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誤嚥性肺炎の兆候を見逃さない!~言語聴覚士が肺炎の兆候を知るのに有用なデータ~

公開日:2019.06.17 更新日:2021.08.27

津村恒平(東京都言語聴覚士会)

嚥下の直接訓練の実施によって生じるリスクのひとつ「誤嚥性肺炎」には、充分注意しなければなりません。そこで今回は「肺炎の兆候を知るのに有用なデータ」について取り上げたいと思います。

第22回の摂食嚥下機能の評価の記事もあわせて参考にしてください。

言語聴覚士が肺炎の兆候を知るのに有用なデータとは?

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《問題》嚥下の直接訓練において肺炎の兆候を知るのに有用なのはどれか。

過去問題【言語聴覚士】第16回 第87問

a.CRP
b.胸部聴診
c.血圧
d.血中ヘモグロビン
e.血中酸素飽和度モニター

  1. 1.a、b、c
  2. 2.a、b、e
  3. 3.a、d、e
  4. 4.b、c、d
  5. 5.c、d、e

解答と解説

正解:2(a、b、e)

■解説
解答項目に挙げられているそれぞれの内容について解説していきます。

a.CRP(C-リアクティブ・プロテイン)

CRPは、正常な場合、血液中にごく微量しか見られません。よって標準値は、1デシリットルの血液中に0.3ミリグラム以下とされています。体内に炎症が起きたり、組織の一部が壊れたりした場合に、CRPは血液中に増加するため、誤嚥性肺炎を発症した場合は標準値よりも高くなります。

しかし、CRPは、感染症や膠原病、心筋梗塞、悪性腫瘍などでも標準値より高くなることがあり、必ずしも誤嚥性肺炎が原因とは限らないため、注意が必要です。

b.胸部聴診

誤嚥性肺炎を発症すると、胸部聴診にて異常音が聴取されます。これらの異常音は「副雑音」と呼ばれ、「パリパリ」や「バリバリ」という音が特徴の「ファイン・クラックル(捻髪音) 」や「ボコボコ」や「ブクブク」といった音が特徴の「コース・クラックル(水泡音) 」、「グーグー」といった音が特徴の「ロンカイ(いびき音) 」、「ヒューヒュー」といった音が特徴の「ウィーズ(笛様音)」の4種類があります。

肺は左肺の気管支の分岐角度が約45度であるのに対して、右肺は約25度と鋭角になっています。さらに短くて太いので、左肺に比べると誤嚥物が侵入しやすくなっています。そのため、誤嚥性肺炎を疑う場合は、背中からみて右の下側(肺のS6またはS10領域)を重点的に聴診します。

c.血圧

血圧とは、血管内の血液の有する圧力のことです。血圧の高低は、肺炎の兆候とそれほど関連はありません。

d.血中ヘモグロビン

血中ヘモグロビンは、貧血の指標です。肺炎の兆候を知るのに、血中ヘモグロビンの高低はそれほど関連ありません。

e.血中酸素飽和度モニター

血中酸素飽和度モニターは、赤外線の出る装置(プローブ)を指に挟んで、皮膚を通して動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を測定するための装置です。

一般的に96~99%が標準値とされ、90%以下の場合は呼吸不全の可能性があります。誤嚥性肺炎を発症した場合、呼吸状態が悪化するため、血中酸素飽和度は低下します。また加齢によっても低下することがあることや、健康な人でも労作時に変動することがあります。

臨床でよく使用される装置ですが、指先の冷えなどで測定部の血流が不十分な場合や、マニキュアや爪白癬などで光の透過が不十分な場合などは、正しく測定されないことがあります。また、SpO2は一定時間、あるいは一定の脈拍毎に得られた値を平均して表示するため、装着直後ではなく、脈拍が安定する20~30秒後に数値を読むようにしましょう。

以上のことから、嚥下の直接訓練において肺炎の兆候を知るのに有用なデータは、
a.CRP
b.胸部聴診
e.血中酸素飽和度モニター

となります。
 

実務での活かし方

嚥下の直接訓練中に、誤嚥のサインであるむせ込みが生じていれば、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いと予測し、対応することができます。

しかし、誤嚥時のサインであるむせ込みが生じない不顕性誤嚥の場合は、誤嚥の存在に気が付かず、誤嚥性肺炎の兆候を早期に発見できない可能性があります。そのため、CRPや胸部聴診、血中酸素飽和度をしっかりと把握しておくことで、誤嚥性肺炎の兆候を早期に発見し、適切な対応を取ることができます。

安全かつ効果的な訓練を実施するためには、診療記録や看護記録、頭部や胸部の画像所見、嚥下造影や嚥下内視鏡検査の所見、飲食場面の観察などと併せ、各種検査データやバイタルサインなども把握することが重要となります。

今まで、各種検査データの把握が不十分だった方は、是非、各種データを把握している(意識できている)セラピストになっていただけたら幸いです。

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津村 恒平(つむら こうへい)

津村 恒平(つむら こうへい)

2002年 言語聴覚士免許取得。回復期リハビリテーションならびに訪問リハビリテーションに従事。
一般社団法人 東京都言語聴覚士会 理事 地域生活支援局 局長
一般社団法人 日本言語聴覚士協会 医療保険部 部員

東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。
活動内容や入会のお問い合わせはこちらから。
http://st-toshikai.org/

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