破壊された部位に集まり、膿汁が貯留した状態
4)慢性化:急性炎症が完全に収束せず、炎症が持続した状態
5)再燃:炎症が収束に向かった後に、何らかの原因で再び活性化された状態
6)拡散:炎症が他の部位に広がること

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表 炎症の時間的経過

(3)慢性炎症
慢性炎症は、急性炎症が完全に治癒せずに経過が長期化して慢性化する場合と、初期から慢性に経過する場合があります。後者の場合は、自己免疫疾患や毒性の低い微生物の持続感染などによるものです。
急性炎症では、血管の変化や浮腫、炎症細胞の浸潤(好中球など)が主体ですが、慢性炎症では、マクロファージやリンパ球などの単核細胞や新生血管の増生を含む、修復と線維化に関わる細胞が認められます。

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図 急性炎症と慢性炎症

(4)急性炎症と慢性炎症の比較
局所の浮腫、白血球の集積、フィブリンの析出、血管透過性の亢進は急性炎症に生じる特徴です。毛細血管の退縮は慢性炎症の特徴です。
急性炎症では毛細血管が拡張し、血流が増加しますが、急性炎症がある程度落ち着き、慢性炎症へ移行する時期には、毛細血管が退縮してきます。

実務での活かし方

炎症を認める患者への対応で、局所の炎症の場合には、炎症の4徴候の症状の確認が基本です。炎症を認める部位の皮膚の色調、局所の熱感、腫脹の確認と疼痛の評価です。疼痛は自発痛、運動痛も確認しますが、圧痛の評価が重要です。疼痛自体主観的ですが、自発痛や運動痛は疼痛を生じる刺激の同定が難しい場合がありますが、圧痛は刺激の制御が可能であり、疼痛の変化の評価に適しています。

これらに加えて、体温、炎症マーカー(白血球、赤血球沈降速度、CRP: C-reactive protein、など)を確認します。患者の訴えと炎症マーカーの推移が一致しない場合もあるため、定期的な血液検査が必要です。
捻挫、打撲などの四肢の急性炎症に対する応急処置ではRICEが基本であり、早期の適切なRICEの処置により、回復も助けられます。

<急性炎症に対するRICEによる応急処置>
●R Rest(安静) :
炎症部位を安静にします。タオルや添え木などで固定することもあります。

●I Icing(冷却):
氷で患部を冷やします。冷やすことで毛細血管が収縮し、腫脹や皮下出血、疼痛などが和らぎます。冷たさを感じなくなったら、一度氷を離し、皮膚の感覚が戻ってから、冷却を再開します。

●C Compression(圧迫):
炎症部分をテープなどで巻いて圧迫し、腫脹や皮下出血を抑えます。圧迫が強すぎると神経障害や循環障害を生じるため、皮膚の色が青紫色になる場合やしびれを訴える場合には、圧迫を緩めます。

●E Elevation(挙上):
炎症部位を心臓より低い位置とすると、血液が炎症部位に集まり、充血、皮下出血、腫脹などが助長されるため、炎症部位を心臓よりも高い位置に保ちます。

急性炎症の早期には安静が基本です。また、疼痛が強い場合には、鎮痛薬が使用されますが、生体防御に必要な炎症反応を妨げることなく、炎症による疼痛を軽減することが大切です。非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)、麻薬性鎮痛薬(オピオイド)、局所麻酔薬などの鎮痛薬が使用されますが、症状の軽快に伴って、減量あるいは中断することが必要です。

高齢者の増加に伴い、加齢に関連する疾患と慢性炎症の関係が指摘されています。生活習慣病やがんなどの加齢関連疾患に共通する病態は慢性炎症であり、加齢に伴って生じる慢性炎症が加齢関連疾患の発症や悪化に関連していると考えられています。低レベルでの炎症反応が何年にもわたって持続する慢性炎症が特徴であり、加齢に伴う免疫系の変化が一因と考えられています。この免疫老化を予防し、高齢になっても免疫系を活性化させるためには、「バランスの良い食事(摂取カロリーの制限、ビタミンE・Cの摂取など)」「適度な運動」「ストレスの少ない生活」「十分な睡眠」を心がけることが大切です。

臼田 滋

臼田 滋

群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授
群馬県理学療法士協会理事
理学療法士免許を取得後、大学病院で勤務し、理学療法養成校の教員となる。
小児から高齢者までの神経系理学療法が専門。


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