セラピストが仕事に抱く本音は?業務内容や待遇、人間関係の現状について現役作業療法士が解説
公開日:2024.09.02
文:かな(作業療法士)
セラピストとして働き始めたものの、入職する前のイメージと違うと思った経験はありませんか? セラピストは人を治療し、癒やす職種として、人の役に立つイメージがありますが、実際に働いてみると違う面も見えてきます。今回は、現役作業療法士の筆者が感じる、仕事や待遇、人間関係に関するセラピストの本音をお伝えします。
セラピストの仕事内容に対する本音
セラピストの仕事はさまざまありますが、ここでは医療系国家資格のセラピストとしてリハビリにかかわる人の本音を紹介します。
体の負担が大きい
セラピストとして仕事を始めると、思った以上に体への負担が大きいと感じる人が多いかもしれません。機能訓練や歩行訓練の際に患者さんの体を支える、移動や移乗の介助をするといった場面が多く、思いのほか体力を消耗します。
また、職場によっては立ちっぱなしであったり、院内の移動が多かったりもします。セラピストには効率の良い体の使い方をできる人が多いものの、それでも体を痛める人は少なくなく、筆者のまわりでも腰を痛める人を見てきました。
思ったより書類仕事が多い
リハビリ職は患者さんと接する時間が大半と思われがちですが、思いのほか書類仕事も多くあります。日々のリハビリカルテの記入や計画書の作成をはじめとして、カンファレンスなどの会議の準備、サマリーや報告書の作成など、実にさまざまです。
筆者も入職前に想像したよりもデスクワークが多いと感じました。しかも、診療報酬上の必要に迫られて作成する書類が多いため、なおさら面倒だと感じる人も多いかもしれません。
仕事自体はやりがいがある
大変な面もありますが、仕事そのものはやりがいがあると感じるセラピストも多いでしょう。患者さんが回復する様子、自宅に戻られる様子などに喜びを感じるのは筆者だけではないはずです。患者さんの生活に関われるのは大きなやりがいとなるため、モチベーションにもつながるでしょう。
■関連記事
作業療法士はやめとけといわれる理由6選
セラピストの待遇に対する本音
セラピストの仕事そのものにはやりがいを感じても、待遇に関しては、ネガティブな本音を抱いている人が多いかもしれません。職場によって異なりますが、参考として待遇に関する本音をお伝えします。
給料は低く、上がりにくい
リハビリ職は給料が低い傾向にあります。また、昇給も少なく経験年数が増えても、あまり年収が上がりにくいのが現実です。
というのも、セラピストは診療報酬により収入を得ています。リハビリ1単位(1回20分)あたりの点数が決まっており、1日や1週間に取得できる単位数も上限があるためです。
職場によっては休みにくい
リハビリ職として、休みにくい職場があります。筆者の職場は柔軟に休みが取りやすいため、ワークライフバランスを保てていますが、筆者の知人の職場ではシフトの変更が難しいところもありました。どのような体制でリハビリを実施しているかで、休みやすさが異なります。
■関連記事
「セラピストはやめとけ」は本当?セラピストの退職理由や向いていない人の特徴を紹介
セラピストの仕事はしんどい?理由ややりがい、向き不向きを現役作業療法士が解説
セラピストの人間関係に関する本音
セラピストは人を相手にすることが多いため、患者さんだけでなく、職場内での人間関係に悩むこともあります。続いて人間関係についてよく聞かれる本音をまとめました。
リハビリ職間での人間関係
セラピスト間で、患者さんのリハビリや関わり方の方針が合わない場合もあります。目標をどこに置くか、ADLでどこまでしてもらうか、プログラムの内容など、同じリハビリ職でも考えに相違が生じることもあります。もちろん、それぞれの仕事をフォローしたり、困ったときにアドバイスしてもらえたりと良い関係を築いている職場もあります。
他職種との関係
職場やスタッフによっては、他職種との間に壁を感じる場合もあるかもしれません。
リハビリへの理解が得られない、患者さんのADLを良くするための提案を受け入れてもらえない、連携がとれない場合もあるでしょう。
患者さんや家族との関係
患者さんや家族との関わりが、うまくいかない時もあります。患者さんと信頼関係を構築しながらスムーズにリハビリを進められる場合もあれば、難しい場合もあります。また、患者さんの家族からのクレームでストレスを感じる場合もあるでしょう。全体でみると少数だとは思いますが、いつもリハビリがスムーズに進められるとは限らないのです。
セラピストの仕事がイメージと違うと感じたら
セラピストの仕事が、働き出す前のイメージと違っていてがっかりしているなら、転職や起業などにより、環境を変えて納得できる働き方を目指す方法もあります。
仕事内容や職場の人間関係がつらいなら転職もあり
仕事内容が思っていたものと違った、職場の人間関係がうまくいかずストレスになるなどの不満があるなら、職場を変えてみるのも一案です。転職を検討する際には、必ず施設見学をしましょう。実際に見ることで、イメージとのギャップを減らせるはずです。環境に原因があるなら、場所を変えて仕事をするとつらさが解消されるかもしれません。
収入面で不満なら転職か副業がおすすめ
収入面に不満があるなら、転職や副業で解消できる可能性があります。
セラピストの収入は、同じ職場に長く勤めてもそうそう上がるものではありません。そのため、基本給を上げたいなら転職が有効です。ただし、収入が増えても、人間関係にストレスを抱える、仕事量が多いといった環境になる可能性もあるので、転職の場合は収入面以外もしっかりチェックしておきましょう。
また、今の職場で、給料以外はさほど不満がないのであれば、副業してトータルの収入アップを狙う方法もあります。リハビリ職としてアルバイトをする、資格を活かして在宅でできる仕事をするなど、副業の方法はいくつかあります。
収入に対する不満があるなら、転職や副業も視野に入れてみましょう。
■関連記事
リハビリ職が副業をするメリット・デメリットは?おすすめの副業5選を紹介
思い切って開業する選択肢もあり
フリーランスになると、仕事相手を選べるというメリットがあります。個人事業主として開業すれば、職場の人間関係や患者さんからのリハビリ拒否といったストレスからは解放されるはずです。
ただし、収入は不安定になる可能性はあります。また理学療法士、作業療法士、言語聴覚士としての開業はできないため、整体院やフィットネスなどの形態をとる必要がある点には注意しましょう。開業すると、運営や経理面まですべて自分でする必要があり大変ですが、会社員ではなかなか得られないメリットもあります。向いていそうなら個人事業主として活動するのもよいかもしれません。
セラピストとして納得できる働き方を目指そう
セラピストとして働いていて、やりがいは感じるものの業務内容や人間関係、待遇に対して不満に思う人も多いかもしれません。しかし、不満の原因は環境を変えることでなくせます。セラピストの仕事をもっと楽しみたいなら、より自分が生き生きと働ける場所や方法を模索してみましょう。
>>【全国どこでも電話・メール・WEB相談OK】セラピストの無料転職サポートに申し込む
かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。
他の記事も読む
- リハビリは特掲診療料に含まれる!施設基準や算定できる加算などについて現役作業療法士が解説
- バネ指とは?原因や症状、やってはいけないことについて解説
- 20代理学療法士の給料相場は?他職種との比較や給料アップの方法を解説
- 側弯症の人がやってはいけないこととは?側弯症の種類と症状を解説
- クローヌスの止め方とは?原因のほか家庭でできる対策と医療機関での治療も紹介
- 言語療法士と言語聴覚士の違いは?ST・PT・OTとの違い・資格を取得するための方法も解説
- セラピストの仕事はしんどい?理由ややりがい、向き不向きを現役作業療法士が解説
- 「セラピストはやめとけ」は本当?セラピストの退職理由や向いていない人の特徴を紹介
- たんぱく質を摂り過ぎているときのサインとは? 摂り過ぎないポイントも解説
- 進行性核上性麻痺の人のリハビリや日常生活における注意点を現役作業療法士が解説
- ケアカンファレンスとは?記録の書き方や関わり方のポイントを徹底解説!
- リハビリ職は無資格でも働ける?仕事内容やデメリットなどを解説
- 腱板断裂とは?原因ややってはいけないことなどについて解説
- 突発性難聴の治療中にやってはいけないことは?~回復過程や仕事への影響も解説
- スポーツトレーナーで年収1000万円は可能?働き方や必要な条件などについて解説
- 退院時リハビリテーション指導料とは?算定ポイントと実際の指導内容を紹介
- スポーツトレーナーにはどんな種類がある?仕事や資格の違いなどについて解説
- 医療・介護現場でよく耳にする「見当識」とは?見当識障害の症状や適切な関わり方について解説
- 理学療法士のセカンドキャリアには、どんな働き方があるのか?
- 椎間板ヘルニアでやってはいけないことは?悪化させないための予防法についても解説