サルコペニアとはどう違う? 高齢者特有の状態を指す「フレイル」について
公開日:2016.06.06 更新日:2016.06.17
2014年に日本老年医学会で提唱された「フレイル」をご存知でしょうか? 高齢者の筋力低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など、健康障害を起こしやすい脆弱な状態をあらわすもので、サルコペニアとは区別されています。ますます高齢化が進むなかで避けられない高齢者のリハビリテーション。今後、さらに理解が必要なフレイルについて知識を深めましょう。
高齢者特有の状態とは
高齢化が進む日本では、患者さんの多くが高齢者となります。加齢による影響もあり、高齢の患者さんには共通する特徴が挙げられます。若年成人の患者さんに比べた場合、どのような違いが考えられるでしょうか。
高齢患者さんの疾病・病態上の特徴として、以下の6つが挙げられます。
- 複数疾患を有する
- 老年症候群が増加する
- 認知機能障害のような日常生活障害を抱えている
- 症状が非定型的である
- 薬物に対する反応性が異なる
- 社会的因子の影響が大きい
高齢者に対する医学的アプローチにも考慮が必要です。若年成人では主訴に対して評価を行い、病因を根本治療していきますが、高齢者では主訴以外の症状や病歴が複雑な場合があり、対応が難しくなります。例えば、脊柱の変形や脳梗塞による片まひなど、病因を特定しても根本治療が困難、もしくはできない場合も少なくありません。主訴をできるだけ改善するためにも、高齢者特有の状態を理解しながら、個人に合わせた柔軟な治療やリハビリが求められています。
フレイルについて
フレイルとは「加齢に伴う種々の機能低下(予備力の低下)を基盤とし、種々の健康障害に対する脆弱性が増加している状態」と定義され、2014年に日本老年医学会によって提唱されました。
75歳以上の健康な後期高齢者と要介護状態の中間的な段階が「フレイル」にあたると考えられており、生活機能障害、死亡などの転帰に陥りやすい状態といえます。またサルコペニアやロコモティブシンドロームと違い、筋力低下などの身体的問題だけではなく、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、また、独居や経済的困窮などの社会的問題も含んだ、より広範囲な概念を持っているのが特徴です。
日本でのフレイルの診断基準は、まだはっきりと統一されていませんが、「Friedらによる評価指標」や「フレイルスコア」というものが比較的よく使われています。
Friedらによる評価指標
- 体重減少
- 疲れやすさの自覚
- 活動量低価
- 歩行速度の低下
- 筋力の低下
※以上5項目のうち、3項目以上があてはまればフレイル
フレイルスコア
- 6ヵ月で2~3kgの体重減少がありましたか?
- (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがしますか?
- 週に1回以上外出していますか?
- 以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか?
- 椅子に座った状態から何にもつかまらずに立ち上がっていますか?
- 5分前のことが思い出せますか?
※各項目1点 最高6点 2点以上でフレイル
高齢者のリハビリテーション
フレイルを増悪させる最大の要因は、低栄養とサルコペニアであるといわれています。急性期病院における高齢者のリハビリでは離床に難渋する場合が多く、フレイルの悪化を予防するためにも多職種による包括的な介入が重要です。栄養評価による低栄養の発見と対応や、サルコペニアに対するレジスタンストレーニングなど、医師、看護師、管理栄養士、理学療法士らが連携し、チームとしての介入が必要とされています。
フレイルの可逆性
生きている以上、加齢から逃れることはできませんが、フレイルは早期発見・早期介入で改善することが期待できます。セラピストとして高齢者が要介護者になることを防ぎ、生活の質の維持・向上を図りたいですね。
【参考URL】
他の記事も読む
- 保育・教育現場で活動する作業療法士――子どもの発達を支える仕事の魅力に迫る
- パーソナルトレーナーはやめとけと言われる理由3選!その将来性も合わせて解説
- 理学療法士に向いていない学生の特徴は?学校入学前に知っておきたいこと
- 脊柱管狭窄症でやってはいけないこととは?症状や原因などについても解説
- 運動器リハビリテーションとは?対象患者や点数、施設基準などについて解説
- 作業療法士が別の道で働くならどんな仕事があるか?実例をもとに詳しく解説
- 鎖骨骨折のリハビリ内容は?日常生活での注意点と自分でできるリハビリについても紹介
- 嚥下訓練「パタカラ体操」のやり方と効果を解説【自宅で実践!】
- 脳動脈の支配領域の覚え方は?脳血管との関連性や閉塞時の症状についても解説
- 関節リウマチでやってはいけない仕事とは?向いている仕事や働きやすい職場環境について解説
- 端座位とは?メリットや必要な機能、リハビリ方法などについて解説
- 拘縮とは?概要や原因、予防方法などについて解説
- こんな道もある! セラピストの仕事「エンパワーメントで高齢者の食・望む暮らしをサポート」
- 【福祉住環境コーディネーター受験】いきなり2級を受けてもよい?合格率や試験対策などを解説
- 言語聴覚士で年収1000万円は実現可能?リアルな年収実態と年収アップ方法を解説
- 機能訓練指導員とは?仕事内容や必要な資格などについて解説
- FIMの評価方法とは?特徴やメリット、項目などについて解説
- 半月板損傷でやってはいけないこととは?リハビリの内容や気をつけるべきことを解説
- 手指のリハビリが必要なのはこんなとき!自宅でできる自主トレ方法も紹介
- こんな道もある! セラピストの仕事「性の特性を踏まえてライフステージごとの健康を支えたい」