BBS(バーグバランススケール)の具体的な評価方法について徹底解説
公開日:2023.03.08
文:rana(理学療法士)
セラピストが動作訓練を行う際、患者さんのバランス能力についての評価は必須項目といっても過言ではありません。
ですが、バランス評価はROM(関節可動域測定)やMMT(徒手筋力検査)のように定量化することが難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
そうしたバランス能力を複合的に評価する方法の一つに「BBS(バーグバランススケール)」があります。BBSは高齢者や脳卒中の患者さんに有用な評価方法で、リハビリに関わるセラピストの多くが活用をしています。今回はBBSの評価方法と特徴について解説します。
BBSとは
BBSはBerg Balance Scale(バーグバランススケール)の頭文字をとった略語で、高齢者や脳卒中患者さんのバランス能力を点数化する評価バッテリーです。
あらかじめ決められた14項目の動作を行い、それぞれできた動作によって0点から4点で評価し、その合計点数を算出します。
評価の際には以下の道具が必要です。
- ・評価用紙
- ・筆記用具
- ・メジャー
- ・ストップウォッチ
- ・椅子
- ・踏み台
また、対象となる患者さんが転倒しないようにリスク管理をしながら評価をしていくことが重要になります。
BBSの評価項目について
BBSの評価項目の特徴についてまとめました。
それぞれの項目でバランスを崩さずに課題をクリアできれば満点の4点で、以下の場合は減点対象となります。
- ・時間または距離など定められた要件が満たされていない
- ・遂行課題に監視が必要
- ・バランスを崩さないために何かに触れたり介助を要したりする
評価するセラピストは被験者がしっかり動作を行えているかを判定しなければなりません。
1.椅子からの立ち上がり動作
高さ40〜42cm程度の椅子から立ち上がる動作を評価します。
手を使わずに自力で立ち上がることができ、立位姿勢を保持できれば満点の4点となります。
2. 立位保持
立位を2分間保持できるかどうかを評価します。
自力で何も掴まらずに、安全に立位姿勢を2分間保持できれば満点の4点となります。
3. 座位保持
床に足をつけ、背もたれに寄りかからずに2分間座位保持可能かを評価します。
腕を組んで安全に2分間、座位保持ができれば満点の4点となります。
4. 座る動作(立位から座位)
立位姿勢から椅子に安全に座ることができるかを評価します。
ほとんど手を使わずに安全に着座動作ができれば満点の4点となります。
5.移乗動作
椅子(または車椅子)からベッドに移動し、再度椅子に戻る動作を評価します。
手をわずかに使うだけで、安全に移乗動作を行うことができれば満点の4点となります。
6. 立位保持(閉眼)
目を閉じて10秒間立位保持が可能かを評価します。
バランスを崩さず、安全に立位保持ができれば満点の4点となります。
7.立位保持(閉脚)
脚を閉じた状態で1分間立位保持が可能かを評価します。
何も掴まらずに、バランスを崩さないで立位保持ができれば満点の4点となります。
8.両手前方リーチ
立位姿勢から片腕を水平に前に挙げ、25cm以上前方に手を伸ばせるかを評価します。
足の位置を変えず、確実に25cm以上腕を前に伸ばせたら満点の4点となります。
9.拾い上げ
立位姿勢から足元に置いた靴またはスリッパを拾い上げられるかを評価します。
何も掴まらないでバランスを崩さず、安全に床から靴またはスリッパを拾えれば満点の4点となります。
10.振り返り動作
立位姿勢から左右に振り返り、後方を見ることができるかを評価します。
両側から後方を振り返ることができ、上手く体重移動もできれば満点の4点となります。
11.360°の方向転換
立位姿勢から4秒以内に360°回転することができるかを評価します。
バランスを崩さず、左右両方向に1回転することができれば満点の4点となります。
12. 踏み台昇降
高さ12〜20cmの台にて20秒以内に8回、踏み台昇降ができるかを評価します。
左右それぞれの足を交互に8回、段差に安全に乗せられれば満点の4点となります。
13.タンデム立位
立位姿勢から、片方の足をもう一方のすぐ前に接地し30秒保持できるかを評価します。
1人で継ぎ足を行い、バランスを崩さずに立位を保てれば満点の4点となります。
14.片脚立位
片脚立ちを10秒以上保持できるかを評価します。
何も掴まらずに片方の脚を上げで10秒保持できれば満点の4点となります。
BBSの解釈方法
BBSは前述した14項目をそれぞれ0〜4点で評価し、その合計点数によってバランス能力を判定します。文献によって解釈が異なりますが、合計点数が45点以下だと転倒のリスクが高いという判定となります。
定期的にBBSを評価することで、患者さんの改善度を目に見える形で示すことができます。
ですが、BBSの結果だけで転倒リスクを完全に把握することは不可能なので、あくまで参考程度にしておくのがよいといえるでしょう。また、BBSの評価項目はそのままバランス向上の運動療法になるので、評価しながらリハビリしていくことも可能です。
高齢者や脳卒中患者さんのバランス評価にBBSを活用しよう
今回は、BBSの特徴やそれぞれの評価項目について紹介しました。バランス能力は人によって視点が異なったり、数値化しにくかったりすることから客観性に乏しい特徴があります。
そのなかでもBBSはバランス能力を点数化し、共通認識できる有用な評価バッテリーです。高齢者や脳卒中患者さんの評価に広く用いられているため、リハビリに関わるセラピストは有効に活用してみてはいかがでしょうか。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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