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精神障害に苦しむ患者さんを社会復帰へ!作業療法士ができるアプローチとは

公開日:2016.06.13 更新日:2016.06.24

ストレス大国といわれる日本では、うつ病や神経症などの精神障害に苦しむ患者さんも増加傾向にあります。そんななか、医師とは異なるアプローチで患者さんを社会復帰へ導くことができるのが作業療法士です。精神障害を持つ患者さんが自信を持って社会生活を営めるようにするためには、どのようなアプローチを行えばよいのでしょうか。

「作業」が患者さんと作業療法士の心をつなぐ

繊細で複雑な精神疾患の治療……。患者さんのなかには、生きにくさを感じて会社や学校を辞めてしまった人や、長期にわたり引きこもり、社会との関係を断絶している人も少なくありません。そうした経緯から社会活動への自信を失っている患者さんにとって、希望となり得るのが「作業」です。

日常生活を回復プログラムに取り入れる作業療法は、患者さんが生活リズムを取り戻し、新たな趣味や目的を持つきっかけになります。もっとも重要となるのが、作業によって得られる成功体験。作業を全うし、よい結果を得られたことは患者さんに活力や興奮、希望などさまざまな喜びを与えてくれます。こうした達成感へ導くのも、作業療法士の大切な仕事です。ともに喜びあうことで患者さんと心が通じやすくなり、さらに次の訓練へ進めるようになります。

社会生活が送りやすくなるリハビリ内容を提供しましょう

作業療法の多くは、身体機能向上に関する訓練となります。しかし、精神障害を対象とした作業療法では、コミュニケーション能力を高めたり、仕事の効率性を上げたりするリハビリが重視されます。東京都にあるNTT東日本関東病院では1997年から作業療法の一環として、「職場復帰援助プログラム」を導入。現在では、主にうつ病や躁うつ病などの気分障害で休職中の人を対象とし、以下の4つを目的として患者さんの社会復帰を支援しています。

  1. 生活リズムの改善
  2. 仕事に必要とされる基礎能力の改善
  3. より円滑な対人交流の習得
  4. 再発予防

このように社会復帰までの道のりを明確化することで患者さんのサポートがしやすくなり、患者さんに適したリハビリの提供が実現できるようになります。集団レクリエーションや調理実習、パソコン作業など、こだわりの傾向や興味の範囲に合わせた訓練が行われています。

北海道大学病院の事例からみる作業療法士の功績

また別の病院で、実際に社会復帰を遂げた事例を紹介しましょう。職場で上司に叱責されたことから心因反応を起こし、過呼吸発作や失立、失歩などを発症した19歳の女性Aさんは、北海道大学病院精神神経科に入院し、身体介助を受けながら作業療法を受けました。

Aさんは褒められると作業に集中し、やる気も見せますが、失敗した際は、疲労や身体症状を訴える傾向がありました。他者からの評価に高く価値を置き、失敗に強い不安を覚えるため、集団のなかで成功感を持たせ、自己評価を高めることが必要と判断されました。そこで訓練用の作業として着目されたのが、病前からの趣味であった和紙工芸です。作品の出来を認められたうえ、ほかの患者さんのサポート役も果たすなど、得意な作業で自信をつけたところで、初めての種目であるマクラメ編みや機能訓練を進めました。しかし、すぐにはうまくいかず、感情的になることも。また、一進一退の訓練のなかで看護助手の仕事に魅力を感じ、その道を目指す積極性も出てきましたが、結果、就職試験に失敗し自殺を図る事態を招きます。しかしその後も、作業療法士が親身に根気よく寄り添うことで回復し、歯科助手専門学校へ入学、就職と歩みを進めることができました。

自信の積み重ねで社会復帰を後押し

Aさんの事例のように、精神障害のリハビリでは、患者さんの心身の状態に合わせて柔軟に対応することが求められます。まずは患者さんが興味を持てる作業を通じて自信を獲得してもらいます。そして、失敗したときやパニックになった際には、励ましや助言を与えてフォローすることで、成功体験へとつなげます。作業に慣れてきたら周囲の患者さんへの手助けをするように促し、人の役に立つことで自分の価値を感じられるように導きます。

経験の積み重ねによって、自信を持てるようになり、社会復帰への意欲が湧くようになります。ただし、一方でやる気と同時に起こりやすいのが自殺念慮です。Aさんのように、意欲と相反して挫折を味わうような出来事が起こると、エネルギーが自殺念慮へと傾いてしまうことがあります。患者さんのやる気を見守るとともに、無理のないように誘導することが大切です。

患者さんに自信を与えられるリハビリを

作業活動で得られる成功体験は、患者さんに小さな自信を与え、その積み重ねが自尊心と勇気を育みます。患者さんが「やってみようかな」と思える作業を提案することが初めの一歩です。患者さんの症状やペースに合わせ、無理のないようじっくりとリハビリを進めることが、社会復帰へとつながるでしょう。

 

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