2年制の言語聴覚士養成校が「きつい」といわれる理由は?2年制課程を乗り越えるコツも紹介
公開日:2024.12.07
文:tokoshi(言語聴覚士)
言語聴覚士は、患者さんの「聞く・話す・食べる」といった機能をサポートするリハビリ職ですが、その道を目指す過程は決して容易ではありません。
特に2年制の言語聴覚士養成校では、学習内容が凝縮されており、「きつい」と感じることが多いようです。本記事では、2年制の言語聴覚士養成校がきついといわれる理由や、2年制課程を乗り越えるためのコツなどを解説します。
目次
言語聴覚士養成校には「2年制」と「3〜4年制」がある
言語聴覚士になるには、文部科学大臣または都道府県知事が指定する学校・養成校を卒業し、国家試験に合格する必要があります。
高等学校卒業後に進む場合には、3~4年制の学校・養成校で学ぶことになりますが、一般の4年制大学を卒業後には、2年制のカリキュラムを卒業すれば国家試験の受験資格が得られます。
すでに4年制大学を卒業している場合は、「2年制の言語聴覚士養成校」に入るのが言語聴覚士になるための最短コースといえるでしょう。
とはいえ、「2年制の言語聴覚士養成校はきつい」という噂を耳にすることも少なくありません。そこで次章では、2年制の言語聴覚士養成校が「きつい」といわれる理由について解説します。
2年制の言語聴覚士養成校がきついといわれる理由
言語聴覚士の国家資格に合格するためには、学業と実習の両立が求められます。それは「4年制の言語聴覚士養成校」でも同じです。しかし、2年制は特に「きつい」と感じる人が多いようです。
続いて、2年制の言語聴覚士養成校がきついといわれる理由を3つ紹介します。
膨大な専門知識を2年で習得しなければならない
言語聴覚士になるまでに、言語聴覚士としての専門知識だけでなく、一般的な医学知識、言語学、心理学など幅広い分野の知識を習得する必要があります。
参考までに、下記は厚生労働省が指定する2年制課程の科目カリキュラムの一例です。
・臨床医学
・臨床歯科医学
・音声・言語・聴覚医学
・臨床心理学
・生涯発達心理学
・学習・認知心理学
・言語学
・音声学
・言語発達学
・音響学
・社会福祉・教育
・言語聴覚障害学総論
・失語・高次脳機能障害学
・言語発達障害学
・発声発語・嚥えん下障害学
・聴覚障害学
こうした多くの専門知識を2年間という短期間で学ぶため、4年制課程と比較して授業の進行スピードが早い傾向にあります。さらに、複数の科目の授業や試験、レポートを日々こなす必要があり、時間的にも精神的にも余裕がないと感じる学生が多いのでしょう。
2年間で勉強と並行して臨床実習をこなす必要がある
言語聴覚士の受験資格を得るためには、臨床実習も行わなければいけません。実習中は、患者さんと直接関わりながら、検査やリハビリなどにおいて学んだ知識を即座に応用する力が求められます。
学生のうちに、言語聴覚士としての実践経験を積める機会は貴重である一方で、授業で学んだことと臨床現場の違いに戸惑い、ギャップを感じるケースもあります。
特に2年制課程では、4年制に比べてカリキュラムが詰め込まれており、十分な準備ができないまま臨床実習に臨むことも多く、これが「きつい」と感じる原因の1つとなっているのかもしれません。
国家試験までの準備期間が短い
前述したように、養成校に卒業しただけでは言語聴覚士にはなれず、卒業後に国家試験に合格しなければいけません。言語聴覚士の過去5年間の国家試験の合格率は65〜75%であることからも、やや試験難易度は高い傾向にあるといえるでしょう。
2年制の場合、4年制に比べて学ぶ期間が短く、試験に向けた準備期間がどうしても限られてしまいます。また、授業や実習と並行しながら、国家試験の準備を進める必要があり、こうした負担が多くの学生にとってストレスの要因になると考えられます。
2年制の言語聴覚士養成校に入るメリット
2年制の言語聴覚士養成校はきついといわれるものの、4年制と比べて「短期間で受験資格を得られる」という大きなメリットがあります。
大卒から言語聴覚士を目指す人で「言語聴覚士キャリアをいち早くスタートさせたい方」や「経済的な理由で学費を抑えたい方」にはおすすめです。
また、2年制課程でも4年制課程でも、学ぶ内容はほとんど同じです。短期間で集中して学べる2年制は、効率を重視する人にとっては大きな利点があるでしょう。
とはいえ、その分、4年制よりも時間的にも心身的にもきつくなってしまうのは事実です。最後に、2年制課程を乗り越えるコツについて紹介しましょう。
きついといわれる2年制課程を乗り越えるコツ
「2年制課程はきつい」といわれますが、いくつかのポイントを押さえれば、効率よく乗り越えることが可能です。
まず、「時間管理」を意識すること。日々のスケジュールだけでなく、週・月・年単位で「やるべきこと」を明確化し、授業や実習、試験勉強の時間をバランスよく配分するとよいでしょう。また、クラスメイトや先輩、講師とのコミュニケーションを積極的に図り、アドバイスやサポートを得ることも、2年制課程を乗り越える大きな支えとなります。
「しっかりとした計画」と「周囲のサポート」を活用することで、きつい2年制課程も乗り越えやすくなります。
言語聴覚士のやりがいを学生期間のうちに確認しよう
言語聴覚士は、患者さんの「聞く・話す・食べる」といった機能をサポートする専門家であり、患者さんの能力や生活の質を向上させる職業です。実習や授業を通じて実際に患者さんと関わることで、言語聴覚士のやりがいを直接感じることができるでしょう。
言語聴覚士ならではのやりがいを感じることは、課程を修了するためのモチベーションにもつながるはずです。2年制課程はきついと感じることもありますが、その先にある「患者さんの生活をサポートする」という大きな目標を見据えることで、困難な時期も乗り越えられるのではないでしょうか。
言語聴覚士としてのやりがいを、学生のうちにしっかりと確認することが、充実した言語聴覚士キャリアを築くための第一歩です。
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参考
厚生労働省「言語聴覚士国家試験の施行」
厚生労働省「第25回言語聴覚士国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第26回言語聴覚士国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第24回言語聴覚士国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第23回言語聴覚士国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第22回言語聴覚士国家試験の合格発表について」

tokoshi
言語聴覚士
回復期で失語症と高次脳機能障害を中心としたリハビリ業務に携わる。その後転職し、看取り施設で「最期の食事」を言語聴覚士として支援。現在は訪問リハビリやデイサービスでリハビリをしながらライターとしても活動しています。
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