【例文あり】SOAPとは?書き方や押さえておきたいポイントを4つ紹介
公開日:2023.06.05 更新日:2024.01.11
文:平岡 泰志(作業療法士)
多くの病院や施設で取り入れられているSOAPですが、正しく記載できているか自信がないと感じている方もいるのではないでしょうか。SOAPは、それぞれの記載項目を正確に記載し、正しく評価することで、最適な治療計画の立案につながります。逆にいえば、記載内容に不備があればSOAPの効果を最大限生かすことができません。
今回は実際にSOAPを用いた記載例を基に、書き方のポイントを紹介します。SOAPの書き方をマスターして、あしたからの業務に生かしていきましょう。
SOAPとは
SOAPとは、多くの医療機関で使用されている問題志向型のカルテ記載方法です。医師や看護師、セラピストが患者さんの記録を作成するために用いられます。患者さんから得た情報を基に問題点を抽出し、そこから治療計画を立案する際に有効です。SOAPを構成する項目は以下の4つです。
- ・S(subjective):主観的情報
- ・O(objective):客観的情報
- ・A(assessment):評価
- ・P(plan):計画
それぞれのポイントを解説します。
S(subjective):主観的情報
Sは主観的情報として、主に患者さんや利用者さん本人の訴えをそのまま記載します。
- ・主訴
- ・痛みの有無やレベル
- ・非言語的な訴え
O(objective):客観的情報
Oは主観的な情報を排除し、客観的に事実に基づいた内容のみ記載します。
- ・バイタルサイン(血圧・脈拍・呼吸・体温・Spo2・意識レベル)
- ・治療方法
- ・機器の種類
- ・検査方法
- ・その他確認できる異常所見
A(assessment):評価
Aでは、上記のS(主観的情報)とO(客観的情報)から患者さんの状態を評価します。
- ・患者さんの状態
- ・身体・精神面の変化
- ・治療効果
P(plan):計画
Pはアセスメントした内容から今後の計画を記載します。
- ・治療方針の変更有無
- ・治療方針の変更内容
SOAPの書き方のポイント4つ
SOAPは、それぞれの項目を正確に記載することで効果を発揮します。SOAPを活用してカルテに記載する際の準備として、普段から気をつけたいポイントを紹介します。
1.患者さんの声はこまめにメモを残して活用する
SOAPに限ったことではありませんが、カルテに記載する内容は正確な情報でなければなりません。万が一、間違った情報を記載してしまうと、その後の評価や治療に大きな影響を及ぼしてしまいます。必要な情報を聞き漏らさないように、普段から可能な限りメモとペンを携行し、その都度、書き留める習慣をつけましょう。また、評価や治療をするうえで、患者さんの主訴はとても重要です。普段から患者さんの声に耳を傾け、ニーズやデマンド、痛みの有無を聞き漏らさないようにしましょう。
2.事実に焦点を当てる
カルテを記入する際に、気をつけていても主観が入ってしまうことがあります。たとえば、「可動域は正常範囲内」や「不安そうな表情をしている」といった記載です。こうした情報は、「上肢屈曲0~170°」や「うつむき言葉数が少ない」のように表現することで客観的情報になります。治療効果を高めるためにも、事実に焦点を当てるのが重要です。
3.分かりやすく簡潔に書く
SOAPは誰が見ても理解できるように簡潔に書くことが大切です。セラピスト間で共有するのはもちろんのこと、医師や看護師が閲覧することもあります。また、希望によりご家族にも開示する場合があるため、誰が見ても分かりやすく、ポイントを絞って簡潔に記載するようにしましょう。
4.整合性を保たせる
SOAPは4つの項目を相互に関連付けて治療計画を立てていくため、整合性を保たせることが大切です。S(主観的情報)とO(客観的情報)に記載した情報から考えられることのみをA(評価)に記入し、余計な情報は記載しないようにしましょう。仮に、Aを行ううえで情報量が少ないと感じる場合は再度SとOの情報収集を行う必要があります。十分な情報を揃え、SとOとAの整合性を保たせることで最適な治療計画が立案できます。
【例文】SOAPの書き方を紹介
では、実際にSOAPの記載例を見ていきましょう。
対象)A氏/67歳/男性
ラクナ梗塞を認め入院。発症2日目より主治医から早期離床を目的にリハビリ指示あり。
S(主観的情報):
少し右の手足の力が入りにくい。指先がしびれる感覚もあります。
O(客観的情報):
【ベッドサイドにて簡易評価および坐位保持ex実施】
リハビリ前:BT36.9℃、BP148/82、HR72/分、Spo298%、意識清明
リハビリ後:BT36.7℃、BP159/87、HR81/分、Spo299%、意識清明
Brs:右上肢下肢手指共にⅤ、左上肢下肢手指共にⅥ
感覚:表在感覚わずかに鈍麻認めるも痛覚・深部感覚は鈍麻認めず
坐位保持ex:自立保持可、気分不良の訴えなし、コミュニケーション良好
A(評価):
・バイタルは安定しており、身体的な機能も比較的保たれている。
・上記内容主治医に報告し、あしたから起立および歩行訓練を開始できるか要相談。
P(計画):
・症状の増悪に十分に注意しながら離床を進める。
・メンタル安定しているも、今後不安定になる可能性があるためメンタルフォローが必要。
SOAPの書き方を理解して上手に活用しよう
SOAPは慣れるまで記載するのに時間がかかったり、主訴の正確性が患者さんとの信頼関係に左右されたりするなどのデメリットがあります。一方、慣れてくると業務の効率化や根拠を基にした治療が可能になるなどのメリットがあります。SOAPの特徴を理解したうえで日々の業務に生かしていきましょう。
■関連記事
【理学療法士実習生向け】「統合と解釈」と「考察」の違いと書き方について
■参考
carepatron/SOAP Notes For Physical Therapy Template
「SOAPの記録に関して」令和2年度老人保健事業推進費等補助金介護記録法の標準化調査研究事業|厚生労働省
脳梗塞とはどんな病気?Evidenceに基づく日本人脳梗塞患者の医療ガイドライン策定に関する研究班(2006年刊第1版)|公益社団法人日本医療機能評価機構
平岡 泰志
作業療法士/医療介護分野専門ライター
地方の二次救急指定病院にて5年間勤務。その後、多職種と共にデイサービスの立ち上げに携わり、現在は主任として現場を統括。「高齢者の尊厳を守る」を念頭に、利用者と家族の生活をサポート。プライベートでは4人の子どものパパ。仕事と子育ての両立をするべく、日々奮闘中。
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