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第65回右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害への対応

公開日:2022.07.20

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文:近藤 晴彦
東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長

本記事の概要

今回、言語聴覚士国家試験から取り上げるのは、「右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害」をテーマにした過去問題です。
脳血管障害では右半球に損傷を認めると、「発話が冗長になる」「話者のニュアンスや意図が伝わりにくい」といった“右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害”を認めことがあり、言語聴覚士の臨床で対応する場面もあります。
右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害に対し、実際の臨床場面ではどのように評価し、介入していくのでしょうか。今回は、その具体的な内容を紹介していきます。

 

《問題》右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の特徴はどれか

【言語聴覚士】第21回 64問
右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の特徴はどれか

<選択肢>

  • a. 話が脱線しがちである
  • b. 単語の意味が理解できない
  • c. 言おうとする単語が出てこない
  • d. 会話において役割交代ができない
  • e. 物語のテーマやポイントが分からない
  1. 1. a,b,c
  2. 2. a,b,e
  3. 3. a,d,e
  4. 4. b,c,d
  5. 5. c,d,e

解答と解説

正解:3

「b.単語の意味が理解できない」「c.言おうとする単語が出てこない」は、失語症の特徴です。その他については、右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の特徴です。
したがって、解答は<3.>になります。

実務での活かし方

それでは、実際の臨床では「右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害」について、どのように考え、対応していくのか、解説していきましょう。

(1)右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の症状
まずは、右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の症状について押さえていきましょう。
右半球損傷に伴う高次脳機能障害により、推論の障害、注意障害、視空間失認、視覚認知、病態失認、社会的認知、感情と情動の障害など談話レベルでのコミュニケーション障害が生じると考えられています。

症状については、語用論的機能の障害とプロソディの障害があります。

●語用論的機能の障害
「談話において起承転結の構造で産生できない」などの言語表現の効率の低下や、「会話においてコミュニケーション技法が問題になる」といった、会話の障害が認められます。
●プロソディの障害
「発話が単調になり喜怒哀楽を伝達できない」産生の障害や、「イントネーションによる情動を判別できない」理解の障害を認めます。

(2)右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害の評価と介入
それでは、実際の臨床では右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害に対しどのように介入にしていくのでしょうか。評価と介入について解説していきます。

●評価
「机上検査」
右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害には、標準化された包括的な検査方法はありません。談話の評価をおこなうために、標準失語症補助検査(SLTA-ST)でおこなわれるまんがの説明課題や、WAB失語症検査の情景画などを用いて評価を実施することがあります。
右半球損傷に伴う高次脳機能障害が背景にあることから、BIT行動性無視検査、標準注意検査法(CAT)と標準意欲評価法(CAS)、遂行機能の評価として遂行機能症候群の行動評価(BADS)などの評価を実施することが重要です。

●行動評価
会話場面でのやりとりから評価をおこなうことが重要です。また、症状の特性から病棟生活でのトラブルに発展することもあり、病棟スタッフなどの関連職種やご家族からコミュニケーションに関する情報収集をおこなうことも重要な評価の視点になります。

●介入
コミュニケーションへの介入として、会話の訓練や談話課題を実施します。会話の訓練では、コミュニケーションモデルを提示しての練習やロールプレイ、実際の会話場面を撮影して客観的に振り返る方法などが知られています。談話課題では、4コマまんがや情景画などを用いて、起承転結など特定の順序で談話の産生を促す方法があります。
また、右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害は、右半球損傷に伴う高次脳機能障害が背景にあることから、注意機能や遂行機能の改善に向けた課題を実施することも重要です。

まとめ

右半球損傷後に生じるコミュニケーション障害について、実際の臨床場面での評価や介入を中心に解説しました。右半球損傷に伴う高次脳機能障害が背景にあるため、これらの評価結果などと照らし合わせ、問題点を整理し評価・介入をおこなうことが重要になります。
また、症状の特徴上、日常生活上のトラブルにもつながることがあるため、机上での介入だけでなく、関連職種と連携しながら日常生活への介入をおこなっていくことが重要です。

[出典・参照]
藤田郁代ら.標準言語聴覚障害学 失語症学.医学書院,2021
Myers PS(著),宮森孝史(監訳).右半球損傷-認知とコミュニケーションの障害.協同医書出版,2007

近藤 晴彦

近藤 晴彦(こんどう はるひこ)

東京都言語聴覚士会 理事 広報局局長
国際医療福祉大学大学院 修士課程修了。
回復期リハビリテーション病院に勤務する言語聴覚士。
東京都言語聴覚士会ロゴ 東京都言語聴覚士会
http://st-toshikai.org/
東京都におけるすべての言語聴覚士が本会に入会され、自己研鑽に励み、地域社会に貢献することを目指し、活動中。


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