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今すぐ実践可能!変形性膝関節症のリハビリ

公開日:2018.12.21 更新日:2021.10.14

文:伊東浩樹  理学療法士
NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事

理学療法士が担当する患者さんの症状は多岐にわたり、病院の特性、または外来か入院かによってもアプローチするリハビリテーションの方法はさまざまです。

今回は、整形外科勤務において対応するケースが多い「変形性膝関節症」におけるリハビリテーションの1例を紹介します。

変形性膝関節症とは?

加齢に伴い関節の痛みを訴える方は、外来受診全体の第5位となっており、超高齢社会が進む日本の患者数が年々増加傾向にあります。関節痛を訴える中で最も多いのは膝OA(osteoarthritis)であり、変形性膝関節症理学療法ガイドラインによると、推計人口は2,530万人と言われています。

この変形性膝関節症は加齢、肥満、遺伝子的因子、力学的負荷など多くの原因が元になって発症する多因子疾患です。

『変形性膝関節症のリハビリテーション』によれば、40歳以上の男女を対象とした調査では、63%の人が膝痛を訴えていたにも関わらず、病院受診者は4人に1人だったという報告もあります。

中高年の多くが膝痛を訴えていますが、病院を受診せずに放置してしまうため、結果的に運動器不安定となり要支援、要介護状態になる方が多いのが現状です。

リハビリを進める前に、複数の観点から理学療法評価を行おう

では、変形性膝関節症の患者さんに対するリハビリテーションはどのように進めるべきでしょうか? まずは、以下のような観点で理学療法評価を行ってみましょう。

1.膝関節構成体の器質的変化を把握する

評価は、単純X線検査による画像を診て膝関節内の病態を把握するところからはじまります。関節軟骨の損傷程度や厚さ、滑膜炎の存在などをチェックし、状況を確認します。画像上に問題があっても患者さんが痛みを訴える場所とは異なることも多く、今後起きる問題を予防するためにも事前の把握が重要です。

2.理学所見(主観的評価)

リハビリ前に患者さんへの問診を行います。その際に既往歴、生活習慣、労働状況などを聞いておくとよいでしょう。

これらの要因は二次的膝OAを発症することが多いと報告されています。そのため、要因がないか把握しておくことは生活指導にも活かすことができます。

加えて、膝OAへのケアでは、「疼痛」の程度を必ず評価をしておかなければいけません。「今現在」の痛みではなく、日常生活の中で歩行中や立ち座りの際に痛みがあるかどうか、あるとすればどの程度なのかを把握する必要があります。

個々人の状況に合わせて多角的に評価できる痛みの尺度表として主に「WOMAC」(Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index)が疾患特異的尺度として優れ、信用頻度が高いとされています。

3.理学所見(客観的評価)

臨床で行われる検査では「圧痛」の評価をしますが、ここで留意しなければならないのは、その圧痛の訴えが「主観的評価での性質と異なるか否か」です。また、「触診」で膝関節周囲に熱感、腫脹が認められる場合は、膝関節OAよりも膝関節炎、他の炎症疾患(関節リウマチ)などを疑う必要があります。

<周径の測定>
そのほか、関節周囲の「周径」を計ることも忘れずに行いましょう。周径の測定は、リハビリ介入前後における腫脹の軽減度合いや筋力向上などの評価にも使用できるからです。

<膝蓋跳動テスト>
膝関節内の関節水症の存在を検査するのであれば、「膝蓋跳動テスト」が有用です。さらに、膝関節の評価において「関節可動域」の評価も忘れてはいけません。その場合も、疼痛の有無を調べるようにしましょう。

<MMT>
「MMT」は筋力評価としては重要ですが、疼痛が強い場合は炎症を増強させる可能性があるため、あくまでも自身の問診や触診によって、現段階でどの程度動くかを把握しておくとよいでしょう。

<日常生活動作の確認、歩行の状態>
もうひとつ、日常生活動作の確認、歩行の状態(杖などの使用有無)を確認する必要があります。歩行状況に関しては「timed up and go test」や「6分間歩行テスト」を実施しておくとリハビリ介入後の評価がしやすくなります。

リハビリテーションを実施するうえで評価は多いことに越したことはありませんが、最終的に一番望ましいのは、患者さんの疼痛に合わせた評価をすることです。

理学療法~3つの視点をもってリハの内容を決める~

上記のような評価をおこない、状況を見極めたら実際のリハビリテーションに進みます。以下の3つの視点を持って、実施するリハの内容を決定しましょう。

1.運動療法

運動療法は、基本的に筋力増強をはじめ関節可動域拡大、日常生活動作獲得などを目標に実施するものです。運動療法は疼痛をおこさせると考えられがちですが、筋力、筋持久力の維持と並ぶ効果として抗炎症作用も期待できるとされています。

疼痛増強を心配しすぎることなく、目標達成のため、患者さんと二人三脚でリハビリに望みましょう。

膝OA患者さんには、通常、定期的な有酸素運動や筋力強化、関節可動域練習を実施することが必要とされています。

有酸素運動ではウォーキング、自転車、水中での運動など膝関節にあまり負荷のかからない運動を選択し、週に3回程度の実施が望ましいものです。加えて、運動を継続するということは膝OAの根本的な問題となっている肥満防止などにも関係してくるので大切です。

運動療法は、上記疼痛範囲内で低負荷の運動から開始しますが、同じように関節可動域練習も早期からの介入が必要です。ただし、疼痛増強の原因とならないように、関節可動域練習では反動をつけず、徐々に疼痛の有無に合わせて可動域を拡大するようにしましょう。

2.物理療法

整形外科内での物理療法としてよく使用されるのが、温熱療法です。

関節可動域練習前に導入されることが多く、その理由として筋のリラクゼーション、軟部組織の伸張性拡大、疼痛閾値上昇、拘縮改善といったさまざまな効果があります。

温熱療法を実施する際には、金属類を使用した人工関節を使用していないか、高齢者の場合は知覚障害がないかなどに留意して、物理療法の手段と時間などを検討しましょう。

3.教育

膝OAへのケアとして、運動療法や物理療法を取り入れるのはもちろんですが、患者さん自身がセルフケアを続けられるような教育を行うのも、理学療法士の仕事といえます。

運動療法、物理療法を実施している間は、理学療法士の指導のもとで継続することになりますが、リハビリがいったん終了してしまうと、元の生活習慣に戻ってしまうため、結果的に、また膝OAを再発してしまう方も少なくありません。

自宅にいる際にしっかりとセルフケアができるように指導することも、リハビリテーションの一環として必ず実施しましょう。

まとめ

膝関節は、日常的な生活において、使用頻度の高い器官です。変形性膝関節症になる要因はさまざまですが、手術に至らない軽・中度であれば、今後の重症化を予防することがリハビリテーションの大きな目的となります。

運動療法が必要な場合も、早期介入し患者さんの痛みに応じて日常生活を問題なく送ることができるようにサポートしていきたいものです。

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