気胸の原因とリハビリの重要性とは?禁忌事項も合わせて解説!
公開日:2024.06.03

文:まさ(理学療法士)
気胸は、生活の質(QOL)を大きく低下させる可能性のある呼吸器系の疾患です。気胸の場合、リハビリをしても大丈夫なのでしょうか。逆に、リハビリをすることで気胸の症状がよくなることはあるのでしょうか。
本記事では、気胸の基本的な知識、その種類、治療法のひとつであるリハビリの有効性と実施方法、そしてリハビリを行う際の禁忌事項について詳しく紹介します。ぜひ最後までご一読ください。
おすすめ特集
気胸とは
気胸は、肺に穴があいて肺から空気が漏れ、タイヤのパンクのように肺がしぼむために、胸痛、咳、息切れなどが生じる病気のことです。
気胸は大きく次の2つに分かれます。
・自然気胸
・外傷性気胸
それぞれについて解説します。
自然気胸
気胸の中でも自然気胸は最も多く、病名からわかるように著明な原因はなく、突然発症します。肺の表面に「のう胞」(「ブラ」ともいいます)というシャボン玉状の組織が生じて、これが破れるためですが、ブラができる理由や破れる理由は、現在でも正確にはわかっていません。
ただ、喫煙者は女性で約9倍、男性で22倍の割合で自然気胸を発症しやすくなることがわかっています。また、背が高く体が細い若い男性も自然気胸になりやすいため注意が必要です。
外傷性気胸
外傷性気胸は、交通事故で肋骨が折れて、肺に刺さるなど何かしらの原因として発症する気胸です。
一般的にリハビリの対象となるのは、多くは自然気胸になります。
気胸に対するリハビリ
気胸などの呼吸器疾患の方に関しては、リハビリが有効であることがわかっています。
実際のリハビリは次のような内容を実施します。
・コンディショニング
・運動療法
それぞれについて解説します。
コンディショニング
コンディショニングは次のものがあります。
・呼吸訓練
・リラクゼーション
・胸郭の可動域訓練
・ストレッチ
・排痰法
呼吸訓練
呼吸筋訓練は、特に呼吸筋が弱っている方に対して、呼吸筋の力と耐久力を高めるのが目的です。具体的には、息を吐くときに口をすぼめてゆっくりと吐き出す呼吸法の「口すぼめ呼吸」や、横隔膜を使って行う呼吸法の「腹式呼吸」などをします。
リラクゼーション
リラクゼーションとは、心身ともに緊張を緩めてリラックスすることです。気胸などで息苦しさがあると、どうしても頑張ってたくさん空気を吸おうとし、首や肩の筋肉を過剰に使って呼吸をしてしまうため、余分なエネルギーを消費してしまいます。
このような効率の悪い呼吸を「努力性呼吸」といい、努力性呼吸を長い期間していると、使い過ぎによって疲労がたまり筋肉は硬くなってしまいます。
そのため、リハビリ職などの専門職が、腹式呼吸などの指導やストレッチ・マッサージなどをして全身の筋肉の緊張をほぐします。
胸郭の柔軟性向上
胸郭の柔軟性を高めることで、より効果的な呼吸が可能になります。実際、胸郭の柔軟性が高くなると、呼吸筋を効率よく使用できることがわかっています。
ストレッチ
全身のストレッチは、筋肉の柔軟性を高め、胸郭・腹筋・背筋など呼吸に関連する筋肉の機能をサポートします。ストレッチはまた、姿勢を改善して効率的な呼吸パターンを促進します。
実際、呼吸筋を中心にストレッチを行った結果、胸郭の動きがよくなり、状態が改善することがわかっています。
排痰法
痰が喉にたまった状態だと、気道が狭くなり、呼吸がしづらくなったり、息切れが強くなったりします。また、うまく痰を出せないと、咳が続いて疲労や不眠の原因になる場合もあります。
そのため、痰が多い場合は疲れない痰の出し方を覚えて定期的に排出することが重要です。実際に次の手順で行うと、うまく痰を排出できるので、気になる方は一度試してください。
1. 横向きに寝て手を脇の下(胸の横)に置きます。
2.鼻からゆっくり息を吸って、口からゆっくり吐くように深呼吸をし、痰が上がりそうになるまで2~3回繰り返します。
3. 大きく息を吸って勢いよく「ハーッ! ハーッ!」と口から息を吐きます。
4.大きく息を吸って咳をします。その際、何度も咳をすると疲れるため、咳は3回までにします。
運動療法
気胸に対するリハビリで、コンディショニングと並ぶもうひとつの柱である運動療法は、主に「有酸素運動」「筋力トレーニング」があります。
有酸素運動
有酸素運動は筋肉への負荷が比較的軽く、運動を長時間継続しやすい特徴があります。
具体的な有酸素運動は下記のようなものがあります。
・ウォーキング
・サイクリング
・エルゴメーター
これらの運動は負荷量を自由に調節できるので、呼吸器疾患を抱えている方でも行いやすいだけでなく、リハビリの効果も立証されています。
実際、有酸素運動を中心にエクササイズを行った結果、痛みの管理がより効果的で、鎮痛剤の使用量も減ることや、運動能力を向上させることもわかっています。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、筋肉量を増加させ、日常生活を少しでも楽に過ごすことを目的として行います。
筋力トレーニングには次のようなものがあります。
【足の運動】
・スクワット
・かかと上げ
・座った状態での太もも上げ
【腕の運動】
・両手を組んで上に伸ばす
・壁を使って立った状態で腕立て伏せ
【体幹の運動】
・寝た状態で頭上げ
・腹筋
・寝た状態で足上げ
これらの筋力トレーニングを先ほどお伝えした有酸素運動と併用して実施すると、より効果的です。
呼吸リハビリの禁忌

呼吸リハビリは気胸の方に対して有効的ですが、誰でも対象になるとは限りません。次の場合は、呼吸リハビリを行うことで逆効果になる危険があるので注意しましょう。
絶対的禁忌
呼吸リハビリを絶対に実施すべきでないのは次のような場合です。
(1) コントロールできないショック:血圧が危険なほど低くなり、体にうまく血液が循環していない状態
(2) 急性心筋梗塞:心臓へ血流が流れない影響で、心臓の一部が酸素不足で損傷している状態
(3) 重度の不整脈:心臓の拍動が異常に速過ぎたり、遅過ぎたり、不規則である状態
(4) 肺血栓塞栓症: 肺の血管が血の塊(血栓)で詰まっている状態
(5) 肺胞の出血・喀血:肺から血が出て、咳で血が出る状態
(6) 未処置の気胸:気胸がまだ治療されていない状態
相対的禁忌
次の場合は、呼吸リハビリを慎重に考慮すべき状態です。
(1) 血液の循環が不安定:体内の血流が正常に行われておらず、健康状態が不安定な場合
(2) 膿胸がある:胸部に膿(体が感染に反応して作り出した液体)がたまっている状態
(3) 肺挫傷や多発肋骨骨折がある:肺が損傷を受けていたり、複数の肋骨が折れている状態
(4) 頸髄損傷後でも損傷部が固定されていない:首の損傷後に、傷ついた部分がまだ安定していない、またはサポートされていない状態
(5) 脳外科術後に、頭蓋内の圧が亢進している:頭部の手術後に、頭の中の圧力が異常に高い状態
呼吸リハビリの中止基準

リハビリを中止するからの基準として「アンダーソン・土肥の基準」をよく用いられ、それをベースにすると、次の場合はリハビリ前、または途中でも中止したほうがよいでしょう。
【運動を行わないほうがいいケース】
・安静時の脈拍:120回/分以上
・最低血圧:120mmHg以上
・最高血圧:200mmHg以上
・著明な不整脈が現れている
・運動前から動悸、息切れがある
【途中で運動を中止すべきケース】
・中等度の呼吸困難やめまい、嘔気が出現している
・脈拍が140回/分を超えている
・10回/分以上の期外収縮や頻脈性不整脈、あるいは徐脈が出現している
・最高血圧が40mmHg以上、または最低血圧が20mmHg以上上昇している
【運動をいったん中止して回復を待ってから再開するケース】
・脈拍が運動時の30%を超えている(2分間安静にしても10%以下に戻らない場合は運動中止するか軽負荷の運動に切り替える)
・脈拍が120回/分を超えている
・期外収縮が10回/分の頻度で出現している
・軽い動悸や息切れがある
まとめ
気胸は、肺の損傷によって空気が漏れ出し、胸痛や呼吸困難を引き起こす病態のことで、自然気胸と外傷性気胸の2種類に分かれます。
気胸などの呼吸器疾患を発症した場合、コンディショニングや運動療法などの呼吸リハビリは、有効的な手段のひとつです。しかし、すべての方に適しているわけではなく、場合によっては逆効果となってしまいます。
そのため、今回紹介した禁忌・中止基準をしっかりと理解して、各個人に合わせたアプローチをすることが重要です。
■関連記事
圧迫骨折でやってはいけないことは?悪化予防のために気を付けることを徹底解説
半月板損傷でやってはいけないこととは?リハビリの内容や気をつけるべきことを解説

まさ(理学療法士)
2010年頃に理学療法士の国家資格を取得してから10年以上病院で勤務している。また理学療法士の資格だけでなく、ケアマネジャーの資格も取得しているため、医療・介護系の知識に精通している。それ以外にも、現在は管理職として在籍しているため、体のことだけでなく、医療・介護にかかわる制度など幅広い分野において情報を発信できる。
他の記事も読む
- ショートステイのリハビリとは?目的・内容やメリットを解説
- 整形外科での作業療法士の業務内容は?魅力ややりがい・大変さを紹介
- 作業療法士免許の氏名変更方法を解説|必要書類や注意点も紹介
- 動物理学療法士とは?給料事情や仕事内容、目指し方について解説
- 医療機器メーカーへの就職は難しい?仕事内容や向いている人の特徴を解説
- スポーツリハビリトレーナーになるには?仕事内容や必要な資格、他職種との違いを解説
- 自宅でできるパーキンソン病のリハビリは?症状の進行ごとに解説
- 【理学療法士ライターが解説】理学療法士の副業でライターはおすすめ?メリットをご紹介
- 理学療法士が一般企業で働くためには?おすすめの企業や転職時のポイントを解説
- リハビリ器具の種類と選び方 ~目的別にわかる活用ポイントと注意点~
- リハビリ職とは?人の「できる」を支える3つの専門職について解説
- 学費を抑えて言語聴覚士になるには?学校選びのポイントと支援制度を解説
- 【記載例有り】個別機能訓練計画書とは?加算との関係や書き方、注意点を解説
- 訪問リハビリは本当に休みづらい?休みにくい理由と働き方の見直しポイントを解説
- 打撲をしたら病院へ行くべきか?正しい応急処置と、病院へ行くべき判断基準
- 咳をすると背中が痛い!その原因と対処法について
- 仰向けで寝ると腰が痛い!そんなときの原因と対策について
- 半側空間無視のリハビリ完全ガイド!リハビリ職別の役割・評価方法・訓練法を解説
- 40代から言語聴覚士に転職するには?資格取得の流れと注意点を解説
- スクワットすると膝が痛い!原因と対策、指導のポイントを解説





