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セラピストの本音をお届け!現役理学療法士コラム 理学療法士の吉倉孝則さんが仕事中に考えたこと、日々感じていることをお届けするコラム。現役セラピストの考えや本音が詰まった連載です。セラピストの本音をお届け!現役理学療法士コラム 理学療法士の吉倉孝則さんが仕事中に考えたこと、日々感じていることをお届けするコラム。現役セラピストの考えや本音が詰まった連載です。

第39回QOL向上に繋がるリハビリ:人工股関節全置換術(THA)後の場合

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近年、QOL(Quality Of Life)の重要性が益々高まっているように感じます。医療の進展により、延命が可能となりましたが、一方でどのように生きたいかなどに注目が集まっています。私たちリハビリセラピストも簡単に「QOL向上」という言葉を使ってしまいがちですが、そもそもQOLって何かをもう一度考えてみたいと思います。

 

リハビリテーションの目標はQOL向上

QOLは、「人生の質」、「生活の質」、「生命の質」、「生活の満足度」等々と和訳されますが、一般的に、「生活の質」と訳されることが多いと思います。日本理学療法士協会のHPには、理学療法のめざすものとして「理学療法の直接的な目的は運動機能の回復にありますが、日常生活動作(ADL)の改善を図り、最終的にはQOL(生活の質)の向上をめざします。」と書かれています。病気やけが等で自分でトイレにいけない、お風呂に入れないなどADLが低下すると、一般的にはQOLが低下するため、ADLの再獲得がQOL向上につながります。一方で、個人による価値観や思想の違いがあり、その人の関心や興味によってQOLは異なることにも注意が必要です。

例えば、脳梗塞により片麻痺となった患者が、リハビリをしながらもともとの和式の畳での生活は難しいと判断され、ベッドや椅子での生活に変更し、洋式の生活によりADLは自立できたとします。しかし、患者本人の価値観としては、畳での布団での生活を希望しており、それが叶わないことによりQOLは低下しているかもしれません。医療従事者としてどちらの判断するのが正解かは、ケースバイケースだと思いますが、こちらの押しつけでの生活様式の変更ではなく、患者の価値観にも寄り添うことが必要でしょう。

リハビリテーションの目的はQOLの向上ということに私は異論はないですし、ADLの再獲得・向上は本人の選択肢を増やす意味でも必要なことだと思います。上のケースでも、洋式の生活での自立を提案しつつ、和式での生活ではどのような介護をすればよいのか(どの程度介護をすれば和式生活が可能か)などを示しながら、最後は本人が選択できればよいと思います。QOLは明確な定義がされておらず、概念的なものですが、WHOの提唱する「健康の定義」がQOLの定義に近いと言われています。WHOでは、「健康とは身体的・精神的・霊的・社会的に完全に良好な動的状態であり、たんに病気あるいは虚弱でないことではない」と定義しています。QOLも身体的に健康なだけでなく、精神的、社会的にも良好な状態にある必要があります

私は、学会等で研究報告を見ていても、その多くが「ADLが改善しました」「筋力が有意に向上しました」という発表が多く、それが本当に患者本人の満足度やQOLに貢献しているのか疑問を持ちました。QOLは個人的な価値観等により一概には言えないことは理解しつつも、どのようなリハビリをすれば患者のQOLが向上するのか、身体機能のなにがQOLに直結しているのかが知りたくなったのです。そこで、人工股関節全置換術(THA)後の患者でいくつかの研究をしましたので紹介したいと思います。
 

1.THA後1年以上経過した患者は動的バランス訓練をし、歩行速度を高めよ!

片側THA術後1年以上経過した女性14名を対象に、QOLの指標であるSF-36(36つの質問からなるQOL尺度) とTHA患者で重要と言われている股関節外転筋、膝関節伸展筋、TUG(Timed up and go test)、歩行速度等との関連を調査しました。結果は、QOLと関連するのはTUGや歩行速度であり、術側、非術側の筋力とは有意な関連がなかったという報告をした。つまり、THA術後1年以上経過した患者に対しては、筋力訓練をするよりも、動的バランスや歩行速度を高めるようなトレーニングの必要性が示唆されました。
理学療法学Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集),2010
 

2.THA後の入院中リハビリは早歩きトレーニングをした方が6カ月後のQOLが向上する!

今度は、THA術前後の関節可動域や筋力、疼痛、TUGと術後6カ月後のQOLの指標であるSF-36の下位項目「身体機能」との関連を調査しました。この調査をやった経緯は、THA術後約3週間で自宅退院していく患者のリハビリを担当していく中で、短い期間でどんなリハビリをすれば6か月後QOLが高い(満足度が高い)のか知りたかったためです。結果は、退院時のTUGのみ有意な相関がありました。つまり、THA術後の患者のリハビリはADLの再獲得はもちろんのこと、素早く立ち上がり、早く歩き、方向転換をするといった動的バランスのトレーニングをして、退院前に機能を高めることが、その6か月後のQOLを高めることにつながる可能性が示唆されました。
Hip Joint 38巻Suppl.page170-172,2012

以上のように、私はどの機能にアプローチをするとQOLが改善するのかを明らかにするために、身体機能とQOLの関係を研究してきました。対象としている患者数が少ない、横断的研究など、不十分な点の多い研究ですが、理学療法士として患者のQOLを高める一助になればと思っています。さらに、これらを踏まえてさらなる理学療法とQOLの研究が進むことを望みます。皆さんもQOLに関連した研究をしてみませんか?研究というとハードルが高く感じますが、評価内容にQOLを加えてみませんか。次回は、QOLの評価表にどのようなものがあるか書きたいと思います。

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参考:日本理学療法士協会HP
http://www.japanpt.or.jp/general/pt/physicaltherapy/

吉倉孝則

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。
大学病院への勤務時代は、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。


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