言語障害をもつ子どもへの理想的なリハビリとは?
公開日:2017.04.17 更新日:2017.04.28
子どものリハビリは、人格形成にもつながる大切なアプローチ。とはいえ、子どもがリハビリを嫌がることもあり、悩ましいところです。リハビリを受ける本人がやる気と自信を感じられるようなリハビリにするためには、どのようにすればよいのでしょうか?
障害の程度や機能に合わせたリハビリを
言語障害をもつ子どものなかには、聞こえに関する障害だけでなく、知的障害や心理面での問題を抱えている子も少なくありません。言語障害だけでなく、他の障害の程度や機能への配慮が重要だといえるでしょう。
例えば、知識障害のある子どもは理解が不十分であっても「わかった」と返事をしてしまうことがあります。その都度、理解度を確認しておいた方が良いでしょう。簡単な表現で繰り返し説明し、写真や絵を添えて見せたりすることがポイント。「きれいな花だね」「かわいい犬だね」など感覚に残るような言葉かけが有効です。
また、コミュニケーションに強い不安を抱いている場合には、話しかけられても返事ができなかったり、会話に詰まったりすることが。「この発音は難しいよね」「悔しいね」など共感の言葉をかけ、困ったときにはどんな表現をすればいいのか、セラピストとして代案を出せることも大切です。
たっぷりと褒めて達成感を味わえるように
子どもにとってリハビリは楽しいものであると印象づけたいもの。しかしリハビリは時間がかかり、失敗経験も増えるにつれイライラを感じさせる場にもなりがちです。根気よく笑顔で対応し、小さな成功を褒めながら達成感を感じてもらえるようにしましょう。そのときは大げさなくらいのリアクションで、気持ちをしっかり伝えるとよいでしょう。
リハビリの意図がうまく伝わらないときは、視点を変えた対応を取り入れてみます。リハビリの成功に導くためはいえ、「○○したらだめ」という表現は、子どもにとってはわかりにくいだけでなく、自信を失わせてしまう可能性があります。子どもの言動を否定する言葉は控え、「○○しよう」などの肯定的なニュアンスで具体的な方法を提案することで、リハビリに対する理解を促すきっかけとなることでしょう。
子ども自身のリハビリへの関心が低いようであれば、スケジュールの一部を決めてもらってもよいでしょう。自分で決めたリハビリのメニューは積極性が高まりやすいだけでなく、計画性の向上にもつながります。
また、リハビリの内容を工夫することも重要です。その子の家族や友人、思い出、趣味などと関連づけて意欲や興味を引くことで、やる気アップにも。遊びの延長から始まったリハビリで成功体験を積み重ねられると、リハビリへの関心だけでなく自信にもつながります。
保護者へのフォローと情報収集も大切
リハビリ以上に大切なのは、家族と過ごす生活。子どもを伸ばすためには、保護者の協力が欠かせません。
保護者が子どもの障害に対し、否定的な感情を強く抱いている場合もあります。保護者の気持ちに寄り添いながらフォローし、対策やアドバイスを伝えることも言語聴覚士の大切な仕事です。
保護者は子どもの環境や進学、ケア、接し方など状況に合わせたさまざまな悩みや迷いを抱えています。リハビリだけでは把握できない心理的な問題が影響することもあり、定期的に保護者と話す時間をつくりながら普段の生活をはじめ、体調や精神状態にも注意したいですね。
子どもが前向きになれるリハビリを
言語聴覚士は、患者さんのパートナーとなる存在。言語障害をもつ子一人ひとりに寄り添い、自分に自信をもち、やる気を高められるようなアプローチが大切です。家族や周囲の人々に理解を促し、互いにコミュニケーションの喜びを感じ合えるような働きかけを行いたいですね。
【参考URL】
他の記事も読む
- 作業療法士の別の道~編集者になったセラピストが言えること~
- 鎖骨骨折のリハビリ内容は?日常生活での注意点と自分でできるリハビリについても紹介
- 嚥下訓練「パタカラ体操」のやり方と効果を解説【自宅で実践!】
- 脳動脈の支配領域の覚え方は?脳血管との関連性や閉塞時の症状についても解説
- 関節リウマチでやってはいけない仕事とは?向いている仕事や働きやすい職場環境について解説
- 端座位とは?メリットや必要な機能、リハビリ方法などについて解説
- 拘縮とは?概要や原因、予防方法などについて解説
- こんな道もある! セラピストの仕事「エンパワーメントで高齢者の食・望む暮らしをサポート」
- 【福祉住環境コーディネーター受験】いきなり2級を受けてもよい?合格率や試験対策などを解説
- 言語聴覚士で年収1000万円は実現可能?リアルな年収実態と年収アップ方法を解説
- 機能訓練指導員とは?仕事内容や必要な資格などについて解説
- FIMの評価方法とは?特徴やメリット、項目などについて解説
- 半月板損傷でやってはいけないこととは?リハビリの内容や気をつけるべきことを解説
- 手指のリハビリが必要なのはこんなとき!自宅でできる自主トレ方法も紹介
- 管理栄養士の臨地実習を乗り切るために!病院での実例や心構えを紹介
- フリーランスで働く理学療法士ってどうなの?働き方やメリットなどについて解説
- 認知行動療法に向かない人とは?メリットや他の治療法についても解説
- 言語聴覚士(ST)が行う言語訓練のやり方|自宅でできるリハビリ内容も解説
- 足から生活を見る〜理学療法士のフットケア視点と今すぐ役立つフットケア・ワンポイント解説
- こんな道もある! セラピストの仕事「精神疾患の身体リハビリ」から「医療職のキャリアデザイン追求」へ