麻痺の回復をうながす! 川平法とその手技とは?
公開日:2016.04.18 更新日:2016.05.02
脳梗塞や脳出血など、脳血管障害によって引き起こされる麻痺。さまざまな治療法が試されるなか、脳科学を応用したニューロリハビリテーションが注目されています。麻痺した手足だけではなく、運動の指令塔である脳にも注目し麻痺の改善を図るもので、CI療法(拘束誘導運動療法)やミラーセラピーなどがあります。その中で今回は、治療効果が証明されており、慢性期の麻痺にも効果があるとされる川平法(促通反復療法)をご紹介します。
一年たった麻痺でも改善。川平法とは
麻痺に対するリハビリの方法は多くあり、理学療法の現場もさまざまな手法を取り入れています。PNF(固有感覚神経筋促通法。Proprioceptive Neuromuscular Facilitation)やボバース法、ブルンストローム法などがよく知られています。近年では、重度の上肢麻痺の患者さんを対象として行う、脳と機械を連動させるBMI療法(Brain Machine Interface)を実践する人も増え、さらなる広がりを見せています。さまざまなアプローチがあるなかで、注目したいのが「川平法」です。軽~中等度の麻痺や、慢性期の麻痺にもエビデンスがあり、特別な機器を必要とせずに行えるといった特徴があります。
麻痺は、大脳皮質や運動野からの神経細胞軸索の損傷によって起こるものです。麻痺を回復させるには、大脳皮質からの神経路を再度構築し、神経の強化を行うことが求められます。そこで必要となるのが、「シナプスの興奮伝達を繰り返して結合の強化を促すこと」なのです。
川平法では、セラピストが患者側へ刺激を与えながら動作を誘導し、患者さんが自分で動かそうとする運動を何度も繰り返すことで、神経路の再構築・強化を促します。これまでは発症後、半年を超えると麻痺の改善は困難とされてきましたが、川平法では1年が経った慢性期の例でも麻痺の改善に効果があったと報告されています。
治療成績について
従来の神経筋促通法と川平法では、結果としてどのような差があるのでしょうか。脳卒中片麻痺の患者さんに対して行われた治療成績を比べてみましょう。
鹿児島大学名誉教授である川平和美さんの研究、「脳卒中リハビリテーションの革新を目指す促通反復療法(川平法)」によると、片麻痺上肢への治療を1回40分で4週間行った場合、麻痺と物品操作能力の改善度で、川平法の方が優位に改善度は大きいという結果がでています。下肢に対しても同様に、麻痺と歩行に改善が見られるのですが、特筆すべきは、治療の最初の2週間は、通常治療でも麻痺の改善が見られたのに対し、後半の2週間では川平法にのみ優位に改善が得られたこと。こうした結果から、治療の「質」として、川平法が優れていることを示しているといえるのではないでしょうか。
川平法の手技について
それでは実際に、川平法の治療手技について確認してみましょう。
実践する際には、「繰り返しの動作が神経回路を回復させる」という考え方が基本です。患者さんには口頭で指示して、自分で動いてもらい、セラピストはさまざまな刺激を入れながら介助、誘導します。
特定の動作を100回、もしくは休憩をはさんで50回を2セット行います。セラピストの介助は基本的に力を入れ過ぎないように軽く行い、動作中に疼痛の訴えがあれば中止します。食事直後は避け、入浴後が推奨されます。
1つの例として、肩甲骨を動かす動作を紹介しましょう。
右片麻痺の患者さんが対象の場合、右麻痺側を上にし横になった側臥位で行います。
セラピストは左手の母指以外の指を、麻痺している側の肩甲骨内側の縁に置き、てのひらで肩甲帯を押しながら、右手でしっかり握った麻痺側上肢を曲げます。
次に患者さんに上肢を伸ばすように指示し、掛け声とともに左手で肩甲帯を外側へ引きながら、右手で麻痺側上肢を伸ばします。
あくまで麻痺側の誘導が目的であり、肩甲骨の動きをサポートします。誤って腕を引っ張らないようにしましょう。この動作を100回、繰り返し実施します。
麻痺回復のために
川平法は一つひとつの動作の誘導法が細かく決まっています。勉強会や書籍などで理解を深めるだけでなく、実践的な研修を受けるのもおすすめです。患者さんの早期回復に向けて、川平法をリハビリに取り入れていきたいですね。
【参考URL】
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