理学療法士が活躍できる就職先8選|就職を成功させるポイントもご紹介
公開日:2024.11.25
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士を目指す際に、どのような就職先があるのか気になる方もいるのではないでしょうか。理学療法士は対象者にリハビリを提供する職種で、活躍できる領域が幅広いのが大きなメリットです。
この記事では、理学療法士のおもな職場や就職する際のポイントをご紹介します。就職先について把握しておくことで、将来どのような領域で働くべきかの参考になるでしょう。
理学療法士のおもな就職先8選
理学療法士のおもな就職先は、以下の8つです。
1. 医療機関
2. 介護施設
3. 福祉施設
4. 訪問リハビリサービス
5. スポーツ分野
6. 教育・研究機関
7. 行政機関
8. 一般企業
ここでは、それぞれの就職先の特徴について解説します。
1.医療機関
医療機関は理学療法士にとっておもな就職先であり、需要が高い分野です。病院やクリニックなどの医療機関では、患者さんの身体機能の回復を目的としたリハビリを中心に行います。
医療機関といっても、理学療法士の仕事は多岐にわたります。たとえば、急性期の病院であれば手術後の患者さんの早期回復の支援がメインです。回復期であれば、自宅復帰に向けた応用的なリハビリを提供することもあるでしょう。医療の進歩にあわせて新しい知識や技術を学ぶ機会も多く、専門性を高められる職場といえます。
医療機関での就職を考えている方は、自分の興味がある分野を見つけ、それに特化した職場で働くことがおすすめです。
2.介護施設
介護施設は、おもに介護老人保健施設や特別養護老人ホームなどがあります。介護施設では、理学療法士は長期的な視点で利用者の生活の質(QOL)の向上やADLの維持・改善に取り組みます。介護予防の観点から、転倒・認知症予防のためのプログラムを実施することもあるでしょう。
介護施設で働くメリットは、利用者との長期的な関わりを通じて信頼関係を築ける点です。医療機関ほどの専門的な治療を行う機会は少ないですが、生活に密着したリハビリを提供し、利用者の生活の質を向上させる経験を積めます。
3.福祉施設
福祉施設は、おもに障害者支援施設や児童福祉施設などがあげられます。これらの施設では、利用者の生活の質を向上させ、社会参加を促進するための支援を行います。理学療法士は、利用者の個性・多様性に配慮しつつ、自立支援や機能維持・向上を目指すのが仕事です。より長期的な視点で、利用者の生活全般をサポートすることも特徴の1つです。
理学療法士にとって、障害があってもその人らしい生活を送れるよう支援することは、大きなやりがいにつながるでしょう。また他職種と協力して、多角的な視点から利用者を支援する力も養えます。
4.訪問リハビリサービス
訪問リハビリは、理学療法士が利用者の自宅を訪問してリハビリを行うサービスです。訪問リハビリの特徴は、実際の利用者の生活環境にあわせてリハビリを提供できる点です。自宅での転倒予防や日常動作の改善など、より実践的なアプローチが可能となります。
その一方で、自宅のあらゆる環境を考慮しながらリハビリを行うため、理学療法士としてある程度の経験が求められる分野といえます。求人によっては、一定の臨床経験の年数が条件となっているケースも少なくありません。
5.スポーツ分野
スポーツチームやフィットネスクラブなど、スポーツ分野で活躍している理学療法士も多くいます。スポーツ分野での理学療法士のおもな役割は、以下のとおりです。
● 選手のパフォーマンス向上のための指導
● ケガの予防のための指導
● 健康・栄養管理
● ケガした方に対するリハビリ
理学療法士は運動指導だけでなく、姿勢改善や腰痛予防など、医学的知識を活かしたアドバイスができる強みがあります。スポーツに興味がある方は、ぜひこの分野での仕事も検討してみましょう。
6.教育・研究機関
この分野では、大学や専門学校の教員として、次世代の理学療法士を育成する役割を担えます。研究機関では、リハビリ技術の開発や効果検証など、別の方向性から理学療法の発展に貢献できます。
教育・研究機関で働く理学療法士は一定の経験が求められ、常に最新の知識や技術を学び続ける必要があるでしょう。しかし、臨床とはまた違ったやりがいを得られるのがメリットです。論文執筆や学会発表など、自身の研究成果を世に発信する機会も多くあります。
このように、教育・研究機関は理学療法士としての専門性を深め、キャリアアップを図れる分野といえます。
7.行政機関
行政機関でも、理学療法士の専門性を活かせる機会があります。おもな就職先としては、保健所や市町村の福祉課などがあげられます。行政機関での理学療法士の役割は、地域住民の健康増進や介護予防などが中心です。具体的な内容は、以下のとおりです。
● 介護予防教室の企画・運営
● 地域の高齢者向け健康相談
● 福祉用具の選定アドバイス
医療現場とは異なり、直接的なリハビリの機会は少なくなるものの、地域に貢献したい方にとっては、やりがいのある職場といえるでしょう。
8.一般企業
理学療法士の専門知識を活かして、一般企業で働くことも可能です。
おもな就職先としては、以下があげられます。
● 医療機器メーカー
● 福祉用具メーカー
● フィットネス関連企業
たとえば、医療機器メーカーの場合、実際の臨床経験を活かしてリハビリ機器の開発や改良に携われるでしょう。福祉用具メーカーであれば、高齢者や障がい者向けの製品開発に関わり、ユーザーの生活の質向上に貢献できます。
一般企業で働くメリットは、医療現場とは異なる視点で理学療法の知識を活用できることです。ビジネススキルを身につける機会も多く、キャリアの幅を広げられる可能性があります。
理学療法士として就職するまでの流れ
理学療法士として就職するまでの流れは、以下のとおりです。
1. 理学療法士の養成校に入学する
2. 指定されたカリキュラムを修める
3. 国家試験に合格して資格を取得する
4. 就職する
この一連の流れを経て、理学療法士としての仕事がはじまります。理学療法士になるまでの道のりは決して簡単ではありませんが、さまざまな方の健康や生活の質の向上に直接貢献できるやりがいのある職業です。この流れを理解したうえで、ぜひ理学療法士を目指してみましょう。
理学療法士の資格を活かした仕事につくポイント
理学療法士の資格を活かした仕事につくためには、どのようなことを心がけるべきなのでしょうか。ここでは、就職時のポイントについて解説します。
どんなリハビリをしたいのか
理学療法士として就職先を選ぶ際は、自分がどんなリハビリをしたいかを明確にしましょう。たとえば、整形疾患に対するリハビリに興味があれば、その分野に特化した病院やクリニックがおすすめです。高齢者のケアに関心があれば、介護施設での仕事が適しているでしょう。自分の興味や得意分野を見極めることで、やりがいを感じられる職場に出会いやすくなります。特定の分野に特化すれば、そのスペシャリストとしてのキャリア構築が可能です。
ただし、新卒の段階ではさまざまな分野を経験することも大切です。最初は総合病院など幅広いリハビリを経験できる環境を選ぶのも1つの方法といえます。
給料や条件がよいか
理学療法士として楽しく働くうえで、給料や労働条件もよくチェックしておきましょう。満足のいく待遇でなければ、モチベーションの低下や早期離職につながる可能性があります。とくに給料が低かったり、残業が多かったりすると、仕事への熱意が失われやすくなります。就職先を選ぶ際は、募集要項にある給与体系や福利厚生などをよく確認しておきましょう。
ただし、条件面だけでなく、仕事の内容や将来性についても考慮することが大切です。給料が平均的だとしても、充実した研修制度がある職場であれば、長期的なキャリア形成には有利かもしれません。
理想のキャリアを築けるか
理学療法士として長く活躍するためには、自分の理想的なキャリアを築ける職場かどうかを見極めることも重要です。そのためには、まず自分が将来どのような理学療法士になりたいのか、ある程度のビジョンを持っておくとよいでしょう。「管理職を目指したい」「特定の疾患のスペシャリストになりたい」など、具体的な目標があるのが望ましいです。
キャリアプランが明確でない場合は、「患者さんと深く関わりたい」「最新の治療技術を学びたい」など、大まかな方針でもかまいません。就職先を選ぶ際は、そうした自分の希望に沿った環境が整っているかどうかを確認しましょう。
理学療法士は幅広い就職先で活躍できる
理学療法士は医療機関だけでなく、福祉分野やスポーツ分野などのさまざまな領域で活躍できる職種です。それぞれの領域によって、理学療法士の役割は変化します。
就職先を決める際は、自分はどのようなことをしたいのかを明確にしておくとよいでしょう。自分がやりたいことを実現できるような職場で働くことで、理学療法士として楽しく仕事ができます。
内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
他の記事も読む
- チーム医療における理学療法士の役割とは?多職種連携のポイントも解説
- 管理栄養士にしかできないことは?必要なスキルや役割、今後活躍するためのポイント
- 老健での作業療法士の役割とは?仕事内容からやりがい、特養との違いを解説
- 「言語聴覚士をやめてよかった」と思う人の3つの共通点とは?
- セラピストとカウンセラーの違いとは?目指す方法や必要な資格も解説
- リハビリテーション実施計画書とは?必要な内容や注意点、総合実施計画書との違いを解説
- 肺理学療法とは?評価のポイントや具体的な方法、注意点について解説
- 理学療法士は整骨院で働ける?柔道整復師との共通点や違いについて解説
- アスレティックトレーナーとは?理学療法士との違いや共通点について解説
- 太らない夜食はある? 食べ方のポイントとおすすめの食べ物8選
- リハビリテーション総合実施計画書とは?多職種連携を支える書類の書き方と役割
- 2年制の言語聴覚士養成校が「きつい」といわれる理由は?2年制課程を乗り越えるコツも紹介
- 梨状筋症候群でやってはいけないことは?なりやすい人の特徴やストレッチ方法についても解説
- 働きながら作業療法士の資格取得は可能?養成校の選び方や学費の負担を軽くする方法を解説
- 認定作業療法士は意味がない?なるための要件や取得するメリットを解説
- 理学療法士になるにはいくらかかる?学費の目安と諸費用について解説
- 認定理学療法士は「意味ない」って本当? その理由や資格を取得するメリットについて解説
- これからの理学療法士に求められることとは?PTの現状と将来性を解説
- 理学療法士が昇給するためには?年収の推移や給料アップの方法をご紹介
- 理学療法士はもうオワコン?リハビリ職の現状と今後の生存戦略をご紹介