五十肩でやってはいけないこと4選!自宅でできる対処法もあわせて解説
公開日:2024.11.01
文:かな(作業療法士)
五十肩は中年以降でなりやすい整形疾患であり、腕が挙がらない、肩が痛いといった辛い症状が現れます。
動かすと痛みが生じるため、何をしていいのか、逆に何をしたらいけないのか分からない人も多いかもしれません。
今回は、五十肩になりやすい人の特徴や、五十肩の時にやってはいけないこと、自宅でできる対処法を解説します。
五十肩の原因
五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」であり、俗称として「五十肩」「四十肩」とも呼ばれます。
名前の通り、40代50代といった中年以降に発症しやすい整形疾患ですが、40〜70代でよくみられるため、50代でなくても発症する可能性があります。
五十肩になる原因は明確ではありませんが、加齢にともなう肩関節の周囲(軟骨・靱帯・腱など)に起こる炎症や肩周辺の血行不良が影響しているのではないかといわれています。
なお、利き腕ではない側がなりやすく、五十肩と診断された人のうち20%程度の人は左右に発症するという報告もあります。
五十肩になりやすい人の特徴
五十肩は名称の通り、50代前後の中年以降によくみられる疾患ですが、該当する世代の人の中でも、なりやすい人には特徴があります。
肩に負担や刺激が多い人
そもそも肩関節は不安定な構造であり、それを腱板(けんばん)と呼ばれる複数の筋肉と、関節包(かんせつほう)と呼ばれる膜が支えています。
しかし、長期間にわたり肩に負担がかかっている、刺激が加わっている人は、肩関節やそれら周囲の組織に炎症が生じやすくなり、痛みや動かしにくさが生じてしまうのです。
また、過去にスポーツで肩を酷使していた人も同様の理由で五十肩になりやすいといわれています。
糖尿病の人
糖尿病と診断された人は、そうでない人に比べて10%程度五十肩になりやすいといわれています。これは、糖尿病により血行障害が生じやすくなるためです。
血糖値の高い状態が続くと、血管が傷ついたり詰まったりして血流が悪くなる場合があります。前述したように肩関節の周囲には筋肉や関節包があり、血流による影響を受けるため五十肩になりやすいといわれています。
運動不足の人
特に運動不足で肩周りの筋肉を使わない人、デスクワークが多い人などは、五十肩になりやすいといわれています。
肩関節の周囲、つまり深部にある小さないくつかの筋肉(まとめて腱板、インナーマッスルとも呼ばれる)が筋力低下を起こすためです。
この筋肉は肩関節を安定させるのに重要な役割を果たしていますが、弱くなると肩の外側の大きな筋肉の負担が大きくなり五十肩を招きます。
五十肩でやってはいけないこと4選
五十肩になってから治るまで3つの病期があります。痛みと動かせない状態が続く「急性期」、炎症は落ち着くものの肩がかたまりやすい「拘縮(こうしゅく)期」、動かしやすくなる「回復期」の3つです。
このうち、急性期と拘縮期にはそれぞれやってはいけない、気をつけたいことがあります。
【急性期】無理に動かす
肩の炎症が強い急性期は、無理に動かしてはいけません。場合によっては悪化し、炎症が長引いてしまいます。「このまま痛くて動かせなくなるのでは」と心配される患者さんもいらっしゃいますが、炎症の強い時期なのでできるだけ安静に、肩の負担を減らすよう努めましょう。
【急性期】強く揉む・マッサージをする
急性期に強く揉んだりマッサージしたりするのも避けましょう。自分で動かすだけでなく、外部から動かすことも刺激となり炎症がひどくなります。
痛みがあると揉みたくなるかもしれませんが、そんな時は整形外科で内服や湿布などで痛みを抑えられないか相談しましょう。
【急性期】痛い方を下にして横向きで寝る
急性期に痛む方を下にして横向きで寝ると、関節に負担がかかるため避けてください。
急性期のころは、寝た姿勢で肘が下がる姿勢は痛みが出やすいので、寝る時は仰向けで肘の下にクッションなどを置いて、手をお腹の上に乗せて寝ると良いでしょう。
【拘縮期】過度に安静にする
「拘縮期」の「拘縮(こうしゅく)」とは筋肉や軟部組織がかたくなって、関節の動きに制限が出た状態をさします。
五十肩の急性期はできるだけ安静期にして肩の負担を避けるべきですが、拘縮期になっても過度に安静にして動かさない状態が続くと、そのまま肩がかたくなり、五十肩が治っても腕が上がらない、といった事態になりかねません。
とはいえ、拘縮期でも痛みがなくなるわけではないため、痛みが出ない範囲で動かすことが大切です。
自宅でできる五十肩への対処法
五十肩になったら、まずは痛みをある程度抑えるためにも、整形外科への受診をおすすめします。薬などで痛みを抑えながら、家でもある程度セルフケアをすると良いでしょう。
【急性期は安静に!】可能ならリラクセーションメインの運動をする
急性期は積極的にストレッチするより、リラクセーションを目的とした運動をしましょう。いずれも座った姿勢ででき、負担の少ない運動なので、無理のない範囲で試してみてください。
肩甲骨を外側や内側に動かす運動
猫背にならないように、肩を前に出したり後ろに引いたりして、肩甲骨を外側に広げたり内側に狭めたりする。
肩甲骨を上げ下げする運動
肩をすくめて上にあげたり下に下げたりする。
【拘縮期は少しずつ動かす】ストレッチなどの軽い体操をする
拘縮期になると、肩がかたまりやすくなるため、痛みのない範囲でストレッチをすると良いでしょう。下記の体操も軽い運動として役立ちます。
コッドマンの振り子体操
左肩が痛い場合、体幹が床と平行になるような姿勢で立ち、右腕をテーブルやベッドに乗せて体を支える。その姿勢のまま、腕の重みを利用して、左腕を振り子のように前後にふる。
テーブル拭き体操
胸くらいの高さのテーブルにタオルを置き、その上に痛い方の手を乗せる。タオルでテーブルを拭くようにして、ゆっくりと滑らせながら肩や腕を動かす。
【就寝時に注意】肩の負担を減らす寝姿勢を試す
五十肩になると、特に急性期は寝方によって夜間の痛みが出やすくなります。そのため、寝る姿勢に工夫が必要です。
仰向けになり、痛い方の肘を曲げて手をお腹の上に置いて寝ましょう。この時、肘の下にクッションなどを置いて、肘が下がらないようにすると肩の負担を減らせます。
五十肩かも?と思ったら早めに受診しよう
五十肩は中年以降でなりやすい整形疾患であり、肩の痛みや腕が上がらないといった症状に悩まされます。五十肩になってしばらくは炎症があり痛みも強いため、早めに整形外科を受診して痛みを抑えられないか相談しましょう。
そして、炎症が落ち着いたら、肩がかたまらないように徐々に動かしていくことが大切です。
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参考
かな(作業療法士)
作業療法士/呼吸療法認定士・福祉住環境コーディネーター2級・がんのリハビリテーション研修修了
身体障害領域で15年以上勤務。特に維持期の患者さんの作業療法、退院支援に携わってきました。家では3人の子ども達に振り回されながら慌ただしい日々を送っています。趣味は読書とお菓子作り。
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