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フレイル予防のカギはここにあり! 「柏スタディー」の大規模研究をさぐる

公開日:2017.04.28 更新日:2017.05.15

「フレイル」とは、日本老年医学会が提唱する高齢者の「虚弱」について表す言葉。「虚弱・弱さ」を意味する「frailty(フレイルティー)」という英単語がもとになっています。日本老年医学会が「フレイル」の啓発を進めるのは、単に医学的な診断基準を明確にするだけでなく、国民の予防意識を高めるためでもあります。
東京大学 高齢社会総合研究機構の飯島勝矢准教授らが2012年から千葉県柏市の高齢者を対象として行っていた大規模調査研究「柏スタディー」によって、フレイルから要介護になりやすい人のタイプがみえてきました。

フレイルには3つある

「虚弱」というと免疫力が低く病気になりやすかったり、骨折しやすかったり、運動機能が低下していたりする人を思い浮かべたりするかもしれません。しかしこれらはフレイルの一つの側面に過ぎず、「フィジカル・フレイル」と呼ばれるものです。
柏スタディーを行った飯島勝矢氏によると、フレイルには「フィジカル・フレイル」と「メンタル・フレイル」「ソーシャル・フレイル」の3つがあるといいます。一口にフレイルといっても、その概要は幅広く多面的であり、身体機能など特定の機能を高めればいいというものではありません。

フレイルの入り口は孤食にあった

1800人を対象とした食事に関する調査によると、「同居人がいても、3度の食事を1人でとっている孤食の人」は、「1日1度でもだれかと食事をする人」に比べ、うつ傾向のリスクが4.1倍になるというデータがあります。同時に、低栄養になるリスクも1.6倍高くなるとのこと。こうした傾向は、独居で孤食にならざるを得ない人よりも、同居家族がいるなかで孤食をしている人の方が高かったといいます。つまり、単に栄養をとればよいわけではなく、社会参加という要因がフレイルには関わっているわけです。
孤食の人は食事がおろそかになりやすく、栄養も偏ります。同時に、口腔機能が低下して栄養状態も悪くなり、身体的な機能低下へとつながります。孤食から心や身体が衰える負のスパイラルが生まれ、フレイルがどんどん悪化してしまうのです。
フレイルが悪化する最初のステージとして、孤食にみるような社会参加の欠如による影響は注目に値します。

市民を巻き込んだ簡易テスト

柏スタディーの研究成果をもとに、飯島氏らは11項目の簡易チェック表を作成しました。このチェック表は栄養、身体、社会面の三側面に対する質問に「はい」「いいえ」で答えるものです。
また、両手の人差し指と親指でふくらはぎの一番太いところを囲むテスト「指輪っかテスト」を考案しました。ふくらはぎの太さが囲めない人に対し、ちょうどつかめる人で2.4倍、隙間ができる人で6.8倍、サルコペニア(筋肉減少症)のリスクがあるとされています。
飯島氏らは、これらのテストを単なる調査だけでなく、市民運動として展開を始めました。こうしたテストは市民サポーターによって測定されており、測定自体が高齢者の社会参加の機会にもなります。簡易テストは柏市だけでなく、他の自治体などで予防活動に使われ始め、2016年度からは国も予算を立てて動き出しています。

柏スタディーの今後

柏スタディーは現在も、市民サポーターが簡易テストを実施しつつ継続中。歯科医師とも連携しながら、高齢者の食力(食べる力)の維持・向上を目指しています。そうしたなか、改めて今後の課題となるのが「高齢者の社会参加」です。生きがいを感じさせる環境づくりには、地域全体の活動として取り組む姿勢が必要なのではないでしょうか。

フレイル予防のために

フレイル予防のためにはフィジカル、メンタル、ソーシャルの側面から多面的に底上げを行うことが重要になります。柏スタディーはそのための取り組みとして、専門家と市民とが連携することの好例といえるでしょう。

 

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