リハビリに加えたい要介護高齢者の口腔・口臭ケア
公開日:2016.10.28 更新日:2016.11.08
一口に「口腔ケア」といっても、そのチェック法にはさまざまな視点があります。口腔ケアは患者さんの自立や生活の質を向上させる出発点ともいえる非常に重要なもの。だからこそ多角的な観点で見たいですね。中医学で使われる舌診をはじめ、歯科医師や歯科衛生士の目線で口腔ケアについてみていきます。
要介護高齢者の口腔ケアとは
口腔ケアには大きく分けて、清掃を中心とする「器質的口腔ケア」と、機能の維持や回復を目的とした「機能的口腔ケア」があります。どちらも大切なケアであり、近年では歯科衛生士の協力を得て衛生面の強化を図るところも増えてきました。
要介護高齢者へ行う口腔ケアでは、「誤嚥性肺炎」「口腔の乾燥」「口腔機能の低下」を予防することが大きな目的です。しかし、言語聴覚士が担当する患者さんには、長期間口から食べ物を摂取しておらず、唾液が出ない状態の方も少なくありません。さらに、認知症患者さんの増加により、対象に合わせた細かい評価とリハビリが求められています。
一口に口腔ケアといっても、さまざまなケースがあり、実践しづらい患者さんもあるでしょう。しかし口腔内をケアすることで、唾液の分泌量が増えたり、口臭が減ったりして、患者さん自身が感じる生活の質(QOL)の変化もあり、改めてその大切さを理解しておきたいところです。
口腔内・舌の状態からわかること
高齢者の口腔ケアでは、痛みの原因となる口内炎や欠けた歯、歯肉の腫れ、義歯による傷の有無などを中心とした確認を主に行っているのではないでしょうか。これに加えて、取り入れたいのが舌の状態のチェックです。
中医学では舌の状態から体調を確認する「舌診」が行われます。舌診は、舌の形や大きさ、色を中心に、舌苔の形状や色、舌裏の静脈から、その人の体質や内臓の状態を読み取るテクニックです。正常な舌はふっくらと柔らかく、舌全体がきれいなピンク色で適度に潤っており、なめらかに動きます。しかし、加齢に伴って舌にひびがはいったり、白い舌苔が厚く残ったりしやすくなります。舌の状態は日によって変化が見られるため、体調の変化を知る目安になります。
舌の状態は外的環境にも影響されるので、直前の食事や照明による変化を意識しながら観察してみましょう。
以下は中医学で使われるチェックのポイントです。
- 舌苔が白い……身体が冷えている可能性あり
- 舌苔が黄色……身体や胃に熱をもっている可能性あり(炎症)
- 舌苔が黒い……極端な身体の冷え、代謝低下の可能性
- 舌全体が赤い……炎症のサイン(心臓や肝臓に熱をもっている可能性)
- 舌が大きく歯形がつく……余分な水分がたまっているサイン。胃腸が弱っている可能性あり
舌診だけですべてを診断することはできません。しかし、身体から見るサインのひとつとして活用してみるのもいいですね。
歯科医・歯科衛生士から見た口腔ケア
言語聴覚士にとっての口腔ケアは、全体の機能はもちろんのこと「機能訓練を中心とするケア」に偏りがちです。これに対して、歯科医・歯科衛生士の視点は「清掃を中心とするケア」にあります。どちらも非常に大切なケアだからこそ、連携をとりながら口腔ケアの必要性を伝えていきたいところ。
歯科疾患は嚥下機能だけでなく、全身に関わる見過ごせないものです。しかし、歯科治療が必要な状態の人が多い一方で、実際に治療を受ける人は少ないのが現状です。介護されている環境では通院も難しく、介護する側の負担にもなりがちです。特に在宅で介護を受けている高齢者の健康寿命を1日でも延ばすためにも、歯科との医療連携は大きなメリットがあります。チームに歯科医の意見を取り入れることで、状態の悪化を防ぐきっかけにもなるでしょう。生きる喜びを感じてもらえるような口腔ケアを、多職種と連携して考えていきたいですね。
気持ちいいと感じてもらえる口腔ケアに
口腔内をよい状態に保つことは全身の健康管理を考えていく上でとても大切なこと。口腔内から読み取れる多くのサインをキャッチし、ケアしていきましょう。経験を積みながら、患者さんに「気持ちいい」と感じていただけるケアを意識したいですね。
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