腱板断裂とは?原因ややってはいけないことなどについて解説
公開日:2024.08.02
文:rana(理学療法士)
肩が痛む原因の1つに「腱板断裂」という疾患があります。スポーツをしている人から、高齢者まで幅広い方にみられる疾患ですが、なぜ、どんな原因で起こるのでしょうか。
また、腱板断裂になったら、日常生活で悪化しないように注意が必要です。
今回は腱板断裂について、その原因や「やってはいけないこと」などについて現役理学療法士が解説します。
腱板断裂とは
腱板断裂とは、肩にある「腱板(けんばん)」という部分が切れて痛みが生じる疾患です。
腱板とは、肩の安定性を高めるための筋肉の総称で、構成する筋肉として以下の4つがあります。
● 棘下筋(きょくかきん)……肩関節を安定させる筋肉の1つ
● 小円筋(しょうえんきん)……肩関節を外旋(腕を外向きにひねる)する筋肉
● 肩甲下筋(けんこうかきん)……肩関節を内旋(腕を内向きにひねる)する筋肉
これらの筋肉が何らかの原因によって圧力がかかったり、引き伸ばされたりすることによって腱板断裂が生じます。
腱板断裂になる原因
では、なぜ腱板断裂が起きるのでしょうか。腱板断裂の主な原因についてまとめました。
過剰なストレスが加わる
腱板は急激に伸ばされたり、強い力が加わったりすることで、ストレスによって傷ついてしまいます。例えば、転んで腕をひねったり、重たい物を無理に持ったりした際に生じる負荷が腱板断裂の主な原因と言われています。その時は気がつかなくても、後々違和感や痛みなどの症状が現れることもあります。
負担の蓄積
スポーツや仕事などによって、長期間、肩に負担がかかる場合も、腱板断裂の原因となります。特に野球やテニスなど、腕を振りかぶるようなスポーツをする人に多くみられます。
また、重たい物を持ち上げたり、高い所に手を伸ばしたりするような仕事が原因になることも少なくありません。
肩を支える筋肉の衰え
肩を支える筋肉が衰えてしまうことも、腱板断裂になる原因の1つです。
筋肉が衰えると、肩を正しく使えなくなり、腱板にかかる負担が大きくなってしまいます。筋肉が衰える要因としては、加齢や運動不足が挙げられます。
柔軟性の低下
肩周りの柔軟性が低下することも、腱板断裂の原因になります。肩をスムーズに動かすためには、背骨や肩甲骨が柔軟に動いている必要があります。
背骨や肩甲骨の動きが悪ければ、その分、肩への負担が大きくなってしまいます。特に猫背や肩こりのある方は注意が必要です。
腱板断裂の症状
腱板断裂の主な症状として、肩がうまく動かせなくなる「運動障害」と「痛み」が挙げられます。肩を横に動かしたり、ひねったりする時に痛みが出やすく、スムーズに動かせなくなります。力も入りにくくなるため、重たい物を持てなくなることもあるでしょう。
また、悪化すると、動かしていない時でもズキズキした痛みがあり、夜寝ている時にも痛みを感じることがあります。なお、腱板断裂では、四十肩や五十肩のように関節が固まって動かないような症状はあまりみられません。
腱板断裂でやってはいけないこと
腱板断裂になってしまったら何に気をつければよいのでしょう。腱板断裂でやってはいけないことについて紹介します。
重たい物を持ち上げる
腱板断裂になってしまったら、重たい物を持ち上げる動作はしないようにしましょう。
特に頭より高い位置に持ち上げたり、水平に物を持ったりする動作は腱板に大きな負担がかかります。軽くして何回かに分けて運んだり、誰かに手伝ってもらったりするなど、負担をかけないことが大切です。
無理に遠くへ手を伸ばす
無理に遠くへ手を伸ばす動作はしないようにしましょう。
例えば、車の後部座席に置いた物を無理な姿勢で手を伸ばして取ったり、高所に手を伸ばしたりする動作は腱板断裂を悪化させる可能性があります。
特に体の後ろ方向に手を伸ばすような動作は、肩を痛めやすいので要注意です。上半身全体を動かす、物に近づいて取るなどして、肩だけで動作をしないように気をつけましょう。
腕を強くひねる
腕を強くひねる動きは腱板に負担がかかるので要注意です。
例えば、ボール投げやシャツに袖を通すといった動作をすると、腕をひねることになります。特に痛みが強く、症状が重たい方は、生活のなかでも肩に負担をかけないように細心の注意を払うようにしましょう。
腱板断裂に治療方法
腱板断裂になったらどのような治療が実施されるのでしょうか。腱板断裂の治療方法には、大きく以下の2つがあります。
保存療法
保存療法は、患部を切ったり、縫ったりするような手術を行わずに治療を進める方法です。よほどひどい腱板断裂でなければ、まずは保存療法が行われることが多いでしょう。
一般的には、痛み止めの注射や服薬、湿布などが処方され、痛みを抑えます。必要に応じて、腱板の周りにある筋力を強化したり、背骨、肩甲骨の動きを改善したりするようなリハビリを行う場合もあります。
手術療法
痛めてしまった腱板に対して、肩を切開して行う手術療法もあります。保存療法で経過をみても改善しなかった場合や、断裂が大きい場合に選択されます。
手術では、主に断裂部分を直接、骨に縫いつける方法が選択されます。
腱板断裂が疑われたら専門医を受診しよう
腱板断裂の治療は保存療法が選択されるケースが多いものの、自己判断で放置しても改善しにくい疾患です。
場合によっては、悪化して日常生活に大きな支障を抱えてしまうかもしれません。肩に痛みがあり、腱板断裂が疑われる場合には早めに整形外科などを受診し、治療を始めましょう。
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rana(理学療法士)
総合病院やクリニックを中心に患者さんのリハビリに携わる。現在は整形外科に加え、訪問看護ステーションでも勤務。 腰痛や肩痛、歩行障害などを有する患者さんのリハビリに日々奮闘中。 業務をこなす傍らライターとしても活動し、健康、医療分野を中心に執筆実績多数。
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