バイタルサインで異変をキャッチ! リハビリ中のリスク管理
公開日:2016.09.09 更新日:2016.09.20
リハビリ前後やリハビリ中には患者さんのバイタルサインを確認する……。理学療法士にとっては当たり前の手順ですが、その意味や必要性についてどこまで理解できているかは個人差が大きいのではないでしょうか。バイタルサインは患者さんの体が私たちセラピストに送る重要なサインです。なかでも、特に必要な血圧や脈拍、体温、呼吸、意識レベル、酸素飽和度などのバイタルチェックで意識したいポイントについてお伝えしましょう。
バイタルサインとその必要性
臨床でよく耳にするバイタルサインという言葉。日本語では『生命兆候』と訳されます。つまり、患者さんの生命にかかわる基本的な情報といえるでしょう。リハビリ前後にバイタルサイン確認を行う理由のひとつは、患者さんの異常を早期に発見するため。そして、もうひとつはリハビリの負荷や効果を評価するために行います。つまり、リハビリ前の確認では患者さんがリハビリを行える状態かどうかがわかり、リハビリ中やリハビリ後のバイタルサインによって、負荷量が適切かどうか、継時的に見れば効果が出ているかどうかが評価できるというわけです。では、実際にどのような評価を行えばよいのでしょうか? 各バイタルサインの数値について確認していきましょう。
血圧、脈拍、体温について
まずは一般的な項目となる血圧、脈拍、体温の正常値や異常値、そこから考えられるリスクや対処法について、改めて確認してみましょう。
- 血圧……成人の正常値は収縮期130mmHg未満・拡張期85mmHg未満
高血圧は収縮期血圧140mmgHg以上・拡張期血圧90mmHg以上。低血圧は収縮期血圧90mmHg以下。高齢者は動脈硬化の影響もあり、血圧は高めになる傾向があります。そのため降圧剤を飲まれている方も多く、内服薬の確認は不可欠です。安静時の収縮期血圧が70以下、または200以上、拡張期血圧120以上の場合はリハビリを行わないほうがよいとされていますが、個人差も大きく、患者さんの平常血圧の把握が大切になります。 - 脈拍……成人の正常値は毎分60~100回/分
頻脈は1分間に100回を超える場合。徐脈は1分間に50回未満。安静時脈拍40/分以下、あるいは120/分以上はリハビリを行わないほうがよいとされています。また、頻脈、徐脈、不整脈が見られる場合は、心臓の異常や脱水状態が考えられ、不整脈であれば1分間の回数を確認し、医師や看護師へ連絡しましょう。 - 体温……日本人の正常値は37度未満
安静時38度以上は、リハビリを行わないほうがよいとされています。体温は朝に比べ夕方に高くなったり、高齢者で低く、小児で高くなったりするなど、個人差や日内変動があります。また、測定部位によっても異なり、腋窩(えきか)、口腔、直腸の順に高くなります。血圧と同様に、患者さん個人の平熱の把握が必要です。
呼吸、意識、酸素飽和度について
次に、見た目や状況から判断する呼吸や意識の状態、そして酸素飽和度のチェック方法です。
- 呼吸……成人の正常値は12~20回/分
頻呼吸は24回/分以上。徐呼吸12回/分以下。呼吸は吸気、呼気、休止期の比率が1対1.5対1とされており、呼吸回数とあわせて評価します。患者さんの普段と比べ、異常所見が見られる場合は、肺、心臓、脳に何らかの異常がある可能性もあり、医師や看護師への連絡を行います。 - 意識……覚醒(かくせい)状態であること
評価スケールとして、JCS(Japan Coma Scale)とGCS(Glasgow Coma Scale)が一般的です。JCSは覚醒しているか、刺激に応じて覚醒するか、刺激しても覚醒しないかを評価します。GCSは開眼、言語反応、運動反応を評価します。意識レベルの低下や失禁、痙攣(けいれん)などの症状があれば早急に医師、看護師への連絡が必要です。 - 酸素飽和度……正常値は95%以上
90%未満は呼吸不全状態と考えられ、リハビリは行わないほうがよいとされています。呼吸器の異常を疑い、医師、看護師へ連絡します。また、測定部位に冷感がある場合は末梢(まっしょう)の循環不全により、正しく測定できないこともあり、注意が必要です。部位を変更するか温めるなどの対策をとり、循環を改善してから再度測定します。
安全なリハビリのために
患者さんの状態にもよりますが、リハビリはそれだけでリスクを伴うケアです。バイタルサインをしっかりと確認し、少しでもリスクを減らして、患者さんに安全なリハビリを提供していきましょう。
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