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はじめての職場での気づき

公開日:2017.07.03 更新日:2021.04.08

文:福辺 節子
理学療法士/医科学修士/介護支援専門員

私が理学療法士になった頃は、介護保険はもちろん、地域で障がい者や高齢者を支えようという発想などはまったくない時代でした。
「プラトーに達した対象者は早く退院させて理学療法から卒業してもらいなさい」「維持期の対象者はよくならない。変化がないし、理学療法をする必要はない」教師からそのように習うのですから、教育においても、地域リハビリテーションや維持期の対象者に対するアプローチの授業などはもちろん皆無でした。

全国の理学療法士を集めても1万人いない時代に、維持期の対象者をみようというセラピストはほぼいませんでしたが、私は「維持期の対象者も変化できるに違いない」と思っていました。むしろ、誰がみてもよくなっていく回復期よりは維持期のほうがやりがいがある、と思ったのです。

そこで私は就職先として、ある自治体が運営している障がい者向けの通所リハビリテーション施設を選びました。対象は子どもから高齢者まで。小児の理学療法にも興味をもっていた私には格好の職場でした。その施設で働いた7年の間に私はいくつかのことを学びました。


まず、新人PTの私にとっての最初のショックは、「私たちセラピストは病院で何をやっていたのだろう!?」ということでした。
私が担当し始めた対象者さんたちは、歩くことはできても寝返りや起き上がり、移乗動作が一人でできないのです。そのために更衣や入浴、トイレ動作も困難になり、ご家族は毎回大変な思いで介護をしていました。

対象者さんたちが入院している間にPTやOTが基本動作の練習やADL指導をし、寝返り、起き上がり、トイレや入浴も家庭でできるようになって退院してもらったはずなのに、数年の間にできなくなってしまって多くの方が寝たきり状態になっているのです。
どうしてなのでしょうか? 家庭ではこれらの動作やADLをご家族に手伝ってもらえるため、対象者さんが自分ではやらなくなってしまったからです。

子どもたちのほうはもっと深刻でした。
私が担当していた小学校高学年や、中学、高校卒業後の子どもたちは、変形や拘縮によって、立位や座位だけでなく摂食や呼吸も難しくなっていました。「小学校低学年のときは歩けていたのにねえ」と、子どもたちを連れてくるお母さん方は嘆きました。
セラピストが小児の施設で子どもたちや、そのご家族に対して行ってきたセラピー・家族指導には、いったいどんな意味があったのでしょう。セラピストは自分が担当した子どもたちが、このような未来を迎えたことを知っているのでしょうか。

私は「リハビリテーションとは何なのだろう」と考え始めました。セラピストが理学療法や作業療法を行う意味も考え直しました。このとき初めて、意味など考えたこともなかったことに気づいたと言ってもいいかもしれません。

生まれたときから障がいを持ち、将来自分で自立した生活はもちろん、座位や立位も困難な子どもたちに、私たちは何のためにリハをするのでしょう。
施設に入所して、家に戻りたくても戻れないお年寄りに、何を目的にして自力でトイレに行く練習をしてもらうのでしょう。
練習すれば自分で歩けるようになる認知症のお年寄りのご家族から「転んだら困るので、もう歩かせないでほしい」と言われたら、セラピストとして私は何と答えればよいのでしょう。

もし、皆さんのなかに今の自分の仕事に疑問を感じていたり、やりがいを感じられなくなったりしている人がいたら、もう一度「リハビリテーションとは何か」「私たちが対象者に訓練を受けてもらう意味」「何故、自立したりADLを上げていくことが必要なのか」を根本から考えてみてほしいと思います。すぐに教科書や本の答えを探すのではなく、自分の考えを底の底まで掘り下げ、本音で納得できる一人ひとりの答えを出してみてください。

「リハビリテーション」「障がい」「自由・自立」――これらについて自分自身の答えを見出せたとき、セラピストとしてぶれない軸をもてるようになります。そしてこの仕事のやりがいや楽しさ面白さに気づけるはずです。

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