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今すぐ実践可能なリハビリ〜整形外科編〜 腰部疾患 脊柱管狭窄症2020.02.21

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文:伊東浩樹  理学療法士・ NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事

整形外科分野でお送りしている実践リハビリシリーズ。前回はヘルニアに対するリハビリテーションを紹介しました。今回は腰部疾患のなかでも高年齢層に発症しやすい腰部脊柱管狭窄症がテーマです。具体的な診断基準をはじめ、運動療法・物理療法それぞれの側面からリハビリのポイントを紹介します。

脊柱管狭窄症とは?

背骨には、神経が通る管、脊柱管があります。その管を通る神経が骨や靭帯、椎間板の変化により、管が狭くなることで圧迫され、結果、下肢の痺れや間欠性跛行といった症状が出現するのが「脊柱管狭窄症」です。姿勢の変化や長時間の歩行によって症状が増減するのが特徴で、主に中高年の男性に多く、加齢や腰椎すべり症などが原因で発症することもあります。

診断

多くの場合、下肢などに諸症状が出現し、歩行時の症状増減がみられる不調を抱える患者さんが多く、そうした症状より予測・診断されます。診断時には、単純X線写真である程度の予測が可能ですが、下肢の血行障害など類似した症状がみられる場合など、単純X線だけでは正確に判断しづらいときには、MRIなどの検査が実施されます。

理学療法評価

続いて、リハビリを実施する際の具体的な評価法を考えます。まずは、以下のような視点に注目し、理学療法評価を検討してみましょう。

1.理学所見(主観的評価)

脊柱管狭窄症では、障害される部位によって出現する症状が変わります。患者さんに問診を行う際には、どの分類なのかを把握することが大切です。まずは分類別の症状を確認しましょう。大きく分けて3つのタイプがあります。

A)馬尾型
脊柱管の中心部分が圧迫されることで生じるのが「馬尾型」です。両下肢の痺れ、疼痛、感覚異常、排尿障害などの症状が起こる可能性があります。

B)神経根型
神経根が圧迫されることで生じるのが「神経根型」です。片側臀部から下肢にかけて痺れ、疼痛などが起きる可能性があります。

C)混合型
上記2つの症状が、同時に出現します。

問診時には、上記を参考にした症状分類を把握したうえで、痺れや痛みはいつからなのか、どんな時に、どの部位に起きているのかを確認することから始めましょう。

加えて、出現部位と同時に確認したいのが「姿勢」です。脊柱管狭窄症は、脊柱管内にある神経を圧迫することで症状が出現するため、姿勢を変化させた際に症状が強くなったり弱くなったりします。立っているときや、座っているとき、どんな姿勢で症状が増減するかを評価するようにしましょう。

2.理学所見(客観的評価)

客観的評価の材料として、最もわかりやすいのは「歩行」です。脊柱管狭窄症を発症している患者さんの多くは、長時間歩いていると臀部から下肢にかけて痺れのような症状が出現します。ひどい場合には歩行が困難になるケースもあります。
脊柱管狭窄症と診断された患者さんに対しては、症状についての問診後、実際に歩いてもらい、どれくらいの距離を歩いたら下肢の痛みや痺れなどの症状が出現するかを評価しておいた方がよいかもしれません。また、脊柱管狭窄症の場合、馬尾型や神経根型のようにタイプによって症状は異なりますが両下肢筋力に左右差がないか、または両側筋力が同じであったとしてもリハビリテーションを数ヶ月実施した最終評価時にどれだけ改善したかを比べるためにも、前もってMMTなどで筋力を評価しておく必要があります。

理学療法

脊柱管狭窄症の治療方法は保存療法と手術療法があります。症状が軽度の場合は保存療法で経過をみながらリハビリテーションを実施していくことになります。その一方で症状が強く出現している場合は手術療法をした後に理学療法を開始することが多いです。
では、実際に理学療法を進めるうえで、それぞれのポイントをみてみましょう。

1.運動療法

A)保存療法
脊柱管狭窄症の患者さんは、体幹が後傾した際などに症状が悪化することがあり、身体背面の血流が悪くなっている可能性があります。そのため、保存療法時の運動療法としては、体幹、下肢後面の筋肉をストレッチするように促すのがポイントです。
具体的な方法にはいろいろありますが、背臥位で膝を抱き抱えるようにして体を丸めるといった動作もよいでしょう。体全体を屈曲させるイメージで20秒程度実施し、こうしたストレッチによる症状の緩和を目指します。
そのほか、症状緩和を目的とする場合には、リラクセーションを図る動作もよいでしょう。臥位になり下腿後面にクッションなどを置いて足を乗せ、股関節と膝関節を曲げた状態を保ったまま、高い位置で保持するといった方法があります。

また、ストレッチと並行して実施すべき療法として、腹部の安定性を向上させるための腹部トレーニングがあります。こちらも背臥位で膝立て位となり、負担を減らした状態で腰を床に押し付けるようにして、20秒間その状態を保持するというトレーニングです。ただし、症状が悪化しないように注意しながら、回数を調整しましょう。

保存療法を選択した患者さんには、運動療法時や日常生活の動作などで疼痛や痺れなどの症状が悪化しないように、硬膜外ブロックの注射が使われる場合があります。初めてブロック注射を行った患者さんには、注射は根本治療ではないことを伝えておくのもポイントです。注射をして直ぐは効果があるため、患者さんはリハビリの継続を好まないケースがあります。しかし、注射後は徐々に効果が薄れていくという点を意識してもらうとよいでしょう。

B)手術療法後
保存療法で経過をみていても症状が軽減されない場合は、手術によって狭窄部を拡大する方法が選択されます。術後は基本的には術後翌日(医師の判断にもよります)から離床は可能です。ただし、離床が可能となっても術創部の疼痛などに合わせて介入する必要があるため、なかなか離床が進まず、下肢筋力の低下が顕著に出現する場合が考えられます。術後の介入では、疼痛に合わせてリハビリを進めることになりますが、離床が進めば歩行器歩行を開始したのちに、スクワットなどの下肢筋力練習を実施することになるでしょう。
また、術後リハビリでは、術前と比べて痺れや疼痛などがどのように変化しているかを問診などで確認しておく必要があります。個人差はありますが術後1〜2週間で退院(転院)することが可能で、その後は通所リハビリテーションなどを利用しながら身体機能の向上を目指すケースが多いでしょう。

2.物理療法

運動療法とは別に、物理療法を実施する場合、低周波電気刺激療法を用いるケースがあります。脊柱管狭窄症の症状悪化は血流の阻害によることが多く、症状軽減を目的として、低周波電気刺激療法による血流の改善を図ります。

3.教育

在宅復帰を目指すうえで、患者さんの症状理解や教育を進めるのも理学療法士の仕事です。具体的に、指導するポイントは以下のとおりです。

■姿勢
脊柱管狭窄症の患者さんは、症状が増減する姿勢維持の大切さを理解されていないことがよくあります。問診でどのような姿勢になると症状が悪化するかを確認したうえで、体幹であれば伸展方向ではなく、屈曲方向にすることで症状が軽減しやすいことを説明するとよいでしょう。立っている状態が続くと症状が悪化するので、疼痛などがひどくなるような場合には、イスなどに座るよう指導します。それでも姿勢を意識することが困難な場合は、症状の悪化予防としてコルセットなどの使用を提案するのも一つの方法です。
また、日常動作における姿勢についても指導します。例えば、低い位置にある荷物を持つ場合、立った状態から急に前傾姿勢になるのではなく、腰を落として片膝を床につく状態にして持ち上げるといった指導も有効です。逆に、高い場所にある荷物を持つ際には、背伸びなどをして無理に腕を伸ばして荷物を持つのではなく、昇降台などを利用することを勧めます。できるだけ、腰椎に負担をかけない荷物の取り方を指導しましょう。
そのほか、調理をする際など、長時間の立位保持が必要な場合は昇降台などを準備して片足を乗せた状態で作業を実施してもらうように促すのもよいでしょう。

■歩行
姿勢と同様に、歩行についてもどの程度の距離を歩いたら症状が悪化するのかを知ってもらう必要があります。例えば、目的の場所まで歩いて移動する場合、途中にベンチなどの腰かける場所があれば座るように指導します。しかし、日常の活動範囲内で、そういった座る場所がないのであれば、杖などを持つように指導しましょう。杖の利用を好まない患者さんには、杖を使用することで体幹をやや前傾させることで、症状が軽減しやすい態勢がつくれることを説明しておくとよいでしょう。同様に、押し車などを使用している方であれば、そのまま使用してもらうように促します。前傾姿勢のまま歩行できる状態が、症状の緩和につながることをきちんと伝えましょう。

■自転車
脊柱管狭窄症の症状が出現しているとき、自転車に乗る患者さんは少ないかもしれません。しかし、改善に伴い、自転車に乗りたいと考える患者さんがあれば、利用が可能であることを伝えてもよいでしょう。歩行に比べて、自転車の方が体幹は前傾するため、症状が出現しにくくなります。歩行での移動で症状が出現し、そのせいで外出がしにくい場合は自転車を勧めてみるのもよいかもしれません。ただし、その他の症状と兼ね合い、自転車の運転が可能かどうかをしっかり判断したうえで促すことが大切です。

姿勢の保持、歩行、自転車運転のいずれにしても、どのような状態になると症状が増減するのかを患者さん自身が理解し、実践できることが大切です。リハビリ時には、患者さんの状態に関する情報を共有するとともに、理学療法士として環境整備も踏まえたアドバイスを行いましょう。

まとめ

脊柱管狭窄症は、運動療法や教育指導による改善が期待できるケースも多くあります。どうしても症状の改善がみられない場合には、医師に相談し、手術療法などを検討したのちに、リハビリテーションを再開することも視野に入れておくとよいかもしれません。リハビリを進めながら、専門家として症状が悪化しないよう最大限に留意し、必要に応じた説明を加えながら、患者さんに寄り添いましょう。

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【参考文献】

    <PR>マイナビコメディカル

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