梨状筋症候群でやってはいけないことは?なりやすい人の特徴やストレッチ方法についても解説
公開日:2024.12.06
文:伊東浩樹(理学療法士)
「梨状筋(りんじょうきん)症候群」という症状をご存じでしょうか。あまり聞きなれない疾患名ですが、誰しもが日常生活を通して罹患してしまう恐れがあります。
場合によっては、歩けなくなるほどの症状が出ることもあるため注意が必要です。今回は、梨状筋症候群になった際にやってはいけないことや、セルフケアになるストレッチ方法について解説します。
梨状筋症候群とは?
「梨状筋(りんじょうきん)症候群」とは、梨状筋(りんじょうきん)という筋肉によって坐骨神経が圧迫されて、お尻や太ももなどにしびれが生じたり、坐骨神経痛を引き起こしたりする疾患です。
梨状筋はお尻にある筋肉の1つで、小さいながらも、股関節を動かす際に使われる重要な筋肉です。
その筋肉の下には、腰から太ももにかけて伸びている坐骨神経という神経が通っています。その梨状筋が何かしらの原因で硬くなり、坐骨神経を圧迫してしまうことによって、お尻部分に痛みが生じたり、その周辺がしびれたりして、歩行や日常生活に支障をきたすのが梨状筋症候群です。
経験される方も限られるため、ご存じではない方も多いかもしれません。しかし、誰しも生じる可能性がある疾患の1つです。
梨状筋症候群になりやすい人は?
お尻にある筋肉と坐骨神経にかかわるため、座る時間が長くなりがちなデスクワーカーや、しゃがみ作業が多い人は、梨状筋症候群を起こしやすいとされています。
また、股関節を動かす際にも梨状筋が関係することから、ゴルフや野球など体をひねる動作が必要なスポーツをされている方も注意が必要です。
梨状筋症候群でやってはいけないこと
梨状筋症候群は、梨状筋が坐骨神経を圧迫することで起こるため、お尻を圧迫するような状態が続くと、症状が悪化します。
悪化予防だけでなく、未然に防ぐための方法としても以下の点に注意しましょう。
長時間座っている状態を続ける
梨状筋症候群は、座っているときに最も起こりやすくなります。
そのため、長時間座った状態を続けるのは避けましょう。デスクワークなど、どうしても座りっぱなしになりがちな場合には、30分に一度は立ち上がるようにするなど、工夫しながら体を動かすことが大切です。
しゃがんだり、中腰になったりするのを控える
体操座りや草むしりを行うときのような前かがみの姿勢は、お尻の筋肉が圧迫されやすくなります。場合によっては、痛みやしびれを悪化させる可能性があるため注意が必要です。
どうしても前かがみの体制が続く場合には、座りっぱなしの際と同様に、定期的に立ち上がってお尻や太ももの筋肉を伸ばすとよいでしょう。
股関節をひねる動きに注意
足を組むなど、股関節をひねるような動きを行うことによって、坐骨神経を圧迫してしまう可能性があります。痛みやしびれが生じている場合には、足の組み替えは避けた方が無難です。また、自転車などに乗る際にもサドルで梨状筋が押されて坐骨神経を圧迫させる可能性がありますので注意が必要です。
加えて、ゴルフや野球など体をひねる動作が必要なスポーツをしている場合には、無理せず、ストレッチなどを行いながら改善につとめましょう。
無理をしてしまうと、かえって悪化して、スポーツだけでなく、歩行にも影響が出る可能性があります。
梨状筋症候群の治療とストレッチ
多くの場合、梨状筋症候群の治療として、痛みを和らげるための鎮痛剤等の投与が行われます。
それでも痛みが改善しない場合には、ブロック注射などを使用することもあります。
ひどい場合には、稀ではありますが、手術を選択することもあります。
加えて、痛みを緩和させながらリハビリテーションを行うこともありますが、自宅でもセルフケアを行ってみるのもよいでしょう。例えば、お尻や太ももを温めるほか、簡単にできるストレッチもあります。ストレッチ方法を紹介します。
【梨状筋のストレッチ方法】
① 床に仰向けに寝そべって両膝を立てる
② 片方の足首を反対側の膝上に乗せる
③ 両手で反対側の太ももを掴み、ゆっくりと体に引き寄せる
④ 太もも周囲とお尻の筋肉が伸長されていることを感じる位置で20〜30秒維持する
⑤ ゆっくり膝を元の位置へ戻していく。
上記の動作を、3回ほど繰り返します。ただし、体の左右バランスを保つために、症状がある側のみではなく症状がない側のストレッチも行いましょう。両側のストレッチを実施することが重要です。
梨状筋症候群かなと思ったら
梨状筋症候群は、非常に稀な疾病です。そのため、最初はただの腰痛と思って放置してしまうことがあるかもしれません。しかし、ヘルニアなどの腰痛とは別物で、やってはいけないことや対処方法も一般的な腰痛とは異なります。
もし、お尻周囲や太ももに痛みを感じたり、足がしびれたりする場合には、自己判断で決めつけず、早めに医療機関を受診しましょう。診断後には、やってはいけないことを避けて、悪化予防を心がけることが大切です。
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参考
日本脊髄外科学会
MSDマニュアル日本版
梨状筋症候群に対する運動療法の試み
伊東 浩樹(理学療法士)
理学療法士として総合病院で経験を積んだ後、予防医療の知識等を広めていくためにNPO法人を設立。その後、社会福祉法人にて障がい部門の責任者や特別養護ホームの施設長として勤務。医療機関の設立や行政から依頼を受けての講演、大学、専門学校等での講師なども勤める。
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