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予防理学療法って何をするの?(2)~高齢者の介護予防と周産期

公開日:2019.01.28 更新日:2023.03.14

文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士

予防理学療法とは何か、と聞かれても、養成校時代にはあまり習わなかったという人も多いのではないでしょうか。前回は、予防は様々なフェーズライフステージごとにあることを書きました。今回はライフステージごとに「予防」領域の理学療法について紹介します。

 

高齢者に対する予防理学療法(介護予防)

ライフステージごとに紹介するのであれば、周産期や乳幼児から順に述べるのが良いかもしれませんが、一番身近で分かりやすいであろう高齢者から書いていきたいと思います。
前回医療機関や介護事業所で患者・利用者に提供するリハビリテーションも3次予防の一つであると述べました。リハビリテーションの提供による身体機能の維持改善、活動量の確保、参加の促しは重症化予防の観点から重要です。しかし、近年では、高齢者の1次予防から2次予防への関与も盛んに行われています。
それは、介護予防事業です。

皆さんは健康寿命という言葉を知っていますか。一般的に言われる寿命は平均寿命のことです。2016年のデータで、男性が80.9歳、女性が87.1歳です。日本は世界一の長寿国とも言われています。一方で、健康寿命とは「健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態」を指します。つまり元気でいられる期間です。2016年の健康寿命のデータは、男性が72.1歳、女性が74.7歳となっています。平均寿命と健康寿命の差は男性で8.8年、女性で12.4年です。
この期間は何を意味するのか?

この期間は介護など人の助けが必要となる可能性の高い期間ということになります。この期間が長いと医療介護費がかかるのは当然です。「健康寿命の延伸」という言葉が叫ばれていますが、健康増進、疾病予防、介護予防ということが重要となっています。
介護予防として、市町村では介護予防・日常生活支援総合事業が始まっています。これについては、第18回19回で詳細に書いているので、そちらをご覧ください。平成25年の時点で、介護が必要になった主な原因の割合をみると、第1位は脳血管疾患17.2%、第2位は認知症16.4%、第3位が高齢による衰弱13.9%です。そして、第4位の骨折・転倒12.2%と第5位の関節疾患11.0%の両者を合わせて「運動器の障害」と考えると23.2%と第1位の脳血管疾患を上回ります。

図1:65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因

出典:内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況

これらより、運動器の機能低下を予防することは重要な課題です。
高齢者における1次予防では元気な高齢者、2次予防ではロコモティブシンドローム(ロコモ)やサルコペニア、フレイルといった運動器に問題のある高齢者に対して、理学療法士が運動の観点から介入する意義は高いと考えます。運動により、転倒骨折を予防したり、関節疾患の進行を遅らせたり、閉じこもり防止等によるロコモ・サルコペニア・フレイルといった悪循環を断ち切ることが必要になります。さらに、近年は、認知症予防に運動や身体活動が有効とされる研究も多く、運動による予防が期待されます。また有酸素運動に同時課題(dual-task)を用いた運動であるコグニサイズについてもエビデンスとして確立しつつあり、予防に関わる理学療法士としては知っておくべき知識でしょう。

さらに、予防領域では疾患を発症しやすい人への介入であるハイリスクアプローチだけではなく、集団を対象としたポピュレーションアプローチについても理解が必要です。集団が対象ということで、複数人の前で集団体操を指導するだけでなく、体操を指導する人を育成するシステムの構築や、健康や運動の必要性を情報として多くの人に提供するような啓蒙活動も必要になってくると思います。

周産期・乳幼児期での予防理学療法

乳幼児期から予防って必要なの?って思う人も多いかと思います。3次予防の観点からは、脳性麻痺など先天性疾患や出産時のトラブルによる後天性の障害がある乳幼児に対してNICU(新生児集中治療室)等での小児リハビリテーションが従来からありますね。
また周産期の1次・2次予防となると産まれてくる赤ちゃんに対してではなく、実はそのお母さんである妊婦に対して予防的に関わる必要があります。産前であれば、胎児の成長に伴い、お腹が大きくなり、腰部や股関節に負担がかかりやすくなります。同様に、出産後も、乳児の抱っこは運動器の負担が大きいです。何も対策をしないと腰痛や股関節痛を引き起こす可能性があります。また妊娠後期の適度の運動は出産に向けた股関節周囲の柔軟性改善や腹圧を高めるための腹筋の強化、そして出産時に必要な体力の維持、妊娠によるストレス発散にも有効とされています。さらに、妊娠・出産に伴う骨盤底筋群の機能低下は、腹圧による尿失禁や排便困難を引き起こすこともあります。
このような周産期全般の妊婦の健康問題に対して、理学療法士は運動指導を中心に予防的に関与する必要があります。これらは、近年ウィメンズヘルス領域として注目を集めています。

その他のライフステージの関与の方法は次回に紹介したいと思います。

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吉倉 孝則

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。
大学病院への勤務時代は、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。

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