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パーキンソン病の病態と症状解説

公開日:2019.10.18 更新日:2019.11.14

パーキンソン病は大脳基底核が障害されることで生じる神経変性疾患です。手の震え(振戦)、動作緩慢、手足のこわばり(強剛)などの運動障害を示します。中高年に発症することが多く、徐々に進行して歩行が困難となり、車椅子生活や寝たきりとなる場合があります。今後の高齢化社会に伴って、ますます増加することが予想されており、日本では特定疾患(難病)に指定されています。

パーキンソン病は高齢になるほど発症率と有病率は増加します。日本の有病率は10万人当たり100人から180人といわれています。パーキンソン病の特定疾患医療受給者証の所持者数は、2017年度で約127,000人であり、平均寿命の延伸や高齢者の増加に伴い、パーキンソン病の有病率も年々上昇すると推定されています。原因の詳細は不明ですが、加齢、除草剤・殺虫剤への暴露、農村生活、生活スタイルなどの環境因子の影響が示唆されています。

パーキンソン病の進行を遅らせる有効な治療はなく、対症療法が中心です。L-ドパなどの薬物療法、脳深部刺激療法などの手術療法、リハビリテーションなどを組み合わせて治療が行われます。iPS細胞由来ドーパミン神経細胞による治験も開始され、iPS細胞を使用した治療薬候補物質の発見なども報告されています。さらに、血液検査によるパーキンソン病の早期診断方法の開発も発表されるなど、診断と治療の今後の発展が期待されています。

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過去問題【理学療法士】

第54回 午前 第35問
Parkinson病に対する包括的な評価指標であるUPDRSの評価項目でないのはどれか。

  1. 1.感覚
  2. 2.姿勢
  3. 3.歩行
  4. 4.知的機能
  5. 5.ジスキネジア

解答と解説

正解:1


第54回 午前 第90問
Parkinson病でみられないのはどれか。

  1. 1.便秘
  2. 2.運動失調
  3. 3.動作緩慢
  4. 4.静止時振戦
  5. 5.レム睡眠行動障害

解答と解説

正解:2

■解説

大脳基底核のループとパーキンソン病の病態

大脳基底核には、線条体(尾状核と被殻)、淡蒼球、視床下核、黒質の4つの神経核があります。(図1)

図1 大脳基底核

大脳皮質と大脳基底核には、運動ループ、認知ループ、大脳辺縁系ループ、眼球運動グループの4つの神経回路が明らかになっています。
運動ループには直接経路(図2:皮質から線条体、淡蒼球内節、視床、皮質へ)と、視床下核を経由する間接経路(図3:皮質から線条体、淡蒼球外節、視床下核、淡蒼球内節、視床、皮質へ)の2つの経路があります。

図2 直接経路

図3 間接経路

パーキンソン病は黒質緻密部にあるドーパミンを産生する神経細胞が変性し、線条体でのドーパミンの量が減少します。D1受容体への刺激が減少するために直接経路の活動は減少します。D2受容体に対しては抑制が低下するため、間接経路が活発になります。それにより、視床の活動や大脳皮質の活動が減少し、運動減少(無動)が生じます。

図4 運動ループのパーキンソン病における変化

パーキンソン病の症状

パーキンソン病は、運動症状が主症状である神経変性疾患ですが、さまざまな非運動症状も合併することの多い多系統変性疾患です。(表1)
運動症状は、無動(もしくは動作緩慢)、振戦、強剛、姿勢保持障害が4大症状です。無動は、運動開始の遅れ、運動自体の減少、動作の遅さであり、上肢の巧緻運動から、寝返りや歩行などの粗大運動、着替えなどのセルフケアなど、いろいろな場面に影響します。声量の低下や仮面様顔貌、流涎なども無動の部分的な症状です。振戦は、静止時振戦(4-6 Hz)が特徴的です。強剛(固縮)は筋緊張の亢進した状態で、鉛管様強剛、歯車様強剛などと表現されることがあります。姿勢保持障害は、症状の進行に伴って出現してくることが多く、後方突進現象など、安定した姿勢を保つことが困難となります。
非運動症状を病期の初期から認めることも多く、運動症状とは独立して、QOLの低下をきたします。レム睡眠行動障害などの睡眠障害・覚醒障害、精神・認知・行動障害、起立性低血圧や便秘などの自律神経障害、嗅覚障害などその症状はさまざまです。

表1 主な運動症状と非運動症状

運動症状 無動
振戦
強剛
姿勢保持障害
その他(姿勢保持障害 すくみ現象)
非運動症状 睡眠障害、覚醒障害
精神・認知・行動障害:気分障害、幻覚、妄想、行動障害、認知機能障害
自律神経障害:起立性低血圧、排尿障害、消化管運動障害、発汗障害、流涎
感覚障害:嗅覚障害、痛み
Unified Parkinson’s Disease Rating Scale: UPDRS

UPDRSは、精神機能、日常生活動作、運動機能、治療の合併症の4つのパートに分かれ、全部で42項目で構成されています(表2)。パーキンソン病の症状を総合的に評価することができ、薬物治療などの効果判定に用いられます。最近は、2008年に報告されたMDS-UPDRS(Movement Disorder Society-sponsored revision of the UPDRS)が用いられることが増えています。MDS-UPDRSでは、非運動症状の項目数が13項目になっています。UPDRSでは、日常生活動作の中にしびれや痛みなどの感覚症状に関する項目がありますが、いわゆる感覚障害に関する項目は含みません。

表2 UPDRSの項目

PartⅠ 精神機能、行動および気分
1 知的機能障害
2 思考障害
3 抑うつ状態
4 意欲、自発性
PartⅡ 日常生活動作
5 会話
6 流涎
7 嚥下
8 習字
9 食事と食器の扱い
10 着衣
11 入浴トイレ
12 寝返り及び布団直し
13 転倒
14 歩行中のすくみ
15 歩行中のすくみ
16 ふるえ
17 パーキンソニズムに関連した症状

PartⅢ 運動能力検査
18 言語
19 顔の表情
20 安静時振戦
21 手の動作時振戦または姿勢振戦
22 固縮
23 指タップ
24 手の運動
25 手の回内回外運動
26 下肢の敏捷性
27 椅子からの立ち上がり
28 姿勢
29 歩行
30 姿勢の安定性
31 動作緩慢と運動減少
PartⅣ 治療の合併症
A ジスキネジア
32 ジスキネジアの出現時間
33 ジスキネジアに起因する障害
34 痛みを伴うジスキネジア
35 早期のジスキネジア
B 症状の日内変動
36 服薬時間から予想できるオフ期間の有無
37 服薬時間から予想できないオフ期間の有無
38 数秒間の中に突然起きるオフ期間の有無
39 起きている時間の何%がオフ期間か?
C その他の合併症状
40 食欲低下、吐き気、嘔吐の有無
41 不眠、眠気などの睡眠障害の有無
42 起立性低血圧による立ち眩み、失神の有無

■実務での活かし方

典型的な左右差のある安静(静止)振戦がある、または歯車様強剛、動作緩慢、姿勢保持障害のうち2つ以上が存在する場合をパーキンソニズムといいます。パーキンソン病以外でパーキンソニズムを合併する疾患は、多系統萎縮症、進行性核上麻痺、脳血管障害性パーキンソニズム、薬剤性パーキンソニズムなどと多く、早期診断から適切な治療のためには鑑別診断が重要です。疾患によって効果的な治療が異なりますし、予後も大きく異なります。
最近、新しい検査法や病理学的モデルが報告されるなど、新たな知見が集積されてきていることから、新しい診断基準が検討されています。International Parkinson and Movement Disorder Society (MDS)から2015年に新しい診断基準(※)(表3)が報告され、これから世界的に使用されていくと考えられています。
病院の入院患者さんや訪問・通所サービスの利用者など、多くの高齢患者さんで、パーキンソニズムを示すことがあります。その中には正確な診断がされていない場合もあり、その際には、上記の診断基準や心筋シンチグラフィなどの画像所見により、パーキンソン病かどうかの診断を優先させることが重要です。パーキンソン病であれば、薬物治療等である程度の治療効果が期待できるため、運動療法などのリハビリテーションの効果もより期待できます。

表3 International Parkinson and Movement Disorder Society(MDS)診断基準の概要

臨床的に確実なパーキンソン病
パーキンソニズムが存在し、全体的・相対的除外基準に抵触せず、少なくとも2つの指示的基準に合致
臨床的にほぼ確実なパーキンソン病
パーキンソニズムが存在し、絶対的除外基準に抵触せず、相対的除外基準と同数以上の指示的基準に合致。ただし、相対的除外基準が2つ未満。
支持的基準
・明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる
・L-ドパ誘発性のジスキネジアがみられる
・四肢の静止時振戦が確認できる
絶対的除外基準
・小脳症状がみられる
・下方への核上性眼球運動障害がみられる
・下肢に眼局したパーキンソニズムが3年を超えてみられる など
相対的除外基準
・5年以内に車椅子利用となるような急速な歩行障害の進展がみられる
・5年以上の経過で運動症状の増悪がみられない
・発症5年以内に重度の構音障害や嚥下障害などの球症状がみられる
・発症から5年以内に重度の自律神経障害(起立性低血圧、尿失禁・尿閉)がみられる など

*Postuma RB,et al.: MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Move Disord 30: 1591-1601, 2015.

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臼田 滋

臼田 滋

群馬大学医学部保健学科理学療法学専攻 教授
群馬県理学療法士協会理事
理学療法士免許を取得後、大学病院で勤務し、理学療法養成校の教員となる。
小児から高齢者までの神経系理学療法が専門。

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