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アスペルガー症候群の特徴と原因について

公開日:2020.06.22 更新日:2020.07.17

ものごとに対するこだわり、場面の文脈や会話の意図を読み取り、相手に共感するといった社会的なコミュニケーションを苦手とするアスペルガー症候群。自閉症と少し異なり、幼少期の言語発達に遅れがない場合が多いため、大人になってから学校や職場で悩みやストレスを抱えるケースがみられます。

アスペルガー症候群の原因は、いまだ解明されていません。これまでさまざまな仮説がたてられ、幼い頃の親子の関係性や家庭環境が影響すると誤解されていた時期もありました。
最近では、脳科学や画像診断の進歩により、生まれながら脳に器質的な問題があり、発達の過程に支障をきたすという考え方が支持をされるようになってきました。
例えば、脳の神経ネットワークに何らかの支障があり、相手の気持ちや目の前で起きていることの背景、意図を察することが難しくなってしまうという説です。脳の特定の部位における神経細胞が増大し、神経ネットワークに不整合やアンバランスが生じているといった、神経学的な裏付けに関する研究がさかんに行われています。

作業療法士の国家試験の過去問題では、以下のように、アスペルガー症候群との実際の作業場面での関わり方や環境のあり方を問うものが出題されています。

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過去問題【作業療法士】

第53回 午後 第18問
20歳男性。幼少期は一人遊びが多かった。小学校から高校までは成績は概ね良かったものの、正論的発言が多い、融通が利かないなどによって集団になじめず、いじめを受けることも多かった。大学に入ると、講義科目は問題ないが、演習科目のグループワークで相手に配慮した発言がうまくできず、メンバーから避けられることが多くなった。大学2年生になると、過去のいじめ体験を思い出してパニックになることが増え、自宅の自室に引きこもる状態となったため、母親に連れられて精神科を受診し、外来で作業療法が開始された。
この患者の作業療法で適切でないのはどれか。

  1. 1.ルールや取り決めを明示しておく。
  2. 2.興味や関心のある活動を導入する。
  3. 3.作業手順を言葉で細かく伝える。
  4. 4.心理教育プログラムを実施する。
  5. 5.パラレルな場を用いる。

解答と解説

正解:3

悪循環を断ち切る要因を探る

幼少期の言語発達には遅延がみられず、知的面に問題がない。相手の気持ちや状況を察することの弱さがみられ、柔軟性のなさ(習慣へのこだわり、限定的な興味)を背景に対人関係において困難を抱えやすい点から、問題文中の男性は、発達障害のなかでもアスペルガー症候群であることが予測できます。

選択肢1は、作業の枠組みを明示し安心できる場のなかで、集団場面でのルールやストレスの回避方法に気づき、学ぶのに適しています。
選択肢2は、作業療法の導入、継続性の観点から当然有効なものです。
選択肢3の作業手順を細かく伝えるというのは、社会生活でストレスを抱えてきた対象者にプレッシャーを与えかねませんし、手順にこだわりがある対象者であれば、なおさら重荷となってしまいます。手順が細かい場合は、文字や図を使って視覚的に示したほうがうまくいくことが多いでしょう。
選択肢4は、社会生活への適応に向けた準備活動の一つとして有効です。
選択肢5は、集団行動をする際にはパラレル(比較的自由な空間、並行遊び)な環境であるほうが導入しやすいでしょう。

アスペルガー症候群は、ある程度成長してから診断されるため、社会生活がなぜ困難であったか大人になってからはっきりすることが多いです。そのため、既に二次障害である、不登校、引きこもり、うつ傾向、職場での不適応などを引き起こしているケースが多く、問題文中の男性もその一例でしょう。

実務での活かし方

作業療法では、自閉症と同様にコミュニケーション全般に困難さを抱えている可能性に配慮した作業環境を整えることが大切です。自閉症と異なり、幼少期に明らかな言語発達の遅れがなかったとはいえ、対人コミュニケーションにおいて風変わりな言葉使いや態度、場面に沿わない言動をとる場合もあるため、場面ごとの観察が欠かせません。

二次障害が生じた背景を把握し、対象者の強みを活かした良循環へ導きましょう。

<参考文献>
「自閉症の謎を解き明かす 新訂」 ウタ・フリス(著)/富田真紀(訳)/清水康夫(訳)/鈴木玲子(訳)(東京書籍)

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中山 奈保子

中山 奈保子(なかやま なおこ)

作業療法士(教育学修士)。
1998年作業療法士免許取得後、宮城・福島県内の医療施設(主に身体障害・老年期障害)に勤務。
現職は作業療法士養成校専任教員。2011年東日本大震災で被災したことを期に、災害を乗り越える親子の暮らしを記録・発信する団体「三陸こざかなネット」を発足し、被災後の日常や幼くして被災した子どもによる「災害の伝承」をテーマに執筆・講演活動を行っている。

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