関節拘縮は防げる! 明日から使える「効果的な予防法」とは?
公開日:2017.02.17 更新日:2023.03.14
文:成松光夫 理学療法士
疾患や意識レベルの低下など、さまざまな要因から自己による体動が困難となり、発生する関節の拘縮(こうしゅく)。患者さんのADL(日常生活動作)低下に直結しますが、普段のリハビリから拘縮を防ぐ取り組みを進めてみましょう。すぐに実践できる効果的な予防法を紹介します。
拘縮とは
活動性の低下により引き起こされる「関節拘縮」。関節の不動により、筋や軟部組織が徐々に弾力性を失い、線維化することで引き起こされます。拘縮の病因は、大きく3つに分かれます。
- 筋性によるもの
- 軟部組織性のもの
- 関節性のもの
筋性は筋肉、軟部組織性は腱や靭帯が影響するもの、皮膚などの関節周囲の軟部組織から起こるもの、軟骨や関節包など関節性のものと、それぞれ関節可動域の制限因子となります。これらの病因は重複して起きていることが多く、結果として関節拘縮を引き起こします。外傷や麻痺(まひ)、疼痛(とうつう)など、拘縮の誘因となるものは多くありますが、1番の理由は関節運動の減少、不動によるものとされています。
拘縮の好発部位
拘縮には起こりやすい部位があり、基本的には屈曲・内転方向となる傾向にあります。各関節の拘縮肢位を確認してみましょう。
下肢
- 股 関節 ……伸展・外転制限
- 膝 関節 ……伸展制限
- 足 関節 ……背屈制限
上肢
- 肩 関節 ……屈曲・外転制限
- 肘 関節 ……伸展制限
- 手 関節 ……背屈制限
- 指節間関節……伸展制限
上記肢位で拘縮が起きやすいのは、伸筋に対して屈筋の筋肉が優位であることや、ベッド上での肢位が関係しています。特に足関節の背屈制限は、布団の重量により常時底屈位となることが多く、自動運動の乏しい、長期臥床(ちょうきがしょう)の患者さんでは、特に注意が必要です。
拘縮の予防方法
拘縮の治療には長期の時間を要することが多く、できることなら予防に取り組みたいところです。普段のリハビリのなかで拘縮予防を取り入れるなら、他動運動とポジショニングを意識してみましょう。
他動運動は1回で何度も行うのではなく、1日2回以上(できるだけ複数回)、時間の間隔を空けて実施することが望ましいとされています。関節の各運動方向へ、ゆっくりと疼痛のない範囲で最大限に動かします。転がり、滑りといった関節包内運動を意識しながら、愛護的に行いましょう。もし痛みが出るようであれば、炎症や浮腫(ふしゅ)が起こっている可能性があり、結果として関節拘縮を助長してしまうことが考えられるため、慎重に対処しましょう。
ポジショニングは姿勢の安定と、関節拘縮の悪化防止を念頭に行います。クッションを用い、ベッドと身体の接触面積を増やすことで肢位を安定させるのが大切です。不安定な肢位は全身の筋緊張を高め、拘縮を進行させる可能性があります。足関節の底屈位での拘縮を防ぐためには、感覚に異常がなければ、短下肢装具の使用も効果的です。合わせて、大転子や仙骨部などの骨が突出している部位には、褥瘡(じょくそう)予防の意味からも除圧を行いましょう。
拘縮は医療者側の責任!?
セラピストのアプローチ次第で関節拘縮は防げるもの。特に、長期入院中の患者さんに起こる重度の拘縮は、医療者側の責任ともいえます。病棟看護師とも連携をとりながら、ADLの低下、介助量の増加を防ぐためにも、積極的に対策をとっていきたいですね。
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