これからの理学療法士に求められることとは?PTの現状と将来性を解説
公開日:2024.11.27
文:内藤 かいせい(理学療法士)
理学療法士として仕事をしていると、今後どのような変化を迎えるのか不安になる方もいるのではないでしょうか。理学療法士の増加や高齢化の進行など、日本の状況は年々変化しています。
この記事では、理学療法士の現状や将来性、今後どのようなことが求められるのかをご紹介します。理学療法士としてやるべきことを把握できれば、これからのキャリアを見直すきっかけとなるでしょう。
理学療法士の現状と将来性について
理学療法士として求めることを知るためには、まずは現状と将来性について把握しておく必要があります。ここでは、理学療法士がどのような立ち位置にあるのかについて解説します。
理学療法士の数は年々増加傾向にある
理学療法士の数は、年々増加傾向にあります。日本理学療法士協会の統計情報によると、令和5年度の国家試験合格者と理学療法士の累計は以下のとおりです。
● 理学療法士の累計:213,735人
平成17年度の合格者数が4,843人で、累計が46,086人であることから、理学療法士が3倍以上に増加しているのかがわかるでしょう。また令和5年度から過去直近10年は、理学療法士の数は毎年約1万人ずつ増えています。このような状況から、競争が激化するのではないかという懸念も生まれています。
高齢化が進んで需要が高まる可能性もある
理学療法士の数が増加傾向にある一方で、日本では高齢化が進行しています。令和5年の段階で、65歳以上の人口割合(高齢化率)は「29.1%」とされています。昭和25年の段階では高齢化率が5%未満だったことを考えると、その割合の大きさがわかるでしょう。
今後も高齢化が進行し、令和52年では「38.7%」に達すると予想されています。これは、日本国民の2.6人に1人が65歳以上という計算となります。
このような高齢化にともない、理学療法士の需要も高まると考えられているのです。これらの情報を踏まえると、理学療法士は今後もニーズが高く、将来性がある職種となる可能性があります。
出典:内閣府|高齢化の状況
理学療法士として働くうえで大切なこと
理学療法士として働くうえで、どのようなスキルや心がけが必要なのでしょうか。ここでは、理学療法士として持っておきたい基本的な要素について解説します。
コミュニケーションスキル
理学療法士が持っておきたいポイントの1つが、コミュニケーションスキルです。理学療法士の仕事は、単に身体機能の回復を支援するだけではありません。患者さんのモチベーションを高めながら、効率的にリハビリを進めることが重要です。そのためには、相手の気持ちを理解し、適切に対応できるコミュニケーションスキルが不可欠です。
また、理学療法士は看護師や医師などの医療スタッフと連携をとる機会が多い傾向にあります。連携をとる際にコミュニケーションスキルがあれば、円滑なやり取りができるでしょう。このようなスキルは、理学療法士の仕事の質を大きく左右する重要な要素といえます。
高い協調性
効果的なリハビリを提供するうえで、高い協調性も欠かせません。理学療法士は、作業療法士や言語聴覚士などのリハビリスタッフと協力して治療にあたります。スタッフの意見を汲み取り、目標に向けたリハビリプランを立てるためには、高い協調性が求められます。
患者さんとの関係においても協調性は重要です。リハビリは患者さんと協力しながら進めるものであり、互いの信頼関係がないと成り立ちません。このように、コミュニケーションと同じように、高い協調性は理学療法士としての成功に必要な要素といえます。
自己研鑽の継続
理学療法士は、就職後も継続的な自己研鑽が求められます。医療業界は年々進歩しており、質の高いリハビリを提供し続けるためには、常に新しい知識や技術を吸収することが重要です。
高齢化にともない、理学療法士の活躍の場も広がりつつあります。今後は医療機関やスポーツ分野だけでなく、新たな領域での需要が増える可能性があるでしょう。新しい領域で活躍するためには、その分野に特化した知識やスキルを身につける必要があります。このように、自己研鑽を続けることは理学療法士としての専門性を高めつつ、キャリアアップにもつながります。
これからの理学療法士に求められること
高齢化にともない、理学療法士は今後も需要が高まる可能性があります。しかし、理学療法士の人数自体は増えているため、優位性を高めるには今まで以上にスキルを身につけておくことが重要です。ここでは、これからの理学療法士に求められることについて解説します。
専門性の獲得
理学療法士として優秀な人材になるには、専門性の獲得がおすすめです。特定領域におけるスペシャリストになることで、理学療法士としての価値が高まります。たとえば、整形外科クリニックで働く場合、整形疾患に関する深い知識や高度な技術を身につければ、患者さんをより効果的にサポートできるでしょう。
また専門性を持つことで、チーム医療のなかでも重要な役割を担えます。専門性を獲得する方法は、以下のとおりです。
● 専門書や論文のチェック
● 資格の取得(詳細は後述)
自分の興味のある分野を見つけた場合は、高いスキルを身につけるための努力をしてみましょう。
資格の取得
専門性の獲得と並行して、関連する資格の取得も進めてみましょう。資格は目に見える形で専門性を証明できるため、患者さんやほかの医療スタッフからの信頼獲得につながりやすいメリットがあります。ほかの理学療法士と差別化が図りやすいので、転職の際も優位に働きやすいでしょう。具体的な資格の例としては、以下があげられます。
● 専門理学療法士
● 認知症ケア専門士
● 福祉環境コーディネーター
● 介護支援専門員(ケアマネジャー)
資格取得にはそれなりの時間と労力が必要ですが、長期的な視点でみるとさまざまなメリットを得られます。
需要が高い領域の開拓
今後のキャリアを考えるうえで、需要が高い領域の開拓もしておくとよいでしょう。高齢化にともない、理学療法士の活躍の場がさらに広がる可能性があります。実際に医療機関だけでなく、さまざまな企業で活躍している理学療法士も多くいます。
新しい領域で活躍するためには、社会の変化や医療の動向にアンテナを張り、柔軟に対応する姿勢が重要です。需要が高い領域に挑戦することで、理学療法士としての価値をさらに高め、社会に大きく貢献できるでしょう。時代の変化に敏感になり、新たな領域に積極的にチャレンジする姿勢が、これからの理学療法士には求められています。
これからの理学療法士に求められることを把握しよう
理学療法士は年々増加傾向にある一方で、高齢化が進み医療に対しての需要が増えています。これらの状況から、理学療法士は今後も価値を持った職種だといえるでしょう。
一方で、増加している理学療法士のなかで優位性を保つためには専門性の獲得、新しい領域へのチャレンジなどが求められます。理学療法士として働き続けたい方は、ぜひ今回の記事を参考にして、今できることからはじめてみましょう。
内藤 かいせい
理学療法士として回復期病院と訪問看護サービスに従事し、脳血管疾患や運動器疾患などの幅広い症例を経験する。リハビリで患者をサポートするとともに、全国規模の学会発表にも参加。 新しい業界にチャレンジしたいと決意し、2021年に独立する。現在はWebライターとして活動中。これまでの理学療法士の経験を活かして、医療や健康分野で多くの執筆・監修に携わっている。
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