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第59回言語聴覚療法における失語症への包括的介入

公開日:2022.05.31

言語聴覚療法における失語症への包括的介入

文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

今回取り上げる過去問のテーマは、失語症への包括的介入についてです。失語症への言語療法の目的は、失語症者が自分らしい生活を構築することにあります。次の3つのポイントから、包括的介入について解説しましょう。

(1)言語機能障害への介入:機能訓練
(2)実用的なコミュニケーション訓練の実施
(3)社会参加への支援

失語症の言語治療には包括的介入が不可欠

失語症の言語治療の目的は、失語症者が自分らしい最善の生活を構築することにあります。この目的の達成のためには、包括的介入が不可欠であると考えられ、ICFを用いて整理し介入を行っていきます。

ICFについては以前の国試ドリルで詳しく解説しています。
「全体像の把握」に役立つICF(国際生活機能分類)を活用した言語聴覚士の介入

それでは失語症への包括的介入の実際について詳しく見ていきましょう。

 

《問題》失語症の訓練・援助について誤っているのはどれか。

【言語聴覚士】 第15回 第158問
失語症の訓練・援助について誤っているのはどれか。

<選択肢>

  1. 1. 機能再編成法は強力な聴覚刺激を使用する。
  2. 2. 実用コミュニケーション訓練では残存能力を活用する。
  3. 3. グループ訓練は心理・社会面の援助になる。
  4. 4. 環境調整には失語症者と関わる者に失語症の知識を伝達することが含まれている。
  5. 5. 失語症友の会などの当事者グループは失語症者の社会参加の場となる。

解答と解説

正解:1. 機能再編成法は強力な聴覚刺激を使用する。

「機能再編成法」とは、たとえば仮名文字訓練におけるキーワード法など、障害されていない脳領域の機能を再編成することによって、障害された機能を新しい方式で遂行できるようにする方法です。したがって、「1.機能再編成法は強力な聴覚刺激を使用する」は誤りです。

ちなみに「強力な聴覚刺激を使用する」は、Schuellらの刺激法の治療原則のひとつに挙げられています。2~4はその通りで、失語症への包括的介入の重要な視点となっています。

実務での活かし方

今回は次の3つのポイントに分けて、失語症への包括的介入について解説していきます。

(1)言語機能障害への介入:機能訓練
(2)実用的なコミュニケーション訓練の実施
(3)社会参加への支援

(1)言語機能障害への介入:機能訓練

言語機能障害への介入として、機能訓練を実施します。機能訓練の目的は「脳に適切な刺激を与えて言語を処理する過程を賦活し、喚語、文産生、書字のような言語活動を回復させること」にあります。

失語症の機能回復は、運動麻痺などと比較し、長期間にわたり期待できることが明らかになっています。(失語症の予後については「失語症のリハビリテーションは長期間にわたり実施することが重要」を参照)

そのため、発症から比較的時間が経過した生活期においても、継続して適切な機能訓練を実施することが重要です。

(2)実用的なコミュニケーション訓練の実施

実用的コミュニケーション訓練とは、日常会話におけるコミュニケーションの向上を目的とした介入です。実用的なコミュニケーション訓練では、残存能力を活用し、日常生活場面での実行している活動を拡大していきます。

(3)社会参加への支援

社会参加への支援には、家庭における役割づくり、職場復帰、コミュニティーや当事者グループへの参加に向けた支援などが含まれます。社会参加への支援では、家庭や職場に出向いて症状や適切なコミュニケーション方法について説明することなどがあり、関連する団体や職種との連携が不可欠になります。

失語症者の社会参加の場として「失語症友の会などの当事者グループ」、また最近の話題として「2018年より各都道府県で展開されている失語症者向け意思疎通支援事業」があります。

失語症者向け意思疎通支援者とは
失語症を理解し、失語症のある人との会話や会議、外出、各種の手続きなど様々な場面で、意思を確認し必要なコミュニケーションの橋渡しをします。
令和4年度「失語症者向け意思疎通支援者養成講習会 募集要領(東京都福祉保健局)」より引用

記載されているように、失語症者向け意思疎通支援者は「失語症者の社会参加を支援すること」を目的としています。

このような活動は各都道府県の言語聴覚士会が窓口を務めていることが多いです。各士会のホームページを確認してみると良いでしょう。

参考:失語症者向け意思疎通支援者養成事業PR動画「失語症のある人が困ること~工夫と支援~」 | 東京動画

まとめ

失語症への包括的介入のポイントについて3点に絞って解説しました。これら3点に共通することは、失語症者が自分らしい最善の生活を構築していくことを支援していくことにあります。

この考え方は、クライアント中心の言語聴覚療法とも呼ばれ、言語聴覚士の臨床における基本的な態度でもあります。現在のリハビリテーション医療は、急性期、回復期、生活期と段階が分かれているため、一人の言語聴覚士が急性期から生活期まで継続して支援していくことは困難です。

各段階における言語聴覚士が、一貫して包括的なクライアント中心の言語聴覚療法を実施していくことが重要です。

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[出典・参照]
藤田郁代ら.標準言語聴覚障害学 失語症学 第3版.医学書院,2021
令和4年度失語症者向け意思疎通支援者養成講習会のご案内(東京都福祉保健局)

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。


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