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今すぐ実践可能なリハビリ〜脳疾患編〜 急性期 脳梗塞2020.03.30

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文:伊東浩樹  理学療法士・ NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事

シリーズとしてお伝えしている実践リハビリのポイント。前回まで整形外科分野でお話してきましたが、今回からは新しい分野として「脳疾患」のリハビリを紹介します。脳疾患と一口にいってもさまざまな種類があります。そのなかで今回は、脳梗塞後の急性期におけるリハビリについてお伝えします。

脳梗塞とは?

脳梗塞とは、脳に酸素や栄養を提供する血管の血流不良により、脳細胞が機能しなくなった状態を指し、詰まった血管の場所によって、さまざまな症状が出現します。
脳梗塞にもいくつか種類があり、一時的に血管が詰まってしまうものは一過性脳虚血発作(TIA)として、24時間以内に症状が改善されることが多く、また後遺症は残らないケースがほとんどです。
そのほか、脳梗塞の種類は、大きく以下の3つに分類されます。

1.ラクナ梗塞……脳の深い部分を流れる細い動脈が詰まった状態
2.アテローム血栓性脳梗塞……脳の太い動脈が動脈硬化で狭くなり血栓が詰まった状態
3.心原性脳塞栓症……心臓の中で作られた血栓が脳に運ばれて血管を詰まらせた状態

画像所見

脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの脳血管障害は、症状が疑われる場合や症状が出現した際に画像診断が用いられ、CTとMRIによる診断が行われます。それぞれの違いや所見時の特徴について確認しておきましょう。

A)CTの画像所見
CTとはX線を利用して行う画像診断です。通常、骨は白く、水は黒く、その他は灰色に見えます。脳出血が起きた直後には、出血部位が白く写ります。また、脳梗塞の場合は、血流が途絶えて壊死した細胞が黒く写ります。例えば、日常生活を送っていて身体に麻痺が出現した場合、CT検査をして白く写れば脳出血、黒ければ脳梗塞と診断されるというわけです。こうした画像所見は脳梗塞の場合発症から24時間以上経過しなければ、はっきりと描写出来ないと言われているため一様に確実とはいえません。

B)MRIでの画像所見
MRIでの画像所見MRIとは磁気を利用して行う画像診断です。磁気の影響によって、人の体細胞分子に微妙な変化を起こし、その変化を利用してさまざまな画像検査が可能となります。MRIを利用することによって、CTでは見つかりにくかった病巣部位もより詳しくわかるようになってきました。画像所見において、主としては水が黒、脳が灰色に見えるT1強調画像が使われ、この反転パターンであるT2強調画像などが用いられます。MRIは特定の部位を水平、縦方向などに輪切りにして見ることが可能なため脳内を細かく確認できるのが大きな特徴です。ただし、MRIは強力な磁気を使うため、金属製の代替骨やプレートによる治療を行っている途中の方や、ペースメーカー保持者は利用できないといった注意事項がいくつか存在します。

理学療法評価

症状と画像所見において、急性期の脳梗塞と診断された場合、どのような視点で評価を進めればよいのかを確認してみましょう。まずは、以下のような視点で理学療法評価を実施します。脳梗塞の患者さんに対しては、急性期で主に臥床期、離床期、移動期の3パターンで考えます。

1.理学所見(主観的評価)

A)臥床期
脳梗塞の患者さんに対するリハビリは、発症して間もない状態で、集中治療室などに入室されている時から開始します。早期にリハビリを開始する理由は、長期臥床による廃用症候群への予防をはじめ、回復期に向けたADL(日常生活動作)の維持に対する早期介入が、回復に大きな影響を及ぼすからです。しかしながら、集中治療室での治療中にいきなり、離床を進めていくことはできません。必ず医師に相談しながら、リハビリを進める必要があります。脳梗塞を発症して直ぐは血圧が不安定であり、意識状態も患者さんによって異なります。ベッドギャッジアップひとつとっても起立性低血圧を起こしてしまう可能性があるため、医師と連携をとりながら行う必要があります。意識状態の確認、血圧測定、声かけに対して反応や手足が動くか否かなどを細かく確認していきましょう。また、会話が可能な患者さんであれば、話す際の表情や顔のどの部位がうまく動いていないのかなどを確認することも大切です。

B)離床期
血圧が安定し、医師から離床の指示が出たら集中治療室に入室中であっても離床の準備を始めます。その際には、寝返りや端座位など、こちらの指示に対してどの程度、自分で動くことができるのかを評価しましょう。脳梗塞の部位によって麻痺の程度が異なります。麻痺の程度を確認するうえでも、動作確認はとても重要です。麻痺がある場合や高次脳機能障害がある場合、最初は患者さん自身で離床することは難しいケースが多いため、理学療法士がサポートしながら離床を進めます。端座位ができれば、血圧や表情、座位バランスなどを主観的に評価しましょう。

C)回復期
ベッドサイドでの離床ができるようになれば、車椅子への移乗や、患者さんによっては歩行器などを使用して歩行が可能な状態が見られます。そうした状況であっても、やはり急な血圧変動に注意をしながら、常に血圧を測ることが大切です。また、車椅子への移乗や歩行時の身体状況を、患者さん自身がどれだけ理解できているのか、麻痺のような症状についてわかっているのかも確認しましょう。急性期であっても、リハビリ室への移動が可能な状況にあるか、一般病棟へすでに移っているのであれば、その時点での高次脳機能障害の状況把握、麻痺の回復状況過程をステージ化したブルンストローム・ステージでの評価を行います。また、粗大筋力評価や座位、立位、歩行バランスの評価やADLの評価などを実施しましょう。

2.理学所見(客観的評価)

急性期の客観的評価では、患者さん本人の訴えと実際の主観的な動きとに相違があるか否かを見分けることも重要です。主観的評価と同じように臥床期、離床期、移動期に分けて考えてみましょう。

A)臥床期
臥床期には本人が認識している感覚を確認します。声かけに対して反応した場合、例えば、「右足は動きますか?」という質問に対して「はい、動きます」という返答があるのであれば、四肢をどの程度動かせるのかを確認しましょう。返答が「痛い」といった症状の訴えであれば、どの部位にどんな痛みがあるのかを細かく聞いて評価します。

B)離床期
離床期になると端座位や車椅子座位など、人によって立位保持などが可能になります。離床した際に気分は悪くならないかといった体調面で患者さんの訴えを確認していくことが大切です。離床期には患者さん自身が自分の状況を把握しているケースが多く、表出した言葉の内容によっては心理面へのケアも必要です。座位保持をした際に、バランスの保持が難しいようであれば「今真っすぐ座れていますか?」などの問いかけをして、「座れている」もしくは「右に傾いている」などの返答に合わせて対応します。返答によっては、半側空間無視などの高次脳機能障害を疑う必要もあるため、客観的評価においても、声かけと返答内容の確認が欠かせません。

C)回復期
車椅子移乗や歩行器歩行などが可能になった際には、離床時間の長さに合わせて心身の疲労がないかを確認する必要があります。座位なのか、立位なのか歩行なのかで評価は変わりますが、移動ができるようになったからといって、急に身体の耐久性が向上するわけではないため、負荷がかかりすぎていないかを注意深く確認するようにしましょう。また、この時期になると患者さん自身でできることが増えてくるため、回復期や、自宅復帰に向けてADLや環境整備を中心に評価をしてもよいかもしれません。

理学療法

急性期では、早期に離床をして、早期にリハビリを開始することが予後の状態に大きく関わります。では実際にどのように実施していくべきか以下の視点で考えてみましょう。

1.運動療法

急性期における運動療法も評価と同じように臥床期、離床期、移動期で考えます。

A)臥床期
床上安静の期間が長く、離床がなかなか進まない時期においては、ベッド上において廃用症候群の予防と残存機能の維持、向上を目指す必要があります。健則側に関しては、他動で関節可動域練習を実施し、指示理解が可能であれば自身での自動運動の実施を促します。麻痺側に関しては、肩関節などの脱臼や疼痛に気をつけながら、他動による関節可動域練習を進めましょう。指示理解が可能であれば、自動運動が可能な範囲でサポートをしながら関節運動を実施します。また、安静度に応じて、側臥位などの体位変換やポジショニングを実施しましょう。

B)離床期
離床期には、ベッド上での関節運動だけでなく、端座位などになった状態で動かせる範囲で関節運動を実施します。麻痺側に関しては疼痛などの感覚主訴に注意しながら、関節を動かし足底を地面につけるといった表在からの刺激を与えていく必要があります。麻痺側の運動を実施する際、可能な範囲で患者さんに動く様子を見てもらいながら運動を実施します。この時期は、視覚的な点も含め、多くの刺激を利用しながら機能の回復を促すことになります。負担をかけすぎないよう、心身疲労に注意しながらリハビリを実施しましょう。

C)回復期
安定して離床ができるようになれば、車椅子移乗や立位、歩行などADLに関しての練習を増やします。麻痺側に対する理解や、高次脳機能障害の状況にもよりますが、健側をうまく利用しながらの移乗や移動ができるよう、繰り返し行う反復練習が中心です。リハビリ室移動ができるのであれば、理学療法士がサポートをしながら、平行棒を利用した立位保持、足の振り出しなどを練習しましょう。その際、麻痺側の状況を把握しやすいように前方に鏡を置いて、自身の様子を見てもらいながら練習をするのもよいでしょう。しかし、どの時期にも同じようにいえることですが、こうした練習は心理的負担を与える可能性があります。患者さんのなかには、脳梗塞を発症する前の自分と比べてしまい、精神的に落ち込まれるケースがよく見られます。ここでも、運動療法と並行して、心理ケアを意識しましょう。

2.物理療法

脳血管障害のなかでも、特に急性期の脳梗塞における理学療法では、物理療法を実施することは少ない印象です。しかし、移動期において立位や歩行練習の際に、麻痺側をサポートするロボットなどを活用した療法を取り入れている病院や施設もあります。

3.教育

教育指導を行うとしても、急性期の患者さんとは、状態によって対話が困難な時期があります。そうした場合には、病棟の看護師など他職種に対して麻痺側に対するクッションなどのポジショニング指導や褥瘡予防のためのポジショニング指導、血圧を安定させるための定期的なベッドギャッジアップと血圧測定などを伝えておきましょう。患者さんと対話ができる状況になれば、今後の再発防止に向けてリスクファクターの説明をする必要があります。喫煙や飲酒が身体に及ぼす影響や運動習慣をつける必要性など、生活習慣の見直しといった指導を行うこともあるでしょう。回復期へ移行時期には、転院や自宅復帰に向けた環境の変化によってストレスを抱えてしまうことが予測されます。回復期のリハビリで実施する内容などを、より詳しく説明しておくのもよいでしょう。

まとめ

脳梗塞に限らず、脳血管障害に対するリハビリを実施する際には、医師や看護師、薬剤師など多くの他職種との連携が不可欠です。特に急性期では、血圧のコントロールや離床に際する他職種の協力によって円滑なリハビリが期待できます。理学療法士1人の力でリハビリを無理に進めるのではなく、協力体制を築いて、患者さんの回復をサポートしましょう。また、脳血管障害の患者さんには、急性期でのリハビリが予後に影響します。初期評価を含め、患者さんの状態を細かく記録しながら、日々の変化に合わせて適切なリハビリを選択し、実施したいものです。

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【参考文献】

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