理学療法士を目指す高校生に必要な科目と受験を合格するための対策
公開日:2024.11.11
文:まさ(理学療法士)
日本は今後、高齢化率がさらに高まることが予想され、2070年には高齢化率は39%と推計されています。それに伴って、リハビリテーションの需要はますます高まると考えられており、それを担う理学療法士の資格が、今、注目されています。
今回は、理学療法士に興味がある高校生の方々に対して、理学療法士が注目されている理由だけでなく、資格を取得するための流れや、受験対策まで詳しく紹介します。ぜひ最後までお読みいただけたら幸いです。
目次
理学療法士が求められる背景と重要性
理学療法士はPT(Physical Therapist)とも呼ばれており、ケガや病気などで身体に障がいがある方や、障がいの発生が予測される方に対して、座る・立つ・歩くなどの基本動作能力の回復や維持・向上を目的に、リハビリテーションを実施します。
今後、国内では高齢者の人数が増加し、2042年には3,935万人もの人が65歳以上になるといわれています。リハビリテーションの対象は高齢者の方が多いため、病院・介護・福祉施設などでリハビリ業務に従事する理学療法士の重要性はより高まっていくと思われます。
理学療法士として働くためには資格取得が必須
理学療法士として働くためには、国家試験を受験して、国家資格を取得する必要があります。
理学療法士の国家試験を受験するためには、3年以上養成校で学び、受験資格を得なくてはいけません。具体的な養成校は以下のように分類されています。
・短期大学(3年制)
・専門学校(3年制、4年制)
・特別支援学校(高等部専攻科で理学療法士の養成課程を専攻)
※作業療法士の資格を持っている場合は、養成校で2年以上学べば受験資格の取得が可能
これらの条件にあてはまる学校は全国で275校(募集停止10校)となっており、国内全国に存在します。
理学療法士の資格取得の流れ
実際に、理学療法士の資格を取得するためには、以下の流れで進める必要があります。
1. 養成校に入学する
理学療法士の養成校に入学するには「高等学校卒業以上」の学歴が必要です。その学歴が取得できたら、養成校の入学試験を受けて合格しましょう。受験試験の内容は養成校によって異なりますが、学力試験や面接が行われます。
大学・短大を受験する場合は、学力試験のみで合否を決めますが、専門学校の場合は学力試験だけでなく、面接が実施される場合もあります。
養成校によっては、偏差値や志願倍率が高い場合もあり、自身の学力などをもとに受験する養成校を選びましょう。
2. 養成校で決められた課程を修了する
養成校に入学したら、国で決められた、「一般教養科目」「専門基礎科目」「専門科目」「臨床実習」の4種類の課程を修了する必要があります。
3. 国家試験に合格する
養成校で決められた課程を修了したら、年に1回行われる国家試験に合格する必要があります。
国家試験の合格率はその年によって多少の変動はありますが、近年の合格率はおおむね80%台で推移しているため、試験自体は難関すぎることはありません。
国家試験に合格した後に免許を申請すれば、無事に理学療法士として働くことができます。
高校で勉強したほうがいい科目
「理学療法士」と聞くと、理系をイメージして文系では受験できないと考える方も多いかもしれませんが、高校で文系・理系のどちらを選んでも理学療法士を目指すことは可能です。
ただ、受験する養成校によって、理系科目が必要になる場合もあるため注意が必要です。受験科目に関しては、もちろんしっかり勉強しておく必要がありますが、それ以外でも下記の科目は、高校生のうちにしっかり勉強しておくこと、養成校入学後に大いに役立つはずです。
・物理
・英語
・国語
次にその理由を説明します。
生物
理学療法士の養成校だけでなく、実際に働くにあたっても、筋肉・骨・関節・内臓・呼吸など人体の構造を理解することは非常に重要です。
生物の知識を含めた解剖学を理解することで、どの筋肉に痛みが生じているのか、どの筋肉をストレッチすればいいのかなど、臨床の現場で役立つだけでなく、内臓・呼吸などの知識があれば、実際にリハビリテーションを行う際に、リスクを事前に把握することもできます。
物理
物理の知識をある程度取得していれば、養成校で運動学・物理学などを学ぶときに理解がしやすくなります。
理学療法士は、運動やてこの原理、熱、電気などについて学習します。実際に関節を動かすための筋肉の働きをてこの原理で考えたり、関節や身体のバランスを重心や床反力という運動学で考えたります。
また、熱や電気などの物理的なエネルギーを利用する物理療法というものもあるため、それを理解するのに役立ちます。
英語
理学療法士として知識をさらに深めるようと思った場合、医学の専門書や文献などを利用します。最近では、日本語の医学書も多くなりましたが、最新の論文は英語で書かれているものが数多くあります。
理学療法士は常に最新の知識を取得してリハビリテーションを行う必要があるため、英語で書かれた論文が読めるととても有利です。
また、医療現場の会話でも、さまざまな英単語が使われていたり、カルテの内容も英語で記載されていたりする場合もあり、最低限の英語の知識は必要と考えたほうがいいでしょう。
国語
養成校では、分厚い教科書や参考書の文章を読み解いて学ぶため、読解力が求められるだけでなく、レポートを作成する機会も多いため文章力も必要です。
また、理学療法士になると、患者さん、ご家族、他職種など多くの人とコミュニケーションを取る必要がありますが、それぞれの相手に合わせて言葉を選ぶ必要があります。
例えば、患者さん・ご家族に対して、専用用語ばかり使った難しい説明では信頼関係を築くことは難しいため、さまざまな言葉を選択してわかりやすく説明する力が求められます。
高校生がリハビリ専門学校へ合格するための対策
リハビリ専門学校へ合格するには、以下の対策がポイントになります。
各養成校の受験科目を調べる
先述したように、受験科目は各養成校によって異なります。そのため、自分が受験したい養成校の受験科目を事前に調べておきましょう。
ちなみに最近の専門学校では、試験内容が「面接と小論文」がのみのところもあります。
養成校の受験対策を行う
受験する養成校が決まったら、合格を目標に受験対策をしましょう。学科試験の対策で最も有効的な方法は過去問です。
過去問を解くことにより自分の弱点がわかり、課題を克服できます。さらに、受験校の傾向も理解できるため、より具体的な対策が可能になります。
そのため、過去問は最低でも3年分、できれば5年分の過去問を3回以上は解くようにしましょう。その際に、前回に解けなかった問題ができるようになったかを必ず確認することが重要です。
面接・小論文の対策を行う
受験科目として、面接・小論文がある場合は、それらの対策も行いましょう。
面接では、「自己紹介」「志望動機」などはもちろんですが、それ以外にも「理学療法士を目指したきっかけ」「どのような理学療法士になりたいか」などがよく聞かれる質問です。
小論文の対策としては、普段から医療ニュースにアンテナを張るようにしましょう。ある程度の知識を持っているテーマであれば、小論文の作成もスムーズになるはずです。
ただ、必ずしも知っているテーマが出るとは限りません。その場合でも養成校としては、どれくらい熱意を持って受験をしたかを判断したいことが多いため、決して諦めずに、自分の知っていることや、考えていることも精一杯書くようにしましょう。
まとめ:理学療法士に興味をもったらぜひ受験検討を
今回は、高校生が理学療法士の養成校を受験するにあたって、必要な科目や受験対策などを紹介しました。
理学療法士になるためには、養成校を卒業して国家試験に合格する必要があります。養成校は文系・理系に関係なく受験できますが、養成校によって受験科目が異なるため注意しましょう。
今回の内容をきっかけに、理学療法士に興味を持って、受験を検討するきっかけとなれば幸いです。
<参考文献>
公益社団法人 日本理学療法士協会「理学療法士とは」
厚生労働省 職業情報提供サイト「理学療法士(PT)」
内閣府「令和2年版高齢社会白書(全体版)」
厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法」
公益社団法人 日本理学療法士協会「養成校一覧」
まさ(理学療法士)
2010年頃に理学療法士の国家資格を取得してから10年以上病院で勤務している。また理学療法士の資格だけでなく、ケアマネジャーの資格も取得しているため、医療・介護系の知識に精通している。それ以外にも、現在は管理職として在籍しているため、体のことだけでなく、医療・介護にかかわる制度など幅広い分野において情報を発信できる。
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