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【資格保持のSTが解説】LSVT®LOUDとは?目的や活用方法

公開日:2022.02.10 更新日:2022.02.21

【資格保持のSTが解説】LSVT®LOUDとは?目的や活用方法

文:竹内 あすか
(言語聴覚士/LSVT®LOUD認定療法士)

言語聴覚士のなかには、「LSVT®LOUD認定療法士」の資格をもっている人がいます。聞き慣れないかもしれませんが、筆者もLSVT®LOUDの有資格者の1人です。

LSVT®LOUDとは
The Lee Silverman Voice Treatment(リーシルバーマン音声治療)の略称で、米国のRamig氏らが考案したパーキンソン病の患者さんの発話明瞭度改善に有効な治療法です。

筆者は2006年に認定資格を取得し、今現在も資格を活かしながら言語聴覚士として励んでいます。今回は「LSVT®LOUDがどんな資格なのか」や「STの業務での活かし方」についてお話したいと思います。

LSVT®LOUD認定療法士とは?ST領域の音声治療手技の資格

LSVT®LOUDは「パーキンソン病患者さんの声の改善を目的とした4週間の短期集中プログラム」です。ST領域で初めて、訓練効果に関するエビデンスが認められた音声治療手技で、近年では声の治療効果だけでなく、摂食嚥下障害の改善も報告され始めています。

また、理学療法(PT)領域への応用研究も進んでおり、PT領域の訓練では「LSVT® BIG」と呼ばれています。

LSVT®LOUDの目的は、大きな声を出すことを般化させることです。パーキンソン病の方は、会話する声が小さくなりがちなため、声を大きく出す習慣を身につけて、日常会話の音声と発話の両方を改善していきます。

神経系の損傷で生じる発声発語障害をディサースリアといいますが、パーキンソン病に伴う運動低下性ディサースリアでは、一般的に「声量の低下」「嗄声」「声の高さ異常(低すぎる)」「声の高さと大きさの単調性」「呼吸の支持性の低下」「声のふるえ」などの発話特徴があります。

これらの症状に対し、発声の努力、声帯内転、呼吸の支持性を増大することを目標とします。効果としては声量の増大のほかに「声域の拡大」「ピッチ(音程)調整機能の改善」「声質の改善」などが得られます。

また、脳の働き、呼吸、構音、発声、共鳴器官を活性化させ、発声や発語器官の機能が高まる可能性があります。

LSVT®LOUDの治療には5つの原則がある

LSVT®LOUD では十分な吸気を得た後で、「叫ぶつもりで」「大きな声で」と盛んにパーキンソン病患者さんに指示し、集中的・行動的に治療を行って日常での実用を促します。そして治療効果が得られること、さらに持続することを患者さんに強調して伝えます。

なお、治療には次の5原則が重要になります。

①音声治療に専念する
②高い努力で治療に専念する
③集中的な治療に専念する
④校正に専念する
⑤定量化に専念する

①~③はとくに説明は不要かと思います。

④は患者さんが自身の声の小ささを自覚して、声を大きくするように変化させることを意味しています。多くのパーキンソン病患者さんは声が次第に小さくなり、それに慣れてしまっています。小さい声でも自分では「普通の大きさの声」と認識してしまう傾向があるため、感覚的な校正が必要となります。

実際、筆者が担当した患者さんも自分の声の小ささの認識が乏しく、「妻の耳が遠くなった」と、相手が聞き取れないせいだと話されていたことがありました。そのため、自己校正がとても重要になり、そのアプローチにはかなりの時間を要しました。

⑤の定量化とは、パーキンソン病患者さんの動機づけのために訓練ごとに効果を数値化して示すことです。各課題中の発声持続時間(秒)、声量(㏈)、声の高さ(㎐)を記録し、これを参考に言語聴覚士が効果の確認を行います。

LSVT®LOUDを受けられる患者さんの条件

実施する内容は、1回50~60分、大きく息を吸って大きな声を出す訓練を週4日、4週間(計16回)施行します。また訓練のあった日には自主訓練を5~10分間を1回行い、訓練がなかった日には10~15分間の自主訓練を2回行います。

LSVT®LOUD訓練の課題内容はいたって単純ですが、これこそが特異的なアプローチと考えられます。効果を発揮するために、この単純な課題を確実に粘り強く繰り返し行い続けることが重要なのです。

そのため、LSVT®LOUDを受けたいパーキンソン病患者さんは、おおよそ以下の条件が必要となっています。

・1か月の入院または週4日×4週間(計16回)の通院などが可能であること
・病状が安定していること(服薬コントロール)
・訓練や宿題(セルフトレーニング)を意欲的に行えること
・医師の判断により、LSVT®LOUDによる改善が見込めること
・声かけにより、声の大きさに変化が生じること
・軽度~中等度のパーキンソン病患者

このほか、病院や施設によって条件があります。

LSVT®LOUD認定療法士の資格を取得するには?受講の流れと受講料

【資格保持のSTが解説】LSVT®LOUDとは?目的や活用方法
LSVT®LOUDは名称独占が定められており、有資格者でなければLSVT®LOUDの名称を用いて訓練は実施できません。

LSVT®LOUDでは2日間の講習会を受講し、2日目に行う認定試験に合格することで認定証が与えられます。

受験資格は基本的に言語聴覚士の有資格者ですが、学生も受講は可能です。ただし学生が合格した際は、言語聴覚士の資格取得後まで仮認定となります。

筆者が受けた認定試験の内容は、講習の総まとめが中心でした。合否はその場でわかり、不合格になった場合でも再試験がありました。そして不合格の場合は後日メールが届き、送られてきた試験を行い返信する形式です。

講習会の申し込みや内容について

筆者は2016年に取得したため、当時の経験談について詳細を説明します。

※編集部注:最新の申込み方法や流れにつきましては「LSVT®LOUD」の公式サイトでご確認ください
参考:LSVT GLOBAL

筆者が取得したいと思ったころは、日本での講習会は年1~2回程度しかなく、ネット上に講習会の告知が出たときにはすでに予約がいっぱい。開催場所も東京都と新潟県のみしかなく、受講人数も制限がありました。

そして受講料は80,000円程度で高額だったため、勤務先と相談して助成金を出してもらうことに。ちなみに受講日は土日で開催されたため、職場に迷惑はかけずに受講できました。

講習会は外国人の2人の講師がメインでしたが、日本語の同時通訳があったため問題なく受講でき、テキストも英語と日本語版が用意されていました。講習会は座学のほか、グループワーク、実践練習などがありました。

現在は「バーチャル・ライブコース」というオンラインで受講できるようになり、受講料や試験内容なども変わっているようです。

▼LSVT®LOUD認定療法士「バーチャル・ライブコース」受講料

新規受講者 75,000円
LSVT®LOUD認定資格既得者 35,000円
学生 45,000円

参考:LSVT®認定講習会(新潟リハビリテーション大学)

「LSVT®LOUD認定療法士」資格は言語聴覚士の業務でどう活かせるのか

筆者は「LSVT®LOUD認定療法士」を取得したことで、パーキンソン病患者に対するアプローチが幅広くなり、自信につながりました。先輩の言語聴覚士からも相談を受けるようになり、パーキンソン病患者は率先して担当させてもらいました。

しかし、週4日×4週間(計16回)やほかの条件があるため、「LSVT®LOUDそのものを提供できるパーキンソン病患者さん」は限られています。そのためLSVT®LOUDの課題や手法をあくまでも参考にしたアプローチを提供しています。それでも効果を得られることもあり、LSVT®LOUDを学んで本当によかったです。

ちなみにLSVT®LOUD認定療法士は2~5年ごとの更新が必要です。しかし日本ではLSVT Globalの判断で、更新義務は「保留」となっています(詳細はホームページを参考にしてください)。認定療法士になっても再度講習会を受けることができるため、初心に戻って学び直す機会もあります。

LSVT®LOUDはパーキンソン病患者さんに向けたエビデンスに基づく音声治療

難病のパーキンソン病患者は、今後も増加傾向といわれています。薬物療法や手術(脳深部刺激療法:DBS)などの治療法がありますが、リハビリは常に必要だと思われます。リハビリ自体、エビデンスのある手法は少なく、また古典的な手法が見直しされることもあり、日々進化しています。

そのなかで、LSVT®LOUDはエビデンスが確立されており、治療効果も得られています。多くの言語聴覚士がLSVT®LOUD認定療法士を取得し、1人でも多くのパーキンソン病患者さんの手助けができる環境になることを願っています。

余談ですが、Ramigらが考えた音声治療なのに、なぜLSVT®(リーシルバーマン音声療法)というのか、個人的に不思議に思ったので調べてみました。すると、この治療法を最初に実施した“患者さん”の名前が由来とのことでした。

実施したドクターやセラピストの名前がつくことはよくありますが、まさか患者さんの名前が由来とは──。改めてその患者さんに敬意を表したいと思います。

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竹内あすか

竹内 あすか

言語聴覚士/LSVT®LOUD認定療法士
得意分野は言語機能障害、高次脳機能障害、嚥下機能障害。
結婚・出産を機にSTになった遅咲きST。老健や訪問看護ステーションなどで働き、数年前までは成人専門だったが、最近は小児も対応している。現在は訪問看護ステーションに勤務。

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