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セラピストの転職で考えるべき2つの視点「貢献」と「仲間」

公開日:2020.10.26

people holding heart symbol

セラピストは科学的に満足度が高い!でも職場の人間関係には注意

医療機関に従事するセラピスト。誇りを持てる仕事でも、「職場が自分に合わない……」と感じてしまうと転職を考えたくなりますよね。科学ジャーナリストでベストセラー『科学的な適職』著者の鈴木祐さんによれば、就職・転職の際には「2つの視点」を取り入れることが大切だとか。今回は職場選びの際に知っておきたい、適職発見に役立つ2つの視点・「仲間」「貢献」についてお伝えします。

セラピストは高い満足感を得やすい職業

2007年、シカゴ大学が約5万人の男女を集め、30年をかけて職業リサーチを行いました。
チームが調べたのは、「高い満足感を得やすい職業とはどのようなものか?」という問題です。あらゆる職種から集めた被験者に仕事の満足度を尋ねたところ、「もっとも満足度の高い仕事」のトップ5はこうなりました。

❶ 聖職者
❷ 理学療法士
❸ 消防員
❹ 教育関係者
❺ 画家・彫刻家

一見すると、ランキング上位に入った職業はバラバラで、日々の作業もまったく異なります。また、この結果はあくまでアメリカの文化に特有のものであり、日本にそのまま当てはめるわけにもいきません。
しかし、リストに並ぶ職業には、仕事の幸福を考えるのに役立つ特有の共通点があります。研究を手がけたトム・W・スミスのコメントを引きましょう。
「満足度が高い仕事とは、他人を気づかい、他人に新たな知見を伝え、他人の人生を守る要素を持っている」
確かに上位に並んだ職業は、どれも他人への貢献がわかりやすいものばかりです。聖職者は信者の悩みに日々よりそうのが仕事ですし、療法士や消防員は患者や被害者の苦しみを救い、教育者と芸術家は受け手に新たな情報や物の見方を伝えるのが職務です。
他方で、満足度が低い職業にランクインしたのは、倉庫ピッキング、レジ打ち、工場での単純作業などでした。これらの仕事が決して悪いわけではないものの、やはり「自分の働きが他人にどう貢献しているのか?」が見えにくいところが共通しています。倉庫や工場での作業は自分の行為で他人が喜ぶ姿を想像しづらく、そのぶんだけ私たちの幸福は下がってしまうのです。このポイントを、専門的には「タスク重要性」と呼びます。「その仕事がどれぐらい他人の生活に影響を与えられるか?」を示した概念です。

他者への「貢献」はやりがいを生む

asian nurse

「人のためになることをせよ」とはいかにもキレイごとのようですが、多くのデータが貢献のメリットを支持しているのは事実です。
あるリサーチでは、ボランティア活動を行う人ほどうつ病の発症率が低い事実が確認され、また別の実験では「他人への小さな親切」を1日5回ずつ6週間ほど続けた被験者にも大きな幸福感の向上が認められました。その意味で「貢献」の考え方とは、「科学的に正しいキレイごと」だと言えます。
さほどまでに社会への貢献が大事なのは、他者への親切によって人間が持つ3つの欲求が満たされるからです。

❶ 自尊心 他人の役に立ったことにより、「自分は有能な人間なのだ」との感覚が生まれる
❷ 親密感 親切のおかげで他人と近くなった気分になり、孤独感から逃れやすくなる
❸ 自律性 「他人のためになった」という感覚が、「誰から指示されたわけではなく、自分で自分の幸せを選択できた」との気持ちにつながる

これらの欲求は人間が幸せを感じるためには欠かせず、うまく満たせない限り仕事へのやりがいは生まれません。

転職には「貢献」の視点を取り入れて

Senior person thanks the nurse
脳科学の研究でもこの事実は認められており、社会に役立つ行為をした直後には、頭のなかにドーパミンがあふれ出すことがわかっています。これは「やる気ホルモン」として知られる神経伝達物質の一種で、多くの違法ドラッグで快楽得られるのも一時的に脳内にドーパミンが増えるからです。
そのため一部の学者などは、親切による幸福度アップの効果を「ヘルパーズ・ハイ」 と呼んでいます。わざわざドラッグの力など借りずとも、私たちは社会への貢献で十分ハイになれる、というわけです。
もちろん、違法な職業を除けば、他人のためにならない仕事など世の中に存在しません。 倉庫ピッキングも世界に必要な物質をまわす行為の一部ですし、レジ打ちがいなければ経済は成り立たないでしょう。
が、ここで大事なのは、あくまで「自分の行為が他人の役に立った」事実を可視化しやすいかどうかであり、その点ではエンドユーザーとのふれあいが多い仕事や、クライアントと直にやり取りできる職業のほうが有利なのは間違いありません。適職を探す際は、ぜひ「貢献」の視点を取り入れてみてください。

セラピストも悩みやすい、職場の人間関係

Digital healthcare  concepts. Doctor physician team meeting consulting work together using new technology tablet to view medical x-ray with patient chart in hospital.
「私たちは仕事を辞めるのではない、ただその場の人間関係を立ち去るのだ」
経営学の世界では、こんな格言をよく耳にします。職場における人間関係の重要性を示したフレーズですが、思わず共感してしまう人は多いでしょう。どんなに仕事そのものは好きだとしても、パワハラ上司やウマが合わない同僚と毎日8時間も顔を合わせ続ければ、幸福度が上がるはずはありません。
厚労省の統計によれば、「同僚と仕事やプライべートの会話で笑うことがあるか?」との問いに「はい」と答えた日本人の数は30%にすぎず、「会社内で信頼できる上司はいるか?」との質問にはおよそ87%が「いいえ」と答えています。欧米で行われたリサーチでもこの傾向は変わらず、仕事の人間関係に悩むのは世界的な現象のようです。

職場に友人が3人いれば仕事のモチベーションは700%上がる

Scientific technology concept. Scientists. Laboratory.
上司や同僚が仕事人生におよぼす影響の強さを示した例としては、500万人を対象に行われたアメリカのサーべイが有名です。研究チームは被験者の職場における人間関係を調べ、次の傾向を導き出しました。

◉ 職場に3人以上の友達がいる人は人生の満足度が96%も上がり、同時に自分の給料への満足度は2倍になる(実際にもらえる金額が変わらなくても、友人ができるだけで給料の魅力が上がる)
◉ 職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチべーションが7倍になり、作業のスピードが上がる

思わず目を疑うレべルの数値ですが、給料の多さや仕事の楽しさなどの要因とは関係なく、社内に良い友人がいるだけでも人生が幸福になるのは確実なようです。
さらに信頼性が高いデータとしては、フロリダ州立大学のメタ分析も参考になります。こちらは約22万人のデータをより厳密に処理したもので、やはり「ソーシャルサポートの存在は仕事の満足度と相関する」との結果でした。簡単に言い換えれば、「困ったときに自分を助けてくれる同僚がいると、楽しく働ける可能性が大きく上がる」ぐらいの意味になります。

職場の劣悪な人間関係には要注意

leader red man
近年では、ヒドい上司や同僚の悪影響を示したデータにも事欠きません。なかでも大きいのは健康面へのダメージで、劣悪な人間関係のもとで働く人ほど寿命が短くなるとの報告が多くなされています。代表的なところを見てみましょう。

◉ 嫌な上司のもとで働く従業員は、良い上司のもとで働く従業員に比べて心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる
◉ 嫌な同僚のせいで悪化したストレスは、たとえ会社を辞めても健康的なレべルにもどるまで22カ月かかる
◉ 人間関係が悪い会社では、社員が高血圧や高コレステロール、糖尿病に悩む確率が20%増加する

人間関係の悪化が健康におよぼす影響は計り知れず、そのダメージのレベルは長時間労働や福利厚生の不足の悪影響を上回ります。どれだけ業績が良い会社だろうが、嫌な人間に囲まれて過ごすだけの価値はないでしょう。

転職先の職場に「自分に似た人」がいるかチェックしよう

Asian female medical worker with medical chart and pen
せんじつめれば、「その会社で働く人を好きになれそうか?」ぐらいの基準で職場を選ぶのも決して間違いとは言えません。適職を探すときは「仲良くなれそうな人がいるか?」という観点を忘れないでください。「仲間」の考え方を適職選びに使う際は、次の要素に注目するのがおすすめです。

◉ その組織には、自分に似た人がどれぐらいいそうか?

人と人の仲を結びつける要素はいくつもありますが、現時点でもっとも確かなのは「私たちは自分に似た人を好きになりやすい」という事実です。俗に「類似性効果」と呼ばれる心理現象で、相手との考え方や性格の近似はもちろん、外見やファッション、文化的な背景など、どんな要素でも自分と似てさえいれば好感度は高まります。
これぐらいのポイントなら、施設見学や面接の際にもチェックしやすいでしょう。

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『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』鈴木祐著(2019年 クロスメディア・パブリッシング)
本コラムは同書を元に再構成しています。

鈴木祐(すずき・ゆう)
科学ジャーナリスト
1976年生まれ。慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ねながら、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」で心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介し続け、月間250万PVを達成。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『科学的な適職』『最高の体調』(クロスメディア・パブリッシング)、『ヤバい集中力』(SBクリエイティブ)他多数。

<書籍情報>『科学的な適職 4021の研究データが導き出す、最高の職業の選び方』著者:鈴木 祐
出版社:
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
発売日:2019年12月13日
定価:本体1,480円(税別)
ISBN:978-4295403746
判型:単行本(ソフトカバー)
ページ数:288ページ

鈴木 祐

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