第13回英語嫌いのPTが教える英語論文読解のコツ その3
公開日:2017.07.21 更新日:2021.04.09
文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士
残りの3項目を読んで内容の最終確認を
前回までのお話で、目的と結論、そして図表でざっくりと研究の概要をつかんでいただけたかと思います。時間はかかりましたが、ここから「Methods(方法)」と「Results(結果)」を読んでみましょう。最後の2つの項目のお話です。
7. Methods(方法)とResults(結果)を読む
「Methods(方法)」ではこの論文について、どのような対象でどのような指標を、何を使って測定しているのかなどを確認しましょう。比較研究の場合なら、A群とB群でそれぞれどのような介入をしているのかが記載されています。
例えば脳卒中患者を対象に、ファンクショナル・リーチと重心動揺計を用いてバランスを測定している研究の場合。A群は通常の理学療法に加えてリーチ動作練習を追加、B群は通常の理学療法のみの介入、などと書かれていると思います。
「Results(結果)」では「Figure1(図1)」「Table1(表1)」と書いてあるところを中心に確認します。前回お伝えした通り、本文に取りかかる前には図表に目を通していただいていると思いますが、「Conclusion(結論)」や「Methods(方法)」を読み終えたことで、より理解しやすくなっているのではないでしょうか。
8.「論文の背景」とDiscussion(考察)を読む
最後に、本文の最初に示されている「Introduction(導入)」や「Discussion(考察)」にも目を通しておきましょう。たいていの場合、そこではその分野の歴史や先行研究などについて書かれています。基礎知識としては役に立つ情報です。
しかし、研究の目的や結論をすでに理解している皆さんにとって、論文の導入や考察はそれほど重要ではないと思います。私も英語論文に慣れていない頃は「Introduction(導入)」から読み始めて、どんなことが書いてあるのか理解できず、迷子になっていました。
英語論文に取りかかる際にはここまでお話ししてきたように、目的と結論、図表を最初に見て、なんとなくでも論文の結論を把握しておくことをおすすめします。そうすることで、論文をよりスムーズに読めるようになるでしょう。
効率的に、目標の一つとして学ぶ
長くなりましたが、英語論文を読むべき理由と読むコツを書いてみました。
まずは自分の興味ある分野の論文を選び、今回お伝えしたコツを使いながら読んでみていただきたいと思います。
1人でいくつもの英語論文を読むのは大変なことです。可能であれば、周囲の同僚や同業の友人たちとグループを作って勉強会を開催してみるのもいいかもしれません。6人のグループで月1回抄読会を行った場合、自分は2本の論文を読むだけなのに、1年間で12本の英語論文に触れることができます。仲間と助け合い、効率的に学ぶことも重要です。
今後の目標を立てている人もいるでしょう。研究、学会発表、英語の勉強などを目標にしている人もいるのではないでしょうか。ぜひその目標の一つとして、英語論文を読むことにも挑戦してみてください。

吉倉孝則 (よしくら たかのり)
理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。
大学病院への勤務時代は、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。
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