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今すぐ実践可能なリハビリ〜脳疾患編〜 小脳梗塞2020.05.22

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文:伊東浩樹  理学療法士・ NPO法人 地域医療連繋団体.Needs 代表理事
社会福祉法人もやい聖友会 障害福祉部門統括責任者

脳疾患に対する実践リハビリシリーズ。前回は脳梗塞の患者さんに対するリハビリテーションとして、急性期と回復期に分けて紹介しました。今回は、小脳梗塞に対するリハビリテーションのポイントとして、評価基準や具体的な理学療法のポイントを紹介します。

小脳梗塞とは?

まず小脳の解剖学的な位置関係から、確認しておきましょう。
理学療法士ならご存じのとおり、中脳、橋、延髄を合わせた脳幹は、主に呼吸調整や血液循環などに働きかける役割を持っています。その脳幹の背側にあり、脳幹と小脳脚と呼ばれる神経繊維束を通して連絡しているのが小脳です。
小脳はもともと大脳に比べて細い溝が多く、その細かい溝のなかを多くの神経路が通っています。そのため、そうした部位に出血や梗塞などが生じてしまうと、障害部位は小さくとも広範な症状が発生する可能性があります。

小脳は、四肢体幹の協調運動や姿勢調整、構音、眼球運動の協調運動に関与しています。そのため、小脳梗塞などの障害が起これば「四肢体幹の運動調整が困難となる失調」や「運動失調があるが故に歩行も困難となってしまう失調性歩行」、「自身と他者、道などに対する距離感がつかみづらくなる測定障害」、また「四肢の失調によって手を伸ばした際などに発生する企図振戦」、「失調性の構音障害」などが生じる可能性があります。また、多くの症状は固定されておらず、何かしらの失調や構音障害など複合して出現するケースも見られます。
理学療法評価では、小脳梗塞が発生した患者さんに対して、どのような視点で評価を進めればよいのでしょうか?
具体的な理学療法評価を紹介します。

「理学所見」における評価ポイント

小脳梗塞のリハビリテーションを実施するにあたり、失調の有無と程度を確認することはとても重要です。小脳梗塞を発症されるより前に、もともと、失調だけでなくめまいなどが起きていた患者さんについては、その失調や症状が発生した原因の評価、判断も必ず実施しておきましょう。
また、理学所見における評価の際、その原因が「小脳性の運動失調」か「その他」なのかを判別するために、主観的、客観的評価と別に、運動失調の分類についても把握しておきましょう。

<運動失調の3つの分類>

1)脊髄性
障害部位:抹消神経、後根、脊髄後索
疾患名:脊髄瘻、多発性硬化症
運動失調に関する症候:感覚障害による姿勢保持障害、ロンベルグ徴候陽性(前後への揺れ)、歩行障害(暗闇、閉眼時に動揺増加)、筋緊張低下
その他の症候:特になし

2)前提迷路性
障害部位:前提迷路系
疾患名:メニエール病、前提神経炎など
運動失調の関する症候:平衡機能障害に基づく姿勢保持障害、ロンベルグ徴候陽性(左右への揺れ)、歩行障害(病側へ倒れやすい)
その他の症候:眼球運動障害、悪心、嘔吐、耳鳴り、難聴

3)小脳性
障害部位:小脳及び小脳に出入力するニューロン
疾患名:脊髄小脳変性症、小脳腫瘍、脳血管障害、脳性麻痺など
運動失調に関する症候:四肢の協調性運動障害(企図振戦、測定障害、速い変換運動の障害、運動開始の遅れ)、姿勢保持障害、ロンベルグ徴候陰性、歩行障害(左右へよろめくが、直立位を保持しようとする)、筋緊張低下
その他の症候:眼球運動障害、構音障害、自律神経障害など

理学所見では、上記でまとめた運動失調の3分類を把握したうえで、患者さんの既往歴に
①脊髄性の疾患
②前提迷路性に関する疾病

がないかを確認することも大切です。事前に確認しておくことで、運動失調が現病歴によって生じているものか否かの判別が可能です。

また、小脳で梗塞が起きた部位によって、運動失調が起こりやすい部位が異なります。小脳虫部であれば主に体幹部の筋に障害が起きやすく、小脳半休であれば四肢に影響を与えやすいとされています。梗塞と診断された患者さんをリハビリする際には、CTやMRIなどの画像を用いて、あらかじめどのような運動障害が起こるかを予測することも大切です。

主観的な評価のポイント

小脳梗塞では、小脳性の機能障害が起こっているときの運動失調に関して、患者さん自身がどのような失調が起きているかが自覚しづらい傾向にあります。それは感覚入力と運動出力に関与している小脳のフィードバック機能が阻害されているため、患者さん自身がいまどのように体を動かしているかどうかの把握ができにくくなっていることが要因のひとつとして考えられます。
主観的に評価できる機能障害については、小脳の機能が自律神経の働きを左右することを加味しながら「呼吸の乱れ」や「疼痛」、「感覚」などを問診し、日常生活で感じている違和感を聞き取っていく必要があります。

客観的な評価のポイント

小脳性の機能障害が起きている場合に、客観的な評価を行うポイントとして確認したい項目は、「筋力」、「関節可動域」、「筋緊張」などがあります。その他、重要な項目として「神経学的徴候(協調性の評価)」、「平衡機能」、「姿勢」、「歩行状態」を確認しましょう。

小脳性の運動失調の評価は、セラピストによってさまざまな方法が選択されます。その1つとして挙げられるのが、SARA(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)です。動作と協調性を評価でき、鼻-指試験なども含まれた全8項目となっています。施行時間は平均で4分間と短く、非常に簡易的であるにも関わらず定量的な評価ができるとして活用されています。

運動失調におけるアプローチ

構音障害や眼球運動障害などの症状もあらわれる小脳性の機能障害において、理学療法を行ううえで、もっともアプローチしたい項目は「運動失調」です。
まず、家族構成や社会背景を把握し、適切な評価を実施しましょう。次に、入院中だけでなく、今後どのような能力が日常生活に必要となるのかを考えて、理学療法を構築していくことが重要です。

1.「運動療法」によるリハビリテーション

小脳性の運動失調がある場合、関節運動や姿勢、歩行を含めた動作の調整において、入力と出力がうまくできない状態となっています。運動パターンを再学習させるためにも、残存している感覚系を利用して運動を実施します。

おもに視覚を用いて運動パターンを再学習させるケースが多いのですが、なかでも、無理なく実施できる方法の1つとして挙げられるのが「フレンケル体操」です。あおむけでも、座っている体勢でも無理なく開始でき、また、体操が段階的に進んでいくため、患者さんからの理解も得やすく、取り入れやすい方法といえるでしょう。
ただし、フレンケル体操は容易に実践できる一方で、体操に含まれない運動パターンの対応は難しいという一面があります。長所と短所をしっかり見極めながら、導入する方法を選びましょう。
また、動作については、座位から立位と感覚をつかむために段階的に進めていくことが大切です。歩行についてはバランス状態にもよりますが、伝い歩きなどから開始するとよいでしょう。その際にはつまずきや転倒などに十分注意する必要があります。

2.「装具療法」によるリハビリテーション

小脳梗塞後の患者さんは、歩行のバランス状態にもよりますが、多くの場合、最初はバランス調整が難しい傾向にあります。そこで提案できるのが、杖の使用です。
杖を使用したリハビリテーションでは、T字の杖だけでなく両手で持てるロフストランドクラッチを使用して歩行練習を行いましょう。また、運動失調や企図振戦を軽減させる目的で、四肢遠位部に重りをつけて練習をすることもあります。患者さんによっては、筋緊張が低下して、思うように筋出力を発揮することが困難な場合もあります。そうした場合は、弾性包帯を下肢に巻いて、歩行練習を実施すると効果が上がりやすいでしょう。

重りや弾性包帯を用いた運動療法は効果がある反面、患者さんによっては身体への負荷が強く、そのことによって精神的な負担になることが考えられます。その結果、心身共に疲労が蓄積してしまう可能性があります。装具療法を取り入れる際には、患者さんの体調や疲労感などに十分注意しながら実施するようにしましょう。

3.問診やリハビリを行う際の注意点

小脳梗塞で機能障害を呈している患者さんのなかには、言語障害などは残らず、梗塞部位によって輪状咽頭筋が収縮不全を起こして嚥下障害が残存する場合もあります。嚥下障害の場合は、主に言語聴覚士が担当をすることになりますが、身体機能に関するリハビリテーションを実施している際にも、唾を飲み込めずにむせこんでしまう人もいます。
そうした場合には、心に寄り添いながら心理面でのストレス軽減を目指していくことも必要です。食事を食べることができないことが、患者さんにとってどれほど辛いことか、その気持ちをセラピストが共有することでリハビリテーションへの取り組み方も変化するでしょう。リハビリ中に、安易に「昨日美味しいお店に行った」などお話をしないように充分に相手の立場に立って物事を進めていく必要があります。気軽な世間話であっても、相手を思いやった発言を意識しましょう。

4.患者さんにあわせた社会資源の活用も検討しよう

場合によっては、地域における社会資源を活用していくことも検討しなくてはなりません。社会資源の活用といっても制度や施設、機関や資金など患者さんのニーズに応じて活用方法はさまざまです。例えば、30代で元々会社勤めをしていた患者さんであれば退職されているのか、退職していないのかによってアドバイスや手続きが変わります。退職していれば、復職を目指して新しい職場を探すために、市役所などに診断書を持参したうえで障害者手帳を交付してもらい、障害者雇用枠での手続きが必要かもしれません。その際には市役所の相談員、そして患者さんの担当になってもらう相談支援事業所の相談支援員に、治療や日常生活の問題点などを共有する必要もあるでしょう。復職の場合は、装具を使用して歩くことにより転倒リスクを考えながら、職場への環境整備をしていただく必要があることや、疾病の後遺症により仕事中目眩などが起きやすくなっていることを伝える必要があります。就職をしない場合でも、自宅復帰を目指して、家の掃除や買い物などをヘルパーに依頼することもあるかもしれませんので、その場合は居宅支援事業所などに連絡をしてケアマネージャーさんを依頼するなど自宅復帰に関して必要な手配が必要です。

まとめ

小脳梗塞による小脳性の機能障害は、平衡感覚だけでなく構音障害や眼球運動なども阻害する可能性があります。そうした機能障害は、日常生活に大きく制限をもたらします。急性期だけではなく回復期、そして社会復帰をした後も、リハビリテーションの役割は大きいものです。また、患者さんそれぞれの生活背景に応じて幅広い視野で取り組むためにも、小脳性の機能障害におけるリハビリテーションの知識だけでなく、社会資源についての知識なども勉強しておくとよいでしょう。

参考

理学療法診療ガイドライン・日本理学療法士協会・株式会社ガイアブックス
中枢神経疾患の理学療法 監修:千住 秀明
PT・OT・STのための脳画像のみかたと神経所見
機能障害科学入門  監修:千住 秀明

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