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がんのリハビリテーションの実際は?

公開日:2016.01.25 更新日:2021.04.09

文:吉倉 孝則
理学療法士/保健学修士/認定理学療法士

がん患者のリハビリテーションとは?

は終末期や緩和ケアについて書きましたが、今回はそれに関連して「がん患者さんへのリハビリ」について書きたいと思います。

がんのリハビリって、どんなイメージがありますか?
「がん=死」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
確かに、日本人の死亡原因の第1位は悪性腫瘍(がん)です。そのため皆さんが「がんのリハビリ=終末期」というイメージを持ってしまってもおかしくありません。しかし、実際はこれに限りません。

がんのリハビリテーションは「予防的」「回復期」「維持期」「緩和期」に分類されることがあります。(Diez分類)
予防的リハビリ」とは、がんと診断された人へ手術、放射線、抗がん剤治療の前後に施行されるもので、患者さんの機能障害がまだなくても予防的に実施するものです。
回復的リハビリ」とは、機能障害や能力低下をきたした患者さんに対して、最大限の機能回復を図るものです。
維持的リハビリ」とは、がんが増大しつつあり、機能障害や能力低下が進行している患者さんに対してセルフケアや移動能力の維持・改善をするものです。
緩和的リハビリ」とは、終末期のがん患者さんに対してその方のニーズを尊重しながら、身体的、精神的、社会的にQOL(生命の質)の高い生活を送ることができるように援助するものです。

病院によっても異なりますが、私の勤務先でがんリハビリの対象となる患者さんは「緩和期」の方ばかりではありません。完治目的に手術の実施前後にリハビリをする場合や、放射線治療や抗がん剤治療を行い完治や延命を目指す患者さんのリハビリを担当することが多くあります。

なぜ今、がんのリハビリテーションか?

1981年以来、がんは日本人の死亡原因第1位となり、その後も患者数は高齢化とともに年々増加傾向にあります。日本人は生涯のうちに「約2人に1人ががんになる」と推計されています。そのため今までは、がん自体の解明や診断、治療法・治療薬の開発などに重点が置かれてきました。
このような医療関係者たちの努力もあって、診断技術や有効な抗がん剤の開発など医療技術が向上し、生存率が改善されてきています。

一方でがんの治療を終えた、あるいは治療を受けながら生活しているがん生存者“がんサバイバー”が増加しています。近年では「がん患者の療養生活の質の維持向上」「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」なども重要視されています。
このような背景もあり、2010年度の診療報酬改定では「がん患者リハビリテーション料」が新設されました。がんサバイバーの身体機能や生活機能の向上、社会復帰に向けたリハビリが注目されています。

 

がん患者のリハビリの特性

私は大学病院で勤務していることもあり、本当に幅広い患者さんと関わらせていただいています。小児がんの4歳児から90歳の方まで、1日で私が担当するがん患者さんは年齢もさまざまです。また患者さんが10時間以上の手術を受けた翌日に集中治療室から始まる超急性期のリハビリから、余命の短い終末期の患者さんを1日で担当することもありました。
がんリハビリの難しい点は、このように対象となる患者さんの年齢層の広いこと、そして「予防的」~「緩和的」と、病期が患者さんによって異なることです。さらに脳腫瘍などの脳疾患、肺癌などの呼吸器疾患、骨肉腫などの運動器疾患など、がんは全身疾患です。そうしたことから、リハビリの知識もがんの部位や種類によって全身的に網羅する必要があります。また「がんの告知」や治療中の副作用で苦しむ患者さんの精神的なサポートも必要となります。

は私自身が経験した、あるがん患者さんとのエピソードについて、書いてみたいと思います。

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

吉倉孝則 (よしくら たかのり)

理学療法士。保健学修士。認定理学療法士(運動器)。
星城大学リハビリテーション学部理学療法学専攻卒業。浜松医科大学附属病院リハビリテーション部入職。星城大学大学院健康支援学研究科修了。現在に至る。
大学病院に勤務し、整形外科疾患、がんのリハビリテーションを中心に幅広い疾患のリハビリテーションに従事。院内の緩和ケアチームにも携わり多職種連携を心がけている。
臨床業務以外にも研究活動や学生の指導など教育、地域包括リーダーとして地域包括ケアの構築にも力を入れている。

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