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その姿勢で大丈夫? 理学療法士による摂食・嚥下時のポジショニング介入

公開日:2015.11.09 更新日:2015.11.16

高齢化が進むにつれ、摂食・嚥下障害を抱える患者さんが増えています。加齢による歯の欠損や舌の運動機能・咀嚼能力・唾液分泌機能の低下、また、咽頭収縮筋の収縮力の低下などにより、咽頭に食物が残留し、誤嚥を起こしやすくなるためです。摂食・嚥下障害は言語聴覚士が中心となってリハビリを行いますが、理学療法士も無関係ではありません。摂食・嚥下障害に対して、理学療法の視点で行うポジショニングの調整で、改善へのアプローチが可能です。ここでは摂食・嚥下障害による問題点から、嚥下の行いやすいポジショニングについて紹介します。

摂食・嚥下と障害により引き起こされる問題点

摂食とは、食べること、食事をとること全般を指し、嚥下は、食塊を口腔から胃へ送り込む一連の動作のことを指します。こうした摂食・嚥下に関わる障害の要因を大きく分類したものが、以下の4つです。

  1. 器質的障害
  2. 機能的障害
  3. 心理・精神的障害
  4. 加齢

主に口腔、咽頭に起こる悪性腫瘍術後のような、器質的な変化が原因となる場合が1.であり、脳血管障害やパーキンソン病などによって引き起こされるものを2.と分類します。3.はうつや拒食症などを指し、4.は加齢によるさまざまな老化現象が引き起こすものです。
こうした4つの要因により摂食・嚥下障害が起こると、以下のような3つの課題が生じます。

  • 栄養不良
  • 誤嚥・窒息
  • 食べる楽しみの喪失

結果として体力の低下を招き、さらに摂食・嚥下障害が増悪する、という負の連鎖が起きてしまうのです。

食事のポジショニング

摂食・嚥下障害によるさらなる体力の低下を起こさないためにも、誤嚥を起こしにくい食事のポジショニングは非常に大切です。例えば、ベッド上で行う摂食・嚥下動作では、ただギャッジアップで患者さんを起こすだけでは、誤嚥のリスクは高いままの状態といえます。この場合、ベッドのギャッジアップは30°に設定し、頸部は枕やクッションなどを使用して軽度前屈突出位(顎を少し前に出し、そこから下向きに降ろす)にしましょう。前屈により咽頭と気管に角度がつくことで、誤嚥を起こしにくくなります。同時に、咽頭腔を拡大させながら、気道の入り口は狭いままの状態がたもてるといった利点もあります。また、片麻痺の患者さんに対しては、健側を下にした側臥位にし、頸部を患側に回旋させた姿位をとります。こうすることで、食塊は重力にひかれ、下側にある健側で嚥下することが可能になるのです。

摂食中の安全確認

いくらポジショニングを整えたとしても、残念ながら誤嚥の危険性がゼロになるわけではありません。誤嚥をいち早く発見し、対処するためには、どういったことに注意すればよいのでしょうか。注目するポイントとして、以下の点が考えられます。

  • 痰の増加
  • 炎症反応
  • 動脈血酸素飽和度の低下
  • 嚥下後の声変わり
  • 咽頭音の異常

炎症反応は即時性で劣りますが、血液データから確認しましょう。咽頭音は聴診器を用い、呼吸に合わせてゴロゴロとした音が聴取されれば、咽頭部への食塊残留が疑われます。
特に食事中、動脈血酸素飽和度に2%以上の低下が見られた場合は、誤嚥の可能性があるため注意が必要です。そのほか、患者さんの様子を十分に観察し、小さな変化も見逃さないよう、意識していきましょう。

患者さんにとっての食事をより安全に

食事は、多くの人にとって楽しみのひとつです。患者さんによっては、嚥下さえうまくいけば自宅へ帰れるという場合もあります。生きるためにも重要な摂食・嚥下動作。理学療法士として患者さんの笑顔のため、ポジショニングに進んで介入していきたいですね。

 

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